中高年の慢性的な「浮腫(むくみ)」は黄色信号!むくみの予防方法と受診の目安【医師解説】

中高年の慢性的な「浮腫(むくみ)」は黄色信号!むくみの予防方法と受診の目安【医師解説】
中高年の慢性的な「浮腫(むくみ)」は黄色信号!むくみの予防方法と受診の目安【医師解説】

高齢者によく見られる症状の1つ「浮腫(むくみ)」。動くことが少なくなってくるとむくみやすいから仕方ないと、スルーしていませんか? 実はむくみを放置して慢性化させてしまうと、思わぬ事態に陥ることもあるのです。そこで今回は、慢性的なむくみについて原因と予防方法を、きくち総合診療クリニック理事長・院長の菊池大和先生にお聞きしました。

★関連記事:中高年の「浮腫(むくみ)」は重大な病気のサインかも!?むくみの原因と予防方法【医師解説】

教えてくれたのは…

監修/菊池大和先生(医療法人ONE きくち総合診療クリニック 理事長・院長)
地域密着の総合診療かかりつけ医として、内科から整形外科、アレルギー科や心療内科など、ほぼすべての診療科目を扱っている。日本の医療体制や課題についての書籍出版もしており、地上波メディアにも出演中。

むくみの基礎知識

むくみとはどんな状態なのか、むくみの仕組みと受診する目安などを紹介します。

浮腫(むくみ)とは

むくみは、体内部の不要な水分が皮下組織にたまってしまう現象のことです。人の血液循環を支えるポンプ機能を果たしているのが心臓ですが、むくみは心臓から遠い部分に起こりやすい傾向があります。

特に足の甲や膝下などの下肢は、重力がかかるため血液が十分に心臓に送り返されにくい部位。下肢の血液循環を補助するふくらはぎなどの筋肉が衰えていると、より水分がたまりやすくなります。高齢者で足のむくみを訴える方が多いのは、このためです。

むくみの主な症状

むくみは痛みがないからと放置しがちですが、実は高齢者の慢性的なむくみには、背後に重大な病気が隠れていることが多いのです。まずは以下のチェックリストで、むくみと同じタイミングで発現している症状がないか確認してみましょう。

<むくみのチェックリスト>
・血圧がいつもより20以上上がった
・1カ月で体重が1~2kg増加した
・靴下の跡がつく(時間がたっても消えない)状態が2週間以上続いている
・足を上げて寝てもむくみが改善しない
・尿量が減った
・歩いているときや寝ているときに息切れ・呼吸困難が起きる
・手足に加えて顔も腫れぼったくなってきた
・副作用としてむくみが出る薬(非ステロイド系抗炎症薬、ステロイド薬、漢方薬など)を内服している

血圧・体重の増加や、息切れ、呼吸困難、全身がむくんでいるなどの症状がある場合、肺気腫(はいきしゅ:肺や気管支に炎症が起こることで気道が細くなる病気)など命に関わる病気が原因になっている可能性もあるため、すぐにかかりつけ医へ相談するのがおすすめです。

チェックリストに当てはまるものがなかった場合も、2週間以上慢性的にむくみがあると、これから病気が見つかる恐れがあります。本人ではむくみの状態に気付かないこともあるため、高齢者本人だけでなく、周りの家族が体調の管理も兼ねて日々見守ることが大切です。むくみに気付いたら、悪化する前に早めにかかりつけ医にかかりましょう。

病気以外の原因によるむくみ

高齢者のむくみは、病気以外が原因となっている場合もあります。

慢性下肢浮腫(まんせいかしふしゅ)

病気以外の原因でむくみが発生している場合、高齢者に多いのが「慢性下肢浮腫」です。

長時間同じ姿勢が続くと、足元から心臓へと血液を送り出す筋肉が動かされません。そのため、下半身の血流が滞り血液中の余分な水分が血管外に漏れ出してむくみが発生します。

生活習慣によるむくみ

冷えや塩分過多、ストレス、筋力低下などの生活習慣からむくみが起こることもあります。高齢者は加齢により循環機能や排せつ機能などの低下が起き、足がむくむ場合が多いです。

病気が原因でなくても、むくみを放置すると症状が拡大・悪化したり、下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう:足の静脈に水分がたまって血管が拡張し、こぶのように膨れた状態)や深部静脈血栓症(しんぶじょうみゃくけっせんしょう:下肢が圧迫されて血流が悪くなり、うっ血により血栓ができてパンパンに腫れる病気)などの病気に発展したりする場合があるため、油断は禁物です。

高齢者の場合、むくみから冷えを起こして筋肉が動きにくくなったり、歩きにくくなったりすることで、転倒リスクの増加や寝たきりの原因になることもあります。気になったら早めにかかりつけの医師に相談して、改善を目指しましょう。

慢性下肢浮腫の予防方法

慢性下肢浮腫の場合、ふくらはぎの筋肉を動かしたり、血液やリンパ液の流れを活性化させたりすることが大切です。ここからは、自宅で簡単にできるむくみの予防方法を3つ紹介します。

足の筋肉を使った運動をする

足の筋肉を維持するためには、階段の上り下りや足首を回してほぐす、あお向けで両足を上げるなどが有効です。軽いむくみであれば、15~20度を目安に枕などを足の下に入れておくだけで改善することもあります。

<かかと上げ運動>
1.膝が90度になるよう椅子に座る
2.こぶし1つ分足を開き、両足のかかとをしっかりと持ち上げて、ゆっくりと下ろす
3.5回~10回程度を1日3セットおこなう

ふくらはぎをマッサージする

血管が多いふくらはぎを、つま先から心臓に向かってマッサージします。強くもむのではなく、気持ちよい範囲でやさしくもみほぐすイメージでおこなうのがポイントです。自分で体が動かしにくい場合は、家族と一緒にリハビリ感覚でおこなってみましょう。

<むくみ予防マッサージ>
1.足首を回し、上下に動かす
2.つま先から足首、ふくらはぎをゆっくりとさする
3.アキレス腱をやさしくつまみ、10秒ほどもみほぐす

マッサージは、5分程度など取り組みやすい時間から始めて、徐々に時間を増やしていきましょう。1日のうちいつでも良いので実施し、足の筋肉を毎日動かし続けることが大切です。

塩分をとりすぎない

厚生労働省が提唱している以下の摂取量を目安に、塩分摂取を控えましょう。塩分・水分を体外に排出するカリウムやビタミンEを含むフルーツや大豆製品を積極的に食事に取り入れるのもおすすめです。

<摂取目安>
・塩、しょうゆ、味噌などに含まれる「ナトリウム(食塩相当量)」6g/日……食塩を小さじ1程度
・いも類や野菜、海藻類などに含まれる「カリウム」3,510mg以上/日……乾燥した切り干し大根を1食分(10g)程度
・アーモンドや魚介類に含まれる「ビタミンE」……男性6.5mg/日、女性6.0mg/日……素焼きアーモンド20粒程度

※ナトリウムやカリウム、ビタミンEは他の食材にも含まれるため、バランス良く取り入れるようにしましょう。

むくみが気になったら何科を受診?

まずは本人の病歴や生活習慣、服薬状況を知るかかりつけ医に相談しましょう。状況により、適切な医療機関へ紹介してくれる場合があります。

一般的に、むくみが気になる場合は内科を受診するのがおすすめです。どの科でもむくみの診察自体は可能ですが、むくみの原因を知るためには血液検査などが必要となります。形成外科やリハビリセンターでも相談はできますが、そういった検査に詳しくない場合があるため、循環器内科や一般内科を受診しましょう。

まとめ

高齢者のむくみは、放置しておくと重大な病気を見逃してしまう可能性があるほか、思わぬ病気を引き起こす原因になってしまうこともあります。また、高齢者本人がむくみなどの変化に気付かない場合も多いため、周りの家族が高齢者の体調を気にしてあげることがポイントになります。日々の健康観察をしっかりとおこない、少しでも気になる部分が出てくるようなら、早めにかかりつけ医へ相談しましょう。

※記事の内容は公開当時の情報であり、現在と異なる場合があります。記事の内容は個人の感想です。
※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。

取材・文/原のどか
お父さんラブな甘えん坊男児を育てる転勤族ライター。趣味の「神社仏閣でおみくじを引く」を楽しみに、行く先々で家族を連れまわして開拓中。「育児も人生もなんとかなる!」をモットーに、困ったことも楽しみながら情報を発信していきます!

★関連記事:中高年の「糖尿病」は「メタボ」とどう違う?昏睡を引き起こす高血糖を防ぐには【医師解説】

★関連記事:疲労感や目のかすみ、喉の渇きなどは要注意!中高年世代が気を付けたい糖尿病とは【医師解説】

★関連記事:夫が亡くなったらいくらもらえる?一銭ももらえない場合も…知っておきたい「遺族年金」の基本【専門家解説】

体験談募集中!

体験談募集中!

介護カレンダーでは「介護施設探しの体験談」を募集しています。

入居を検討している方へのアドバイスとして、介護施設探しでの貴重な体験を記事にしてみませんか。

健康・暮らしの最新記事