私の実家は車でも電車でも片道10時間はかかる距離。1人いる兄は県外に住んでおり、80代の父母は2人で暮らしていましたが、ある日、父が入院し寝たきり状態に。意思疎通も難しくなってしまい、母は家にひとりきりとなりました。そんな父母の様子が気になり、都合をつけてやっと帰省してみると、いろいろな手続きが山積みであることが発覚し……。遠距離に住む高齢の親の暮らしの手続きに奔走した体験談です。
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母の暮らしぶりは堅調。しかし、書類は山積み
まずは病院の父を見舞った後、実家へ帰省。母と2人で夕食を食べながら、日ごろの様子を聞きました。母は食事も欠かすことなく、畑仕事に庭仕事、数日ごとに父を見舞う生活を堅調に続けている様子でした。鉢花のことなどは「お父さんと植えたのが、やっと咲いたのよ」などとうれしそうに生き生きと話してくれました。
しかし、ふと部屋の片隅に置かれた封書の山が目に入り「郵便物、たくさんあるねぇ」と言うと、母の顔から突然すっと表情が消えました。暗い目つきになり、兄が数カ月に1度来たときにまとめて見てくれていると言います。「でもあの子も忙しくて、ざっと見るだけな感じ。前はそういうの全部、お父さんがやってくれてたんだけどねぇ」「書類を見ても、私にはよく理解できなくて。こういうのは本当に苦手」と母は憂うつそうでした。
私の見たところ、ほとんどは光熱費などの口座引き落としの知らせや保険の更新案内など。記入して返送が必要なものに関しては兄が対処しているとわかりました。ただ、金融機関や役所の窓口に行く必要のある手続きはほぼ残されているようなので、兄に確認すると、兄が来るのは週末や祝日なのでどうしても行けなかったとのこと。
マイナンバーカードを作ろうとしたら
「そう言えばマイナンバーカードは? 保険証から切り替わるから作らないと。通知書があれば手続きしやすいけれど、どこかにある?」と私が尋ねると、母は一層暗い顔になって、「何のこと? マイナンバーとか、そんなもん……。何年も前にお父さんが受け取っただろうけれど、私にはわからないわよ」と母は探す気力もないようでした。
翌日が平日だったので、「お母さん、一緒に銀行や役所へ行ってみようよ」と母を連れ出すことに。通帳や免許証、保険証など、「あれが必要。これも必要かも」と私が指示を出すと、母はのろのろと動きながら「はぁ」とため息を連発。心底ストレスを感じているようでした。今まで家の手続き関係すべてを父に任せてきた母にとって、諸手続きは鬼門だったようです。
銀行での用を済ませて役所の窓口に行ってみると、「お父様とお母様のマイナンバーカードの申請手続きですね。お母様の身元確認書類、運転免許証があれば、家族分のマイナンバー交付申請書はすぐに発行できますから、少々お待ちください」とのこと。幸い交付申請書類はすぐにでき、「ここにあるQRコード(スマートフォンなどで読み取ることができる二次元バーコード)を使って、娘さんがスマートフォンでお母さんやお父さんの写真を取ってネットで申し込むこともできます。簡単ですよ」と、その場でやり方も教えてもらえました。
申請はできた、でも受け取りは?
その後、すぐに病院へ。父は寝たきりなので、白い枕、白いシーツのベッドに寝ているところを上からスマートフォンのカメラを向け、なるべく正面に顔の位置を整えて撮影。母の写真は、自宅の白い壁をバックにして撮りました。役所で受け取った交付申請書に記載されたQRコードを使ってネットで2人分申請することができました。あとは1カ月ほどして、母のところに受け取り案内の書類が届けば、役所で受け取れるはず。
ですが、受け取りにはいろいろな確認書類を持って行かなければなりません。父母それぞれの本人確認書類、父が入院中で窓口に来られないことを証明する書類、そして母が父の代理で受け取るための確認書類。母は運転免許証と健康保険証があるとしても、父は免許を持っていないので、健康保険証と年金手帳、医療受給者証など3点、そして入院を証明する書類などが必要となりそうです。
これだけのものを母ひとりで準備し、さらに受け取りの際に暗証番号の設定までできるのか、かなり混乱しそうで不安です。他にサポートを頼める人はいないので、結局私か兄が何日か平日に仕事を休んで帰省し、母と一緒に役所に行くことになりそうです。
まとめ
母は、日々の生活面ではどうにか自立できています。ただ、QRコードの意味もわからず、新しい技術にはあまり対応できていないのが現状です。写真を撮って申請するなど、母ひとりでは到底できなかったと思います。マイナンバーカードの申請手続きは、他県に嫁いだ私でもすることができました。ただ、カードの受け取りは基本的に本人が窓口に出向くことになっていて、入院中の父の分を受け取るにはさらに別の確認書類が必要です。暗証番号の設定も求められ、高齢の親ではなかなか対応しづらいと思いました。遠距離に住んでいる私や兄が母に同行するため、またどこかで休暇を取って帰省しなくてはと思っています。
※記事の内容は公開当時の情報であり、現在と異なる場合があります。記事の内容は個人の感想です。
著者:森原あさみ/50代女性。平日はお勤め、週末は農業。夫、子ども、義父母と暮らしている。多忙でも趣味やスポーツの時間はなるべくキープ。育児、介護、町の行く末までいろいろ気になる。
イラスト/sawawa
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2024年9月)
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