母の介護と育児-ダブルケアの日々 vol3 – ダブルケアに潜む危険とは?

母の介護と育児-ダブルケアの日々 vol3 –  ダブルケアに潜む危険とは?

“ダブルケア”という言葉を聞いたことがあるでしょうか。厚生労働省によると「晩婚化・晩産化等を背景に、育児期にある者(世帯)が、親の介護も同時に担う」こととなっています。また、平成28年度の調査では日本国内で約25万人いるという報告(※)もありました。

私がこの言葉を知ったのも、実際に自分自身がその立場になってから。子どもが小学校に入学した頃から、20分ほど離れた実家に住んでいる母親の介護が始まりました。

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役所の窓口はすべて平日

職場にも、ママ友や友人にも、親の介護をしている人は誰もいなかったので、週末にご飯に誘われても断らなくてはならない自分の境遇が恨めしく思えるときもありました。
暗く、思いつめた表情をして歩いていたからか、ある日偶然スーパーで、保育園時代のママ友から声をかけられました。高齢者施設でケアマネージャーの仕事をしていた彼女は、レジかごを手にしたまま、私の話を聞いてくれました。

そして、母親の介護認定を受けるように勧めてくれました。そこで初めて、介護にまつわるさまざまなサービスが利用できることを知ったのです。不思議なことに、こういう役所のサービスは、自分で知ろうとしない限り、なかなか向こうから教えてはもらえないものです。

母親の場合は「パーキンソン病」だったので、難病申請は病院から紹介を受けてしていたのですが、介護認定は受けていなかったので、すぐに調べて、最寄りの地域包括センターに行くことにしました。

しかし、このような手続きの窓口は、ほとんどが平日の朝9時~夕方5時までです。今日は行けるかな、明日こそ半休を取っていこう、などと思っているうちにあっという間にひと月が経ってしまいます。やっとのことで申請、介護認定調査にも立ち会い、利用できるサービスについて説明を受けました。その立ち合いに何日の有給休暇を費やしたかわかりません。

結果は要介護1。家の階段やトイレに手すりをつける工事をすることにしました。母親はまだ自力歩行に問題がない状態でしたが、早いほうがいいと勧められるままに取り付けた手すりは、病状が進行した現在も、しっかり役立っています。

ダブルケアに潜む危険 〜 自分が体調不良に

子どもが小学校と学童に慣れてきたころ、私は仕事の合間に実家に連絡して、毎日母親の体調不良の話を聞き、週末には実家に顔を出して、家事をしていました。母はもうすっかり家事ができなくなっていましたし、ステント手術をした父も、体調が万全とはいえなかったため、常備菜を作って持って行ったり、トイレ掃除をしたりといったことは私の週末の仕事になりました。

その分、夫にはだいぶ負担をかけていました。現在もかけています。とはいえ、毎週末に実家に帰っていると、家の中の雰囲気は当然悪くなります。まだまだ甘えたい子どもにも負荷がかかり、自分自身も当然趣味や友人と会ったりする時間や心の余裕がもてません。

そんなある日突然片耳がキーンとなって聞こえなくなりました。ストレス性の突発難聴でした。そのほか、夏には子どもからリンゴ病をもらって寝込むなど、私自身が体調を崩すこともしばしばありました。そのたびに「あぁ、もう少し若かったらなぁ」と思うのですが、こればかりはしかたないことです。

介護はPTA役員辞退の理由に該当せずの驚き

初めての小学校生活で、未知の世界に触れていた子ども同様、私にとっても「小学生の母親」デビューとなりました。初めての保護者会。保育園の保護者会よりずっと多い人数のお母さんたちには、あいにく知り合いもほとんどいなくて、緊張しまくっていました。そこで出たのが、PTA役員の選出です。いまの生活でいっぱいいっぱいの私は、うつむいて時間が過ぎるのを待っていました。

そこに、あるお母さんが挙手をして質問をしたのです。「実は同居している母親を介護しているのですが、役員免除の対象にはなりますでしょうか」と。思わず「同志!」と思って顔を上げていました。しかし、説明役の保護者の方の回答は非常に厳しいものでした。

「仕事、介護、未就学児の兄弟がいるなどはPTA役員選出免除の対象にはなりません」。質問したお母さんは「そうですか、わかりました」と心なしか寂しそうに手を下ろしていました。少なくとも子どもが通う学校では、介護はPTA役員免除の理由にはならないのです!

これは大きな誤算でした。PTAの集まりというのが、これも必ず平日で、しかも役職によっては月に何度か学校に来ないといけないにもかかわらず、です。幸い、なんとか役員を免れてこられましたが、卒業年にはこれまで何も役職を担当していない人が、必ず何かの担当をしなくてはならないという決まりがあるそうで、今から戦々恐々としています。

転倒を繰り返す母

病名がついて2年目の大晦日のことでした。子どもと実家を訪ねた私と、座ってお茶を飲んでいた母が、突然ガクっと椅子から崩れ落ちたのです。目も閉じているし、身体もなんだか冷たくなっている気がします。本当にさっきまで普通に話していたのに、急な変化に動揺した私は大声で父を呼び、そっと床に母を寝かせて救急車を手配しました。

救急車が着くころには意識を取り戻していましたが、自分が倒れたこと、意識を失ったこともまったく覚えていません。念のため搬送、検査を受けたところ、パーキンソン病患者の特有の症状のひとつで、血圧が乱高下したことが原因ではないかということでした。

これを機に、たびたび母は意識を失って転倒をするようになりました。
家はもとより、駅ビルのレストランや、電車の中。極めつけは駅のエスカレーターからの転落でした。すっかり老々介護で生活全般、母の面倒を見ていた父は、外出時にも必ず母のそばに付き添っていたのですが、そのときはなぜか母がスタスタと父より先に歩いてエスカレーターに乗ってしまったのです。「わっ」という声に買い物袋を提げた父が走り寄ると、エスカレーターの下に母があおむけに倒れて、周囲を人が囲んでいました。またも救急車のお世話になった母ですが、自分がスタスタ歩いてエスカレーターに乗ったことも覚えていませんでした。

そして、だんだん母親から目が離せなくなり、父の負担が増えてきた状況を考え、訪問看護サービスの利用を検討し始めました。

■著者の体験による個人の考えを記事にしています。

Takako Maruyama
作家と書籍の広報PRの仕事をしています。40歳で出産し、小学校に通う子どもが一人います。パーキンソン病で要介護4の母、80歳になる父を週末介護しています。

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