手足のむくみは、高齢者だけでなく若い人も悩むことが多い症状の1つ。でも実は、高齢者のむくみは重大な病気が隠れている可能性も! そこで、むくみの原因と自宅でできるマッサージなどの予防方法について、きくち総合診療クリニック理事長・院長の菊池大和先生にお聞きしました。今回は、むくみを訴えて受診する高齢者のほとんどが「足のむくみ」に悩んでいることから、足のむくみに関する内容を中心に紹介します。
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教えてくれたのは…
監修/菊池大和先生(医療法人ONE きくち総合診療クリニック 理事長・院長)
地域密着の総合診療かかりつけ医として、内科から整形外科、アレルギー科や心療内科など、ほぼすべての診療科目を扱っている。日本の医療体制や課題についての書籍出版もしており、地上波メディアにも出演中。
むくみの基礎知識
まずは、むくみが起こる仕組みと生じやすい部位について紹介します。
浮腫(むくみ)とは
「浮腫(むくみ)」とは、体内の不要な水分が皮下組織にたまってしまう現象です。
人の体の血液循環は、心臓のポンプ機能によっておこなわれています。手足の血液は重力があるため心臓まで送り返されにくいことから、ふくらはぎなど手足の筋肉が血液を送り返す手助けをしています。
しかし、病気や筋肉の衰え、薬の副作用などさまざまな要因から筋肉が機能しなくなると、血液を心臓に十分に送り返せなくなる状態に。こうして不要な水分がたまり、むくみになってしまうのです。
若い人と高齢者のむくみの原理に違いはありませんが、高齢者の場合は血液循環に関わる心臓や腎臓などに、命に関わる病気が隠れていることが多くあります。高齢者にむくみがある場合は特に注意が必要なため、むくみに気付いたら早めの受診が大切です。
むくみが生じやすい部位
むくみで受診される高齢者の9割が、足の甲や膝下、脛(すね)など下肢のむくみで来院されるほど、むくみは、心臓から遠い部位で起こりやすい傾向にあります。
また、寝たきりの方は、体の下側になっている背中やおしり、腰にかけてむくみが現れるほか、手や顔にむくみが生じることもあります。これらは、体を動かす機会が減少することで、筋肉のポンプ機能が作用しないことが原因です。
むくみの確認方法
むくんでいる場所を数秒押し、跡が残って元に戻らない状態であればむくみと判断できます。靴下や指輪の跡が残って元に戻らない期間が2週間以上続く場合なども、むくみが原因と考えられるでしょう。
また、むくみの他に「息切れがある」「血圧が高い」「足だけでなく顔もむくんでいる」といった症状がある場合は、より注意が必要です。こういった変化は周囲の家族の方が気付きやすいため、注意して見てあげましょう。
高齢者のむくみの原因
高齢者のむくみには、以下の2つが原因として考えられる場合があります。
病気によるむくみ
1つ目は病気が原因の可能性です。むくみが両足に出る場合、心不全や腎不全、低栄養などの病気が原因かもしれません。対して、むくみが片側や一部分のみに出る場合、下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)などの病気が原因であることも。
下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)
足の静脈に水分がたまって血管が拡張し、こぶのように膨れた状態のことです。急に悪化することはありませんが、だるさ・こむら返りといった症状が慢性的に起こりやすくなります。
長期にわたると色素沈着や静脈硬化が見られることも。
深部静脈血栓症(しんぶじょうみゃくけっせんしょう)
長時間同じ姿勢や窮屈な姿勢でいることで、下肢が圧迫されて血流が悪くなり、うっ血により血栓ができてパンパンに腫れ上がることです。エコノミークラス症候群とも言います。
むくみと一緒に表れると危険なサイン
・血圧が高く息切れがある(目安:通常時より血圧+20)
肺に水がたまっている状態なので、心臓が悪くなっている可能性があります。
・体重の急な増加(目安:1カ月で1~2kg増)
体に水がたまっている状態なので心臓や腎臓が悪くなっている可能性があります。
思わぬ病気が原因でむくみが引き起こされている可能性もあります。2週間~1カ月間継続してむくみの症状が表れるようなら、こうしたサインが表れていなくても受診しましょう。
薬の副作用
2つ目は、薬の副作用によるもの。降圧剤、鎮静剤、漢方薬などの薬の副作用としてむくみが起こることもあります。非ステロイド性抗炎症薬や抗生剤、カルシム拮抗(きっこう)薬などが、むくみが表れやすい代表的な薬です。
しかし、薬が原因と考えられるむくみの症状であっても、自己判断ですぐに薬を中止するのは危険です。むくみに気付いたら、すぐにかかりつけの医師に相談しましょう。
むくみの改善・予防方法
ここからは、高齢者や周りの家族が自宅で簡単にできる、むくみの改善・予防方法について紹介します。むくみが表れやすい足を中心に改善・予防方法を紹介していますが、他の部位にも応用できます。自分では動きにくい方も、家族と一緒にリハビリ感覚でチャレンジしてみてください。
軽い運動を継続しておこなう
むくみの予防には、ポンプ機能があるふくらはぎの筋肉を鍛えることが重要です。軽めの運動として、ウォーキングやかかと上げ運動をおこなうといいでしょう。ウォーキングはむくみ以外にも運動不足やストレスの解消など良い効果が期待できるため、毎日5分からでも取り組み、継続するのおすすめです。
患部をやさしくマッサージする
やさしくさする程度の力加減で、むくんでいる部分をマッサージしましょう。足首を回したり、足のつけ根を指圧したりして、血流を意識するのもおすすめです。強すぎるとかえって症状を悪化させることもあるので、マッサージのやり方には注意しましょう。
同じ姿勢を長時間続けない
歩けるようなら、1時間に1回立ち上がって歩いてみましょう。座っているときはかかと上げ運動をおこなうのが効果的です。
寝たきりの方は、水分がたまらないよう定期的な体位交換が有効です。
塩分をとりすぎない
厚生労働省の目標値「6g/日(小さじ1程度)」を意識し、塩分摂取を控えましょう。塩分・水分を体外に排出するカリウムやビタミンEを含むフルーツや大豆製品を、積極的に食事に取り入れるのもおすすめです。
塩分量を調節することは、健康維持にも役立ちます。
むくみ予防の着圧ソックスを履く
軽いむくみであれば、足を圧迫し血流を促進する着圧ソックスやストッキングも効果的です。高齢者の場合、日中起きているときにむくみを予防する着圧ソックスを履くのがおすすめです。
むくみの治療では、静脈の逆流を防ぐ医療用の弾性ストッキングを使用することもあります。
まとめ
高齢者のむくみは、体をあまり動かさないという生活習慣だけでなく、病気が原因で起こる場合があるため、早めの対策や受診が必要です。健康を維持するためにも、まずは運動や食事の見直しをし、医師の指導を受けながらむくみの改善を目指しましょう。多くの方が悩む下肢のむくみは、足の筋力がキーポイント。日々動かして筋肉が衰えないよう意識してみてください。
※記事の内容は公開当時の情報であり、現在と異なる場合があります。記事の内容は個人の感想です。
※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。
取材・文/原のどか
お父さんラブな甘えん坊男児を育てる転勤族ライター。趣味の「神社仏閣でおみくじを引く」を楽しみに、行く先々で家族を連れまわして開拓中。「育児も人生もなんとかなる!」をモットーに、困ったことも楽しみながら情報を発信していきます!