認知症の通院に健康診断、歯科検診、予防接種…親の健康管理に手が掛かりいっぱいいっぱいに【体験談】

認知症の通院に健康診断、歯科検診、予防接種…親の健康管理に手が掛かりいっぱいいっぱいに【体験談】
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介護施設や自宅での介護、介護について調べたり、介護を考えるきっかけになったことなどの体験談、マンガ記事をお届けします。

認知症の通院に健康診断、歯科検診、予防接種…親の健康管理に手が掛かりいっぱいいっぱいに【体験談】

2023年に両親が他界するまでの5年間、週末に車で片道1時間半かけて実家に通い両親の介護をしていた私。当時40代後半だった私は、自分も年齢による体力の限界を感じつつ、アルツハイマー型認知症(脳の神経細胞が減り、脳が小さく萎縮することで症状が現れる認知症)の父と車椅子生活の母の2人を介護していたのでした。今回は、介護が必要な両親の健康管理についてお話しします。

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市の健康診断とがん検診と歯科検診

認知症の通院に健康診断、歯科検診、予防接種…親の健康管理に手が掛かりいっぱいいっぱいに【体験談】

当時82歳だった父と当時77歳だった母は、2人とも要介護支援2の認定が下りていました。夫婦2人で自宅での生活を続けるためには、健康維持が必須。しかし市から届く健康診断の郵便物も行方不明になってしまうので、探すのがまずひと苦労でした。やっと探し出せても、中身がなくて再請求せねばならないこともしばしば……。また、他県から通っている私には、まず実家のある市の健康診断について理解し、申し込み、健康診断に付き添うといった3ステップが必要でした。

また、健康診断当日までに検便を2回分採取することが必要でしたが、父は面倒がり、1回の便で2回分採取して持参していたようです。これは私も見過ごすわけにはいかず……。実は父が大腸がんで手術したことがあるので、検診をおろそかにはできないのです。そこでヘルパーさんやデイサービスのスタッフに協力してもらい、便が出そうなときに検便を採取してもらい、健康診断当日に私が採取した便を持参し、両親も連れて行くという方法にしました。

逆に歯科検診はあまり意気込むことはなく、予約した日に歯磨きをさせて連れて行くという手順なのでとてもやりやすかったです。

こうして、年1回の健康診断と歯科検診を何とか綱渡りのようにクリアしていました。

認知症の定期診察と歯の治療

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認知症の定期診察は3カ月に1回なのでそれほど負担ではなかったのですが、待ち時間が長いのが難点でした。ただ、父自身は座れば居眠りをするので、待合室自体は苦痛ではなかったようです。

歯科検診では父母の歯の手入れの悪さに歯医者さんも驚いた様子でした。検診後に始まった歯の治療では、ずっと放置していたのか父の歯はボロボロだったので抜歯が必要な歯が3本もありました。年齢のせいか痛がることはなかったのですが、抜歯後の翌日も診察があるので、私が2日間連続で付き添いできる日に抜歯の予約を入れるというスケジュールにしました。すべてが準備さえ整っていれば順調にできることでした。

また、母は過去に入れ歯を作ったことがあるものの、今回はもう諦めたと言い、残った歯で最後まで過ごしたいという希望を歯医者さんに伝えました。足腰も悪かったので歯医者さんが「大きな治療でなければ在宅で治療もできますよ」と言ってくださり、母は月に1度の在宅治療にしました。私が付き添って連れて行かなくても良いので、朝、電話やWebカメラで声掛けさえすれば、歯磨きをして待っているだけで治療が終わるので助かりました。

ワクチン接種と感染対策

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両親のインフルエンザの予防接種も私が連れて行きました。これも日程さえ間違わなければ、連れて行って予防接種するだけなのでそれほど難しくはなかったです。ただ、一度、「今から予防接種に行くから病院用のバックを用意しておいてね」と言っても、診察券や保険証、お薬手帳が入った病院用のバックが行方不明になり、探している間に時間が過ぎて予防接種が受けられなかったことがあります。このことがあってから、診察券や保険証、お薬手帳の準備も私がすべてすることになりました。

2020年、父85歳、母80歳のとき、新型コロナウイルスが流行し始め、ワクチンを予約して私が通える日に連れて行くという手順を取りました。ワクチン接種自体はたいしたことはないのですが、両親2人分の認知症の定期診察、健康診断、歯科検診と治療、インフルエンザの予防接種に加えて新型コロナウイルスの予防接種と増えるばかりで、毎週のように実家に通うことになりました。

私も次第に心の余裕がなくなっていきました。追い詰められた私は、実家から自宅に帰宅後、つらくてウジウジ泣いてはたまらず夜中でも家を飛び出し、パトロール中の警察に呼び止められるというようなこともありました。

まとめ

健康診断や歯科検診、予防接種などは、今すぐ病院に連れて行かなくても一大事にはなりません。しかし省略もできないものです。
両親2人での生活をギリギリまで続けていたので、気が付かないうちに私自身に限界がきていたのだと思います。ただ、心の救いは「自宅で暮らしたい」という父の希望通り、楽しく介護サービスを利用しながら、健康維持ができ、父も母も満足そうであったことでした。また、介護に関わるスタッフや私の家族など、周囲の理解やサポートがあったことだと思います。この中でどれかが欠けていても自分自身に限界がきて崩れていたのでは……と思います。

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※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。

監修/菊池大和先生(医療法人ONE きくち総合診療クリニック 理事長・院長)
地域密着の総合診療かかりつけ医として、内科から整形外科、アレルギー科や心療内科など、ほぼすべての診療科目を扱っている。日本の医療体制や課題についての書籍出版もしており、地上波メディアにも出演中。

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