
私は中堅の商社で、30年近く営業事務として働いています。長く仕事を続ける中で、時代の変化に合わせて新しいやり方を取り入れる大切さは感じていました。けれど、ある出来事をきっかけに、データや効率だけでは見えないものもあるのだと、改めて実感することになりました。
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中途採用でやって来た若手のマネージャー
半年ほど前、私の部署に中途採用で30代前半の男性マネージャーがやって来ました。彼は仕事ができ、判断も早い人でした。新しいツールやデータ分析にも詳しく、部署の仕事を効率化しようと積極的に動いていました。
ただ、その一方で、私たちベテラン世代に対しては「デジタルに疎い古い人間」だと見ているような態度を取ることがありました。直接強い言葉で責められるわけではありませんでしたが、こちらの意見を軽く受け流されたり、鼻で笑われたりするたびに、少しずつ悔しさが募っていきました。
そんなある日、長年お付き合いのある重要なお得意さまへのプレゼン資料を、彼が作成することになりました。
無視された私の助言
そのお得意さまとは、20年以上にわたる取引がありました。私は過去のやりとりを知っていたため、彼には「あのお客さまは義理堅い方なので、過去のトラブルの経緯も踏まえた提案をしたほうがいいですよ」と伝えました。
しかし彼は、「今はデータの時代です。20年も前の話を持ち出すのは非効率だ」と言い、私の助言を取り入れることはありませんでした。
彼が完成させた資料は、たしかに見やすく、最新のAI分析データも盛り込まれた立派なものでした。数字やグラフも整理されていて、一見すると申し分のない内容です。それでも私は、どこか大事な部分が抜け落ちているような気がしていました。
商談の場で問われた20年前のこと
実際の商談の日、問題が起きました。お得意さまの社長が、資料には載っていない「20年前の契約時の特殊な条件」について、鋭く質問してきたのです。データをもとに準備していた彼は、その質問に答えることができませんでした。さっきまで自信に満ちていた表情は一変し、顔を真っ青にして言葉を失いました。
そのとき私は、当時の手書きの記録から記憶していた詳しい経緯を思い出しながら、契約に至るまでの流れを丁寧に補足しました。さらに、先代社長から引き継がれてきた思いについても、私の知る範囲でお伝えしました。
すると社長は、深くうなずきながら「そうだった。あのときの恩は忘れていないよ。覚えていてくれてうれしい」と言ってくださったのです。そして、その場で契約を継続していただけることになりました。
帰りの車中で下げられた頭
商談を終えた帰りの車中、あれほど強気だった彼が、消え入るような声で「すみませんでした。助かりました」と言いました。そして、私に深々と頭を下げたのです。
その瞬間、ずっと胸の奥に引っかかっていたものが、すっと取れたような気がしました。自分の経験が誰かの役に立ったことも、これまで積み重ねてきた仕事が無駄ではなかったと感じられたことも、本当にうれしかったです。
この出来事を通じて、技術がどれほど進歩しても、人と人との信頼関係や、長年積み重ねてきた経験の重みは色褪せないのだと感じました。
まとめ
もちろん、効率やデータは大切です。けれど、それだけでは拾いきれない現場の空気や、過去から続く思いもあります。若い世代のやり方を否定するのではなく、お互いの強みを認め合いながら働くことが大切なのだと、改めて考えさせられました。自分自身の経験に誇りを持ち、腐らずに仕事を続けてきてよかったと、心から思えた出来事です。
※記事の内容は公開当時の情報であり、現在と異なる場合があります。記事の内容は個人の感想です。
著者:坂下さき/50代女性・会社員
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2026年6月)
※一部、AI生成画像を使用しています。
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