介護老人保健施設(老健)とは

「介護保険施設」は24時間体制の介護サービスの提供を主目的とする施設。民間の有料老人ホームなどに比べて安い費用で利用できることから人気があります。そのうちのひとつである「介護老人保健施設(老健)」は、「在宅復帰をめざす入所者が可能な限り自立した日常生活を送ることができるよう、リハビリテーションや必要な医療・介護などを提供」しています。

自宅と病院の中間施設にあたり、在宅復帰を目的とする「介護老人保健施設(老健)」

【介護保険法第8条第28項】では、「介護老人保健施設」を以下のように定義しています。

「介護老人保健施設」とは、要介護者であって、主としてその心身の機能の維持回復を図り、居宅における生活を営むことができるようにするための支援が必要である者に対し、施設サービス計画に基づいて、看護、医学的管理の下における介護及び機能訓練 その他必要な医療並びに日常生活上の世話を行うことを目的とする施設です。

介護保険法第8条第28項

また、「介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準(平成11年厚生省令第40号)」の<基本方針>第一条の二では、「介護老人保健施設は、施設サービス計画に基づいて、看護、医学的管理の下における介護及び機能訓練その他必要な医療並びに日常生活上の世話を行うことにより、入所者がその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるようにすることとともに、その者の居宅における生活への復帰を目指すものでなければならない」としています。

つまり、「介護老人保健施設」は、在宅復帰、在宅療養支援のための地域拠点かつリハビリテーションを提供する機能維持・改善の役割を担う施設ということになります。例えば、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士などの専門職が常駐、個別のリハビリ訓練が行われます。

また医師は常勤、看護師も24時間常駐している施設が多いことから、胃ろうや痰の吸引など、手厚い看護が受けられるのは大きなメリットです。

「介護老人保健施設」は、あくまでも自宅に戻って生活することを目的とするため、3カ月ごとに入所継続判定が行われます。しかし、施設によっては、本人の身体状況や希望により期間が延長できるケースもあるようです。また在宅での生活へ戻るのが難しいと判断されたかたのなかには、「特別養護老人ホーム」の空きが出るまで「介護老人保健施設」で待機するというような使い方もされています。

「介護老人保健施設」は、在宅復帰を目的とした施設ですが、実際には自宅へ戻らず、有料老人ホームや特別養護老人ホームへ転居していくかたも少なくありません。

なお、「介護老人保健施設」が利用できるのは要介護1以上なので、要支援1・2のかたは利用できません。

まだまだ従来型の多床室が多い「介護老人保健施設(老健)」の居室

「介護老人保健施設」には、10人程度をひとつのユニット(生活単位)として構成、リビングスペース(共有空間)を取り巻いて個室が10室程度並ぶ「ユニット型個室」で構成される「ユニット型介護老人保健施設」といわゆる相部屋の「多床室」で構成される「従来型介護老人保健施設」があります。そのどちらもが、広さや設備などが細かく決められています。

例えば、「ユニット型個室」は、壁芯で10.65平方メートル以上、「多床室」は、入所者1人あたり8m²以上の床面積が必要となります。またいずれもナースコールや身の周り品が収納できる設備の設置なども義務づけられています。

個室化が進む「介護保険施設」にあって、自宅復帰をめざすための「介護老人保健施設」は、入所期間が限定されているため、「特別養護老人ホーム」に比べるとまだまだ多床室が主流となっています。

また、「介護老人保健施設」は、自宅に戻ることを前提としたリハビリテーションに力を入れているため、ユニット型、従来型のいずれも、機能訓練室は、1m²×入居定員数以上で、リハビリに必要な器具、機械を備えるとしています。

「介護老人保健施設(老健)」にかかる費用

「介護老人保健施設(老健)」は、「特別養護老人ホーム」と同様、「介護保険施設」のひとつ。初期費用がかからないばかりか、民間の有料老人ホームに比べると、月額利用料も安価です。しかし、医療やリハビリテーションが充実しているため、「特別養護老人ホーム」に比べると割高になります。

入居一時金(敷金)

「介護老人保健施設(老健)」は、一時金(敷金)などは不要です。

「介護老人保健施設(老健)」の月額利用料

月額利用料は以下で構成されています。
介護サービス費(1〜3割/利用者によって異なる)+介護サービス加算(施設、利用サービスによって異なる)+居住費(家賃/居室タイプによって異なる/利用者負担軽減制度あり)+食費(利用者負担軽減制度あり)+日常生活費(利用者によって異なる)
要介護度が高くなると「介護サービス費」の負担額が増え、サービスが手厚くなるとその分の料金が加算されることになります。

【内訳】
● 介護サービス費

介護サービスを受けるための費用で、介護保険負担割合証に記載されている利用者負担割合(*1)に応じて「介護サービス費」のうち1割から3割までのいずれかが利用者負担となります。

● 介護サービス加算

施設設備や手厚い職員の配置、サービスなどに応じて基本料に加算されます。

●居住費(家賃)(利用者負担)

室料+光熱費相当。「ユニット型個室」「従来型個室」などの居室タイプによって異なります。

● 食費(利用者負担)

食材費+調理費。1日3食分の食費です。

● 日常生活費(利用者負担)

レクリエーション費や理美容代、日用品代など。
ただし原則として「特別養護老人ホーム」においては、おむつ代は利用者負担はなりません。

「介護老人保健施設(老健)」入所までの流れ

「介護老人保健施設(老健)」に入所するまでの流れは以下のとおりです。

  1. 問い合わせ・相談
  2. 施設見学・説明
  3. 申し込み
    申し込みの際には、申込書(入所申込書・診療情報提供書・アセスメント用紙)、介護保険被保険者証および介護保険負担限度額認定証の写しが必要になります。
  4. 入所判定会議
  5. 決定・連絡・入所日時の相談、決定
  6. 入所

申し込み先は基本的に希望する「介護老人保健施設(老健)」となります。

まとめ

自宅へ戻ることが前提のため、入所期間に制約はあるものの胃ろうや痰吸引などにも対応可能な手厚い看護や、充実したリハビリなどは、入所者にとっても家族にとって大きな安心材料となることでしょう。民間の有料老人ホームに比べれば安い費用ではあるものの、個別対応が増えるため「特別養護老人ホーム」より費用は高めになってしまいます。