初めまして! 千葉老人ホーム・介護施設紹介所リーブス所長の石田と申します。老人ホームの紹介センターという仕事柄、老人ホーム探しでお困りになられているご本人やご家族、もしくはケアマネジャーやソーシャルワーカーといった専門職の方々から日々多くのご相談をお受けし、老人ホーム探しのお手伝いをさせていただいております。
今回から、私の経験を基に「老人ホームの選び方」についてお話しさせていただこうと思います。ご家族の老人ホーム選びをされているかたのお力になれれば幸いです。
“良い”老人ホームはない!? 評判の良いホームでいいの !?
当センターに寄せられる相談内容はさまざまですが、よく「良い老人ホームを教えてくれますか?」、「評判の良い老人ホームを紹介してくれますか?」と、ご相談者の方から質問されます。
その度に、「またか……」と心のなかでつぶやいています。もちろん、ご相談者のかたが何か悪いことをおっしゃっているわけではありませんが、私はその質問にこう答えています。
『良い老人ホームはありません!』
『評判の良い老人ホームならいいんですか?』
仕事放棄でもしていると思われてしまってもおかしくない答えですが、なぜこのような答えになるかというと、評判が良いからといって、全ての人に良いという老人ホームは存在しないからです。
老人ホームに求める条件は100人100様
私は老人ホームを探しているかたから毎年数百件のご相談をお受けしておりますが、1件たりとも同じ相談内容はありません。老人ホームに入居されるかたが希望されるお身体の介護や生活支援、認知症のケア、必要な医療行為(※)、また趣味趣向、希望する立地、予算など、老人ホームに求める希望条件は100人いれば100人違います。
またどんなに評判の良いホームでも、実際にホームに入居されたかたから悪い評判を聞くこともありますし、逆にどんなに悪い評判のホームでも良い評判を聞くこともあります。
豪華な建物、充実したサービス、高評価のホームに入居したけれど……
ここで一つ事例を紹介いたします。
3人のお子さんたちが数100万円ずつお金を出し合い、入居金を援助し、ドラマの撮影にも使われたことがあるような高級ホームに入所された80代の男性がいらっしゃいました。
男手ひとつで育ててくれたお父さまのためにと、お子さんたちが選んだのは、市内でも一番といっていいくらい高級でサービスが充実しており、インターネットの口コミでも評判の良いホームでした。
そのホームは、居住空間がまるでホテルのように豪華で、露天風呂やアスレチックジム等設備も充実しています。元大学教授や医師、会社の役員等、それ相応の役職についていらっしゃるかたが多く入居されていました。
しかし、入居後すぐに「父が明確な理由もなく他のホームに移りたいと言って困っている」とお子さまから相談がありました。
お子さまたちに、お父さまの若い頃のお話をお聞きしたところ、地方で中学卒業後からずっと遠洋漁業をしていて、数か月、船で寝泊まりするような生活をしていたとのこと。
この話を聞いた私は、長年漁師をされてきたお父さまにとっては、人にしても建物にしても、入居されているホームは、堅苦しく感じて息が詰まられているのでは? と推測しました。
それを踏まえて、建物も設備も決して豪華とはいえないし、サービス内容も数段劣っている、元社員寮を改修した建物に最低限の設備のホームに移っていただくようお子さんたちにご提案しました。
ホームを移ってから1か月が経ったころ、お子さんたちにお父さまのご様子をお聞きすると、「他のホームに移りたい」と言われることはなくなり、他の入居者のなかに話し相手もでき、落ち着いた毎日を過ごされているとのことでした。
「良いか悪いか」「評判の良し悪し」ではなく、「合うか合わないか」が重要
ちょっと極端な事例だったかもしれませんが、このように老人ホームを選ぶ際は、『良い』『悪い』で判断するのではなく、『合う』『合わない』で判断することが大切です。また、第三者の『評判の良し悪し』に惑わされず、『自分で判断』することが重要なのです。
自分、もしくは入所されるご家族に合うホームか、合わないホームかを判断するためには、まず老人ホームに求める希望条件をまとめなくてはいけません。また、ある程度老人ホームや介護保険に関する知識も必要になります。また、老人ホームを探す際は急を要するケースも非常に多いので効率的な探し方も知っておくことをお勧めします。
次回以降は老人ホームを探す際に欠かせない知識、実践的なテクニック等を解説していきます。
※医療行為:医師法第17条により医師、看護師等の免許を有さない者が業として行うことを禁止されている行為。
記事提供:石田治男
千葉老人ホーム・介護施設紹介所リーブス 所長
入居相談員 / 老人ホームアドバイザー