突然肛門に感じる激痛! 立つことも座ることもつらいほどの痛みの原因は、いぼ痔「外痔核(がいじかく)」かもしれません。そこで今回は、外痔核の原因や症状、痛みがつらいときに自宅でできる応急処置など、きくち総合診療クリニック理事長・院長の菊池大和先生にお聞きしました。クリニックでは、痔について受診される方の中ではいぼ痔が多く、年齢問わず7~8割の方が悩んでいるそう。この記事を受診の目安としてご活用ください。
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教えてくれたのは…
監修/菊池大和先生(医療法人ONE きくち総合診療クリニック 理事長・院長)
地域密着の総合診療かかりつけ医として、内科から整形外科、アレルギー科や心療内科など、ほぼすべての診療科目を扱っている。日本の医療体制や課題についての書籍出版もしており、地上波メディアにも出演中。
外痔核(がいじかく)ってどんな病気?
肛門は「肛門括約筋(こうもんかつやくきん)」という筋肉が肛門を閉じており、肛門括約筋だけでは閉じきれない部分を「肛門クッション」とよばれる組織がフォローしてくれています。この組織の粘膜下には、無数の毛細血管が集まっており、弾力性のある組織を作り出しています。いぼ痔は、この血管の血流が悪くなることで、うっ血したり腫れたりして生じるのです。
いぼ痔は発生する場所によって名前が変わります。「外痔核」は、肛門の淵から1.5cmほどの所にある、直腸と肛門の境目(歯状線/しじょうせん)よりも外側、肛門上皮(こうもんじょうひ)にできたいぼ痔。対して、肛門の境目よりも体の内側にできたものを「内痔核(ないじかく)」と呼びます。
外痔核ができる肛門の外側は知覚神経が通っている皮膚のため、ほとんどの場合痛みを伴うのが特徴です。対して、内痔核ができる歯状線よりも内側は痛覚がないため、痛みを感じないケースがほとんどです。
外痔核の種類と症状|あなたの外痔核はどのタイプ?
外痔核は大きく分けると主に「血栓性外痔核(けっせんせいがいじかく)」と「スキンタグ」の2つのタイプに分けられ、一般的に外痔核は血栓性外痔核を指します。まずは、あなたの外痔核がどのタイプか確認してみましょう。
【血栓性外痔核】痛みや出血があり裂けると縮む
血栓性外痔核とは、肛門クッションの血流が悪くなって血豆のようになり、肛門上皮にできてしまう痔核です。血栓性外痔核ができると、患部が一気に腫れ上がります。痛みの強さは1~4日程度がピーク。座ったり歩いたりするのがつらいほどの痛みや、出血を伴うことがあります。
【肛門皮垂(こうもんひすい)/スキンタグ】痛みも出血もないが擦れて不快感がある
肛門皮垂(スキンタグ)とは、肛門外の皮膚がたるんだ状態です。血栓性外痔核の血豆が解消されて皮膚がたるんでしまうと、スキンタグになります。また、切れ痔などでも生じる場合があります。命に係わるような病気ではなく、日常生活には支障がないのでそのままにしておいても問題ありません。
ただし、一度形成されたスキンタグは自然になくなることはありません。そのため、見た目が気になったり、下着やペーパーで擦れてかゆみや不快感を生じたりすることがきっかけで、受診される方もいます。
外痔核の主な原因
基本的に外痔核の明らかな原因は判明していません。しかし原因として、長時間同じ姿勢でいること、下痢や便秘で排便時にいきんでしまうことなど、肛門に圧をかけることで血液循環が悪くなって生じると考えられています。
またスキンタグは、内痔核が悪化して「嵌頓痔核(かんとんじかく)*¹」という状態になった後や血栓性外痔核になった後、切れ痔による炎症など、痔に罹患したことが原因で生じることが多い傾向です。
*¹嵌頓痔核……急激に悪化した内痔核。肛門から脱出して戻らず、さらに肛門で締め付けられることでうっ血しており、激しい痛みを伴う
外痔核の痛みを和らげる!家庭でできる応急処置
血栓性外痔核の説明で述べたように、外痔核は強い痛みを生じることが特徴です。そのため、急に痛みを感じて病院を受診しようと思っても、診療時間外だった! ということも。
ここからは、自宅でできる外痔核の応急処置を紹介します。
<外痔核の応急処置>
・痛み止めを飲んで膝を軽く曲げて横になり、体の力を抜いて安静にする
・出血している場合、まずはティッシュなどで押さえて止血する(目安10分)
・お風呂に浸かる、カイロで患部を温めるなどして、おしりの血行を良くする
外痔核の場合、痛みのピークは1時間程度です。長時間痛みが続く場合は血栓性外痔核の可能性が高いと考えてよいでしょう。
こんな症状が出たら要注意!外痔核の受診サイン
外痔核は痛みがあるのが特徴で、痛みとともに出血の症状も確認したため受診したという方も多いです。肛門に強い痛みや腫れ、しこり、出血などがあれば、まずは一度肛門科を受診しましょう。
また、症状が初期(軽度)の場合は、ひとまず市販薬の使用で様子をみることも可能です。外痔核に対する市販薬では、坐薬・注入軟膏・内服薬などがあります。市販薬で様子を見る場合は1週間を目安として、早めに肛門科を受診しましょう。
外痔核の治療方法
血栓性外痔核の場合、まずは薬物療法から取り組み、「痛みが強い」「いつまでも改善しない」などの場合は、切除療法に切り替えます。
スキンタグの場合は、基本的に日常生活に支障がなければ特に治療の必要はありませんが、どうしても違和感がある、気になるという場合は手術により切除することも可能です。
ここからは、それぞれの治療方法を詳しく紹介しましょう。
薬物療法
血栓性外痔核の一般的な保存療法*²。生活習慣の見直しや薬の使用でいぼ痔を手術しないで治す、患者さん自身に負担やリスクの少ない治療法です。外用薬と内服薬を併用して患部の血流を促し、血栓を吸収。1週間程度で痛みがとれ、2~4週間かけて腫れが引いていきます。痛みが強い場合は、鎮痛剤も併用可能です。
*²保存療法……手術をおこなわずに症状の改善・緩和を目指す治療方法
切除療法
患部を切開して血栓を取り除く・切除する、といった外科的治療方法です。術後に痛みがあるため、2週間程度の入院が必要になることも。傷口は切除してから約1カ月で治ります。血栓性外痔核の場合、激しい痛みによって緊急手術となり、急遽切除療法で対処することになるケースもあります。
まとめ
外痔核は自然治癒で治ることがなく、内痔核などほかの痔と併発することも多い病気です。とはいえ、おしりの病気ということもあり、恥ずかしくて病院から足が遠のく方もいるでしょう。しかし早期発見・早期治療を心がけることで、負担が少ないうちに解消することも可能です。手遅れになっていぼ痔の痛みに悩まされないためにも、肛門の違和感に気付いたら勇気を出して早めに肛門科を受診しましょう。
※記事の内容は公開当時の情報であり、現在と異なる場合があります。記事の内容は個人の感想です。
※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。
取材・文/原のどか
お父さんラブな甘えん坊男児を育てる転勤族ライター。趣味の「神社仏閣でおみくじを引く」を楽しみに、行く先々で家族を連れまわして開拓中。「育児も人生もなんとかなる!」をモットーに、困ったことも楽しみながら情報を発信していきます!
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