介護保険制度の仕組みや保険料

少子高齢化や核家族化が進み、家族だけで被介護者を支えることが難しくなるなか、被介護者の自立支援や介護者の負担軽減のためのサポートを目的として、1997(平成9)年12月に「介護保険法」が制定、2000(平成12)年4月に施行となり、介護保険制度がスタートしました。その仕組みや対象者、保険料やサービス内容などを知っておけば、いざというときに安心です。

「介護保険制度」が創設されたわけは?

「介護保険制度」が施行される前の高齢者介護は、老人福祉法に則った措置制度として各市町村が実施、サービスの種類や機関を決定していました。そのため提供されるサービスも均一で必要最小限、また利用者が自由にサービスを選択することもできませんでした。

しかし、急激に高齢化や核家族化が進み、家族だけで介護を行うことに無理が生じてきました。また、高齢老老介護や介護離職など新たな問題も次々と浮かびあがってきます。

それらの状況に応える形で、厚生労働省には「社会保障制度審議会」が置かれ、審議がスタートします。そして、1995(平成7)年には「社会保障制度の再構築」に関する勧告が行われます。その後、1997(平成9)年12月には「介護保険法」が制定、2000(平成12)年4月に施行となり、「介護保険制度」がスタートすることになったのです。

さて、高齢者介護の充実をはかるために創設された「介護保険制度」は、「社会保険方式」により運営されます。新たな「介護保険制度」の柱となるのは、

  • 利用者自らがサービスを選択できること
  • ケアマネジメントの導入
  • サービスにかかる費用は、公費で50%、残りを被保険者(利用者)が負担する保険料によりまかなう
  • 保険給付対象者(利用者)は、受益に見合った定率の利用者負担を行う

の4点です。

加入者(被保険者)は65歳以上の第1号被保険者と、40〜64歳の第2号被保険者となります。2000年の介護保険制度創設時、第1号被保険者数は2,165万人でしたが、2018年には3,492万人と約1.6倍に。さらに、要介護(要支援)認定者は218万人から644万に、サービス利用者は149万人から474万人(※1)と、それぞれ約3倍に増加しており、「介護保険制度」は高齢者の介護に欠かせないものとなっています。

一方、今後日本の総人口は減少するといわれるなかで、75歳以上の高齢者の占める割合は増加し、2065年にはその割合が25%を超えると想定されています(※2)。また、65歳以上の高齢者数は2042年に3,935万人(※3)とピークを迎え、認知症高齢者の増加も見込まれていることから、今後ますます介護保険の重要性が高まっていくことがわかるでしょう。

*1  日本の介護保険制度について ( 厚生労働省老健局 総務課 )  (外部サイトのPDFファイルが開きます)
*2,3  高齢化の現状と将来像|平成30年版高齢社会白書(全体版) – 内閣府

「介護保険制度」の仕組み

保険者は、介護サービス費用の9割 (8割、7割 ) を給付するとともに、第1号被保険者から保険料を徴収し、介護保険財政を運営しています。財源は公費、保険料それぞれ5割 とされています。

また、健康保険に加入している第2号保険者は健康保険の保険料と一体的に介護保険料を徴収されています(原則、被保険者と事業主で1/2ずつの負担)。国民健康保険に加入の場合は、国民健康保険の保険料と一緒に徴収されます。

「介護保険制度」における保険者と被保険者

「介護保険制度」は、すべてを介護保険法の下に運営されています。

保険者

「介護保険制度」における「保険者」とは、市町村および特別区(23区)といった介護保険を運営する責任主体をさします。保険給付の前提となる要介護・要支援認定はここが行います。一方、要介護・要支援認定認定基準など、介護保険制度運営に関わる事項を政省令や告示、また円滑な運営のための指導や監督、助言などは、厚生労働省(国)が行います。

被保険者

「被保険者」は、保険に加入して保険料を納付する義務を負う替わりに、保険事故が発生した場合は保険給付を受け取る権利があります。わが国の「介護保険制度」においては「強制加入」の制度がとらているため、40歳以上のすべての国民は、本人の意思に関係なく、介護保険に加入、被保険者となります。

また、介護保険の被保険者は、65歳以上の「第1号被保険者」と40歳以上65歳未満の医療保険加入者である「第2号被保険者」の2種類となっています。「第1号保険者」は、要支援、要介護認定を受けることで、誰でも介護サービス(保険給付)を受けることができます。「第2号保険者」は、加齢に伴って生じる心身の変化に起因されるる16の特定疾病(末期がん、関節リウマチなど)以外では、介護サービス(保険給付)を受けることはできません。

第1号被保険者には、65歳の誕生日を迎えると介護サービスを受ける際に必要な介護保険の被保険者証が公布されます。

介護サービスを利用するまでの流れ

介護サービスを利用できるのは、原則として65歳以上の第1号被保険者に限定されています。該当するかたは、要介護 ( 要支援 ) 認定を受けることが必要です。

① 申請

介護サービスの利用を希望者は、市区町村の窓口で「要介護認定」(もしくは要支援認定)の申請をしてください(申し込み窓口は市区町村によって異なりますのでご確認ください)。

② 調査・判定

  • 認定調査員が自宅を訪問、心身の状況について本人または家族に対して聞き取り調査(内容は全国共通)を行います。同時に、市区町村は直接、かかりつけ医に、医学的見地から本人の心身の状況についての意見書の作成を依頼します。
  • 認定調査の結果と主治医の意見書を基に、「介護認定審査会」(保険・福祉・医療の学識経験者などにより構成)で審査、要介護1~5または要支援1、2のどれにあたるかを判定します(当然ながら認定されないケースもあります)。

③ 認定結果の通知

④ ケアプラン作成

要介護1~5の認定を受け、施設へ入所を希望するかたは、直接施設に申し込みます。また、在宅で介護サービスの利用を希望するかたは、居宅介護支援事業者と契約、その事業者に所属するケアマネジャーと相談のうえ、利用するサービスを決定、ケアプラン(介護サービス計画 ) を作成します。要支援1・2と認定されたかたは、地域包括支援センターの担当職員が介護予防サービス計画 ( 介護予防ケアプラン ) を作成します。

⑤ 介護サービス利用開始

施設入所を希望するかたが利用できるサービスには、「定施設入居者生活介護」(有料老人ホームなどに入居している高齢者が日常生活上の支援や介護サービス)、「特別養護老人ホーム」(要介護3以上で、常に介護が必要で自宅では介護が困難なかたが入所、食事、入浴、排せつなどの介護を一体的に提供)などがあります。

参考: 介護保険制度について (厚生労働省) (外部サイトのPDFファイルが開きます)

利用者の自己負担分は原則として1割。低所得者には負担軽減措置も

介護サービス費のうち、要介護者は原則として1割(一定以上所得者は2または3割)分が自己負担となり、残りは保険給付となります。施設サービスを利用した場合の食費や居住費、日常生活費も自己負担となりますが、低所得者は居住費と食費に負担限度額が設定され、基準費用額との差額が特定入所者介護サービス費(捕捉給付)とし給付されるので、負担が軽減できます。

なお、在宅サービスについては要介護度に応じた支給限度基準額(保険対象費用の上限)が設定されていて、その基準額を超えたサービス費用は自己負担となります。

自己負担額の割合については、合計所得金額160万円以上、かつ年金収入とその他合計所得金額280万以上(単身世帯の場合。夫婦世帯の場合346万円以上)の場合は2割となります。さらに、2018(平成30)年8月からは、合計所得金額220万円以上、かつ年金収入とその他合計所得金額340万円以上(単身世帯の場合。夫婦世帯の場合463万円以上)の場合、3割負担となりました。
ただし、月々の介護サービス費の自己負担額が上限額を超えた場合、高額介護(介護予防)サービス費として超過分は払い戻されます。

まとめ

介護保険制度は、まだ元気なうちから受けられる介護予防のためのサービスや、つえやシルバーカーなどの福祉用具貸与といったサービスにも対応しています。「まだ自分には無縁なもの」という方であっても、急に親が要介護状態になる可能性もありますし、制度について早めに知っておいて損はありません。なお、介護保険制度は約3年ごとに見直されているので、常に最新の情報を入手しておくことが大切です。