私の父はアルツハイマー型認知症です。父の記憶や行動が変わっていくのを見て、私は悲しみや苦しみを感じました。しかし、父の介護に関するさまざまな方法を試してみて、父との関係を改善することができました。私が父の介護に取り組んだ経験を紹介します。
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徐々に壊れていく父
私の父は、アルツハイマー型認知症と診断されてから、自宅で介護を受けています。最初は、日常生活にはあまり支障がなく、私や家族とも普通に会話ができました。しかし、徐々に記憶力が低下し、同じことを何度も聞いたり言ったりするようになりました。
それだけならまだ我慢できたのですが、症状が進行するにつれて、私と家族の顔や名前を忘れたり、見知らぬ人だと思って怒ったり、恐がったりすることが増えていったのです。特に夜間になると、不安や混乱が強くなり、徘徊(はいかい)や暴力などの行動障害が起こりやすくなりました。
私は、父の介護に多くの時間と労力を費やすことになり、仕事や家庭のことがおろそかになってしまいました。仕事では集中力が欠け、家庭では家族との時間が減ってしまったのです。父の状態がどんどん悪くなるのを見るのは、とてもつらくて苦しかったです。
父のためにできること
私は父の介護に関するトラブルに対処するために、さまざまなことをしました。まず、医師と相談しながら、父の症状や状態に応じて薬や治療を選ぶことにしたのです。夜間の行動障害があったときは、音楽や香りでリラックスさせる非薬物療法のほか、睡眠薬や抗不安薬といった薬物療法も試しました。父の記憶力を維持するために、写真や日記などの思い出の品を見せたり、過去の話題や趣味について話したりしています。
父の興味や能力に合わせて、ゲームやパズルなどの認知活動もおこないました。そして、父の感情や気持ちを理解するように心がけるようにしたのです。父が私や家族のことを忘れたり、見知らぬ人だと思ったりしたときは、怒らずにやさしく名前や関係性を教えたり、安心させたりしました。怒ったり恐がったりしたときは、原因を探って話題を変えることで気分を変えるよう努めています。
自身の心身の健康を保つために
また、私自身の心身の健康を保つために、父の介護に関するストレスや悩みを家族や友人、専門家などに相談したり、自分の好きなことや趣味に時間を割いたりしました。父の介護を他の家族やヘルパーさんなどに頼んで、休息やリフレッシュの時間も作るようにしています。
そして、父との関係も少しずつ変わってきました。父は私に感謝の言葉をかけたり、笑顔を見せたりするようになりました。父の変化を目の当たりにし、私は父の存在を大切に思うようになったのです。
まとめ
父がアルツハイマー型認知症だと診断されたとき、私はがく然としました。どうしていいかわからないまま、介護の日々が始まってしまったのです。介護は心身ともに大変で、私は疲弊してしまいました。しかし、父の病気は私にも変化をもたらしました。周囲の助けや父の笑顔に感謝する気持ちが芽生えたのです。父の病気は治らないかもしれませんが、私は父と一緒に過ごす時間を大切にしたいと思っています。
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※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。
監修/菊池大和先生(医療法人ONE きくち総合診療クリニック 理事長・院長)
地域密着の総合診療かかりつけ医として、内科から整形外科、アレルギー科や心療内科など、ほぼすべての診療科目を扱っている。日本の医療体制や課題についての書籍出版もしており、地上波メディアにも出演中。
文/武田 博一
イラスト/おんたま