
私の実家は車でも電車でも片道10時間はかかる距離。1人いる兄は隣の県に住んでおり、80代の父母は2人暮らしでした。しかし、父が亡くなり、母は1人暮らしに。すると間もなく、長く介護施設に入っていた父の弟、私にとっての叔父が急逝したとの連絡が入りました。他に身寄りのない叔父の葬儀に際しての体験談です。
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長く施設に入っていた叔父の急逝
実家の父が亡くなって2年もたたないのに、今度は叔父が亡くなったと、兄より知らせがありました。叔父は75歳でした。
若くして20代のころに事故に遭った叔父は障害が重く、ずっと介護施設に入っていました。生涯独身で実家以外に身寄りはありませんでした。私は子どもの頃から「A苑(施設名)のおじちゃん」と呼んでいて、時折施設へ顔を見に行く程度でした。遠方に住む私が単身で実家に駆け付けたとき、叔父は仏間に置かれた棺の中に横たわっていました。長年屋内で生活していたからか色白で、胸の前で組んだ指もきれいなままなのに驚きました。
先に戻った兄が、葬儀の段取りを進めてくれていました。叔父の義姉である母は高齢でもあり、おいである兄が喪主に決まりました。近くの葬儀社での家族葬を選択、ほんの身内だけで通夜・葬儀をおこなうことにしました。通夜式に臨席したのは、母と兄と私、兄の妻と数組の親戚でした。
式のあと、親戚は帰り、身内だけとなりました。皆でそこに泊まってもよかったのですが、少々体調を崩し気味だった母がつらそうに見えたので、家に帰ってもらうことにしました。しかし、誰が母に付き添うかという話になったとき、そのやりとりを聞いていた葬儀社の方からご提案がありました。
通夜会場に一人の夜
「本来通夜というのは皆で故人を忍びながら過ごすもの、というのが伝統的な考えですが、大変寒い時期ですし、皆さんお疲れでしょう? 帰られてもいいのですよ。葬儀社の方でお線香の火をつなぎ、故人のお体をお見守りいたしますので」
ありがたいお話でした。でも、叔父を一人にしたくはないと思いました。そこで、夜勤明けに駆け付けてから休みも取れない状態の兄と、そもそも叔父とはあまり面識のない奥さんと、一緒に母に付き添い帰ってもらうことにして、私一人が通夜会場にそのまま泊まることにしました。
母も兄も大変気にしました。「一人で大丈夫?」と聞かれました。私は、「大丈夫だよ。私が叔父さんに一番かわいがられていたからね、一晩傍にいるよ」と答えました。皆が帰った後の広い部屋で、私は煌々(こうこう)と灯りのともる祭壇の前に座りました。
しばらくすると、「では私たちは今夜はこれで失礼いたしますね。ゆっくりお過ごしください」と、緊急の連絡先だけを残して、葬儀社の方々が帰っていきました。いよいよ一人きりになった私は、叔父の遺影を見上げながら通夜の弁当を食べ、シャワー室を使って着替えたあと、部屋の隅に布団を敷きました。
広い部屋にぽつんと一人。大丈夫とは言ったものの、「長い夜になりそうだなあ、どう過ごそう」と思案していると、携帯が鳴りました。
寂しくなかったそのわけは
着信音の大きさにびっくりし慌てて応答すると、「お母さん、A施設に入っていたあのおじいちゃんの通夜なんだよね? 行けなくてごめん、オンラインお参りしていい?」成人し、他県に散らばって住んでいる3人の子どもたちからのグループ通話でした。早速ビデオ通話に切り替え、こちら通夜会場の様子を説明し、祭壇のろうそくに灯りをともし、子どもの人数分、線香に火をつけました。画面越しにわが子たちが次々に合掌する様子が見えました。
お参りが終わっても、グループ通話が続きました。それぞれ亡くなった叔父についての思い出を語ってくれたり、近況を報告してくれたり、子どもたちと、思いのほか長い時間を過ごせました。ふと見上げると、遺影の叔父も私たちの他愛ない話を穏やかに聞いているように見えました。広い空間が温まったような気がして、一晩落ち着いて過ごすことができました。
翌朝早く、葬儀社の方が出勤すると、新聞とコーヒーが差し入れられました。「お一人でご不便なかったですか?」と聞かれましたが、私が「遠方の子どもたちがオンラインでお参りしてくれて、にぎやかに過ごせましたよ」と応えると、担当の方は、「いやあ、そういう時代なんですねえ。でもよかったです」と安心されたようでした。
まとめ
他に身寄りのない叔父の葬儀に際し、通夜会場に泊まったのは私一人でした。人生の半分以上を介護施設で暮らした叔父でしたが、最後の夜を一人にしなくてよかったです。がらんとした空間を埋めてくれたのは遠方の子どもたちでした。おかげであまり寂しさを感じることなく、温かい気持ちで過ごせました。家族のぬくもりが叔父にも伝わったのではないかと感じました。
※記事の内容は公開当時の情報であり、現在と異なる場合があります。記事の内容は個人の感想です。
著者:森原あさみ/50代女性・会社員
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2026年3月)
※一部、AI生成画像を使用しています。
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