
認知症の家族と暮らす中で、思いがけない行動に日々戸惑うことがあります。私が特に困り果てたのは、「家から電話を次々とかけてしまう」という行動でした。知人だけでなく、見覚えのない番号にもかけてしまい、そのたびに相手へ説明とお詫びをし続けたあのころの慌ただしさは、今でも忘れられません。
★関連記事:30代で直面した父の介護。仕事を続けるため母と協力し、最後を笑顔で見送った記録【体験談】
止められない電話の連発
認知症の家族は、家の固定電話を使っていろいろな人に電話をかけてしまうようになりました。家族としては電話を隠したくても、家電なのでそうもいかず、かといって電話線を抜けばこちらも使えなくなってしまいます。
知人やまったく知らない相手から「お電話がありまして……」と連絡が来ることも増え、そのたびに事情を説明して頭を下げる日々が続きました。なぜ電話をかけるのか、その理由はわからず、本人に問いただしても混乱させてしまうだけ。どうしたらいいのかわからないまま時間だけが過ぎていきました。
家族が選んだ苦肉の策
悩んだ末、私たち家族が選んだ対策は、通信がつながっていない中古の電話を用意し、認知症の家族の前に置いておくことでした。
本来の固定電話は、ほかの家族にしかわからない場所に移動。ダミーの電話は「壊れていて通じない」という体でそのまま置いています。
いつまで気づかれずに済むのか不安はありますが、それでも電話代が跳ね上がる心配がなくなり、一時的とはいえ生活が落ち着いたのはたしかでした。
思い通りにいかないからこそ
認知症の家族と向き合う中で痛感したのは、「行動の意図がわからないことが多い」という現実でした。電話をかけ続ける理由もわからず、説得して落ち着いてもらうことも難しい。だからこそ、私たちはできる範囲で環境を整えることで、問題行動自体をそっと減らしていくしかありませんでした。
完全な解決とは言えなくても、今の私たちにはこの方法がもっとも現実的だったのだと思います。
まとめ
私たちが選んだ方法は、説得ではなく「環境を工夫する」ことでした。ダミーの電話を使うという苦肉の策ではありますが、今の生活を少しでも穏やかにするために手探りで選んだ対応でした。認知症家族との暮らしは試行錯誤の連続ですが、できる範囲の工夫で乗り切っていくしかないのだと感じています。
※記事の内容は公開当時の情報であり、現在と異なる場合があります。記事の内容は個人の感想です。
著者:佐々木太一/30代男性・会社員
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2025年11月)
※一部、AI生成画像を使用しています
★関連記事:「使えている!」認知症が進み、電化製品にも至極弱い母が見せた進化とは #母の認知症介護日記 268