介護付き有料老人ホームに入居するのにかかるお金
高齢者向け介護施設には、有料老人ホームをはじめ、特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)、老人保健施設(介護老人保健施設)、介護療養型医療施設、認知症共同型生活介護(グループホーム)、ケアハウス、サービス付き高齢者住宅までさまざまな種類があります。
かかる費用も、施設の形態や運営会社、設置場所、また、入居するかたの要介護度、収入などによって、大きく異なります。ここでは、「介護付き有料老人ホーム(特定施設入居者生活介護)」入居時に考えなくてはならないさまざまな費用について、わかりやすく解説します。
多くの「介護付き有料老人ホーム」が採用する一定期間分の家賃の前払い金
多くの「介護付き有料老人ホーム」で、入居一次金方式を採用しています
入居一次金(前払い金)とは、入居時に一定期間分の家賃を前払いする老人ホーム独特の方式をいいます。ここでいう「一定期間」とは、何年くらいその施設に居住するかを施設ごとに想定、決められた月数である「想定居住期間」を指します。
介護専用型では5年前後、入居時自立型では10年〜と、施設により大きな開きがあるようです。
入居一次金(前払い金)は、償却されます
ホームによって異なりますが、入居一次金(前払い金)には償却期間が設定されています。償却期間が終了する前に退去した場合には、未償却部分が返還されることになります。
多くの施設では、入居一次金(前払い金)の2~3割を「初期償却」し、残額は「想定居住期間」で均等に償却しているようです。老人福祉法の基本方針では、「入居一時金(前払い金)は、「1カ月の家賃相当額×想定居住期間(月数)+想定居住期間を超えて契約が継続する場合に備えて事業者が受領する額」と定めています。
「想定居住期間」は入居するかたの年齢を考えたときの平均寿命や平均余命などを考えて各施設で定義しています。
老人福祉法第29条において入居一時金について定められています
老人福祉法第29条
<第6項>権利金等の受領禁止
利用者保護の観点から、家賃、介護等のサービス費用、敷金のみを受領可能とし、権利金等を受領しないことを事業者に義務づける。
<第8項>短期間での契約解除の場合の変換ルール
利用者保護の観点から、有料老人ホームへの入居後一定期間の契約終了の場合に、施行規則で定める変換方法に基づき、前払い金を返還する契約を締結することを義務づける。
- 3月以内の場合→ 前払金から実際の利用期間分の利用料を控除した額
- 想定居住期間内の場合→ 契約終了から想定居住期間までの利用料に相当する額
参考:有料老人ホームの概要 – 厚生労働省 (外部サイトのPDFファイルを表示します)
入居金が0、または低額だからといって支払総額が安くなるとは限りません
「入居一時金(前払い)」方式は、一定期間の家賃相当額を前払いする方式ですから、当然月額利用料は抑えられます。
一方「入居一時金(前払い)」が低額、もしくは「月払い」方式の場合は、毎月家賃相当額を支払うことになるので、その分割高になる傾向があります。
「介護付き老人ホーム」の経営会社が倒産したときの保障制度があります
支払った「入居一時金(前払い金)」は、保全措置が義務づけられています。もし、経営会社が倒産して、「入居一時金(前払い金)」の未償却分が返却されないときには、500万円を上限に未償却分の「入居一時金(前払い金)」は支払われるという制度があります。
施設によって開きがある「介護付き有料老人ホーム」の月額利用料
「介護付き有料老人ホーム」の月額利用料は、施設によって多少は異なるものの、家賃や食費、管理費、光熱費、共用施設の使用料などで構成されています。
一般的にですが、家を購入したり借りたりするときに立地が影響するように、「介護付き有料老人ホーム」の「家賃」に「立地」は大きく影響します。豪華で立派な「建物や施設の造り、内装」も同様です。
また、通常は、「介護付き有料老人ホーム」の人員配置基準は、 要支援者10人について看護・介護職員が1人、要介護者3人に対して看護・介護職員が1人と定められています。しかし施設によっては、手厚いサービスを提供するために、例えば要介護者2人に対して看護・介護者が1人にすればその分の人件費で月額利用料が高くなるでしょう。24時間看護師が常駐する場合も同様です。
筆者の知り合いの食べ物の好き嫌いが多い人が入居した「介護付き有料老人ホーム」では、その人の嗜好に合わせた食事を提供してくれたそうです。しかし「魚が嫌い」という別の知り合いは、「魚がメニューの日は白いご飯にごま塩をかけているのよ」と笑っていました。一例でしかありませんが、個別のサービスに対応してくれるかどうかも、金額に反映されているのでしょうね。
うっかり忘れていると大変なことに。月額利用料以外にかかるお金
実は「介護付き有料老人ホーム」入居時にかかる費用のすべてを月額利用料で賄うことはできません。
とはいえ、介護サービスには、要介護度によっての上限が設定されていますから、それを超えてサービスを受ける場合は、「介護サービス負担金」以外に支払いが発生します。具体例をあげると、車椅子のレンタルやオムツ代、病院への付き添い、規定回数以上の入浴介助などがこれに当たります。
それ以外に、美理容代金、個別のレクリエーション参加費、買い物代行(付き添い)、嗜好品なども、理容ごとに請求されます。
月額利用料以外にかかるお金で一番負担となるのは、医療費でしょう。協力医療機関による定期検診や急病痔の往診、治療費、薬代などは、要介護度が進むと一気に膨らみます。特に入院に至った場合、多くは居室はそのままに入院治療費が発生しますから、施設と病院のどちらにも支払いが必要になります。
入居した多くの人が、「月額利用料以外の支払いが多くて驚いた」と話しています。
まとめ
どんな建物で、どんな設備があるか、どんなサービスを受けたいかを考えれば、おのずとそれに比例した「介護付き有料老人ホーム」が見つかるでしょう。しかし都心に近づけば近づくほど、建物が豪華であればあるほど、設備が整っていればいるほど、手厚いサービスを受ければ受けるほど、入居一時金も月額利用料が高額になることも間違いありません。
とはいえ、入居時を検討しているときの収入や健康状態がその先ずっと続かないこともまた事実です。希望と現実を秤にかけたとき、皆さんはどんな選択をされますか?