介護医療院とは
「介護療養型医療施設(療養病床)」に替わって、平成30(2018)年4月より創設されることとなった「介護医療院」は、長期的な医療と介護のニーズを併せ持つ高齢者を対象とし、「日常的な医学管理」や「看取りやターミナルケア」等の医療機能と「生活施設」としての機能とを兼ね備えた施設です。
2024年3月までに廃止予定の「介護療養型医療施設(療養病床)」って?
「介護療養型医療施設(療養病床)」は、継続的な医療ケアを必要とする要介護高齢者向けの長期療養施設です。医師は3人以上、または入居者48人に対して1人、看護または介護職員は入居者6人に対して1人が配置基準となっており、しっかり医療ケアやリハビリ、食事や排泄などの介護サービスも受けられます。ただし、洗濯や掃除などのサービスは充実しているとはいえません。
介護療養型医療施設には「介護療養病床」と「医療療養病床」がありますが、「介護療養病床」は「特別養護老人ホーム」や「老人保健施設」と同様に、介護保険制度が適用されます。なお、「医療療養病床」には医療保険が適用されています。
運営主体は主に医療法人で、病院や診療所の敷地内に併設されていたり、病院内のワンフロアが施設となっていたりするケースが多いようです。入居条件は原則65歳以上、要介護1以上ですが、実際は80歳以上で要介護4以上の高齢者が大半を占めており、入居待機者も多くなかなか入居できない傾向にあります。
状態が良くなり医療ケアが必要なくなると退去する必要があるうえに、レクリエーションなどの行事も少なく、多床室ではプライバシーが確保しづらいという難点もあります。
2017年度末で廃止が決まっていますが、2024年3月末までの移行期間が設けられています。
2024年3月末で廃止される「介護療養病床」に替わる「介護医療院」とは?
「介護保険法」の改正によって、2018年4月に新たに設置されたのが「介護医療院」です。
「介護保険法第8条第29項」において「介護医療院」は下記のように定義されています。
介護医療院とは、要介護者であって、主として長期にわたり療養が必要である者に対し、施設サービス計画に基づいて、療養上の管理、看護、医学的管理の下における介護及び機能訓練その他必要な医療並びに日常生活上の世話を行うことを目的とする施設
介護保険法第8条第29項
つまり、要介護の高齢者が長期療養できる生活施設、医療と生活施設の両方の機能を兼ね備えた新たな介護保険施設という位置づけになります。
「介護医療院」は、大きくⅠ型とⅡ型に分けられます。
Ⅰ型は、重篤な身体疾患を有する者及び身体合併症を有する認知症高齢者等を入所対象としたこれまでの「介護療養病床」に相当する施設、
Ⅱ型は、比較的容態が安定している要介護高齢者が入所対象の「老人介護保険施設(老健)」に相当します。
参考: 介護医療院の概要 (厚生労働省) (外部サイトのPDFが開きます)
「介護医療院」にかかる費用は?
「介護医療院」にかかる費用は、基本的に、介護保険施設である「特別養護老人ホーム(特養)」や「老人介護保険施設(老健)」と同じです。ただし、看取り・ターミナルケアなどに対応していることから、その分の介護サービス加算が発生し、他のふたつの施設よりも料金が高くなることが予想されます。
「介護老人保健施設(老健)」は、「特別養護老人ホーム」と同様、「介護保険施設」のひとつ。初期費用がかからないばかりか、民間の有料老人ホームに比べると、月額利用料も安価です。しかし、医療やリハビリテーションが充実しているため、「特別養護老人ホーム」に比べると割高になります。
入居一時金(敷金)
「介護老人保健施設(老健)」は、一時金(敷金)などは不要です。
「介護老人保健施設(老健)」の月額利用料
月額利用料は以下で構成されています。
介護サービス費(1〜3割/利用者によって異なる)+介護サービス加算(施設、利用サービスによって異なる)+居住費(家賃/居室タイプによって異なる/利用者負担軽減制度あり)+食費(利用者負担軽減制度あり)+日常生活費(利用者によって異なる)
要介護度が高くなると「介護サービス費」の負担額が増え、サービスが手厚くなるとその分の料金が加算されることになります。
【内訳】
● 介護サービス費
介護サービスを受けるための費用で、介護保険負担割合証に記載されている利用者負担割合(*1)に応じて「介護サービス費」のうち1割から3割までのいずれかが利用者負担となります。
● 介護サービス加算
施設設備や手厚い職員の配置、サービスなどに応じて基本料に加算されます。
● 居住費(家賃)(利用者負担)
室料+光熱費相当。「ユニット型個室」「従来型個室」などの居室タイプによって異なります。
● 食費(利用者負担)
食材費+調理費。1日3食分の食費です。
● 日常生活費(利用者負担)
レクリエーション費や理美容代、日用品代など。
まとめ
「介護療養病床」に替わる施設として2018年に創設された「介護医療院」。2020年9月30日時点においてその開設数は、全国で539施設、東京は16施設となっています(※)。2024年の移行期間が終了するまでに、どこまで定着するのか、増え続ける高齢者の受け皿になり得るのか、まだまだ先は見えてきません。
※介護医療院の開設状況について(令和2年11月13日):厚生労働省老健局老人保健課