入居まで1年!? 『特別養護老人ホーム(特養)』についておさらいしてみた〜【介護1年生の編集者が調べてみたVol9〜】

入居まで1年!? 『特別養護老人ホーム(特養)』についておさらいしてみた〜【介護1年生の編集者が調べてみたVol9〜】
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入居まで1年!? 「特別養護老人ホーム(特養)」についておさらいしてみた

介護についてまだまだ知らないことがいっぱいの介護カレンダー編集部員の私。もっともっと「介護」や「高齢者施設」について勉強して、わかりやすい情報をお届けしようと、ただいま、勉強中です。

介護カレンダーで特に人気があるのは「特別養護老人ホーム(特養)」に関わる記事です。その理由は、特養は公共の施設で比較的費用が安いからだといいます。実際に、「介護施設探しの体験談」にも、「入居するまで1年かかった」「一旦別の施設に入居して空くのを待った」などの声が寄せられています。

今回は、もう一度「特別養護老人ホーム(特養)」についておさらいしてみようと思います。

Q.「特別養護老人ホーム(特養)」ってどんな施設だっけ?

「特別養護老人ホーム(特養)」は、社会福祉法人や地方自治体などが運営する公的な施設で、「介護老人福祉施設」とも呼ばれています。

入居者対象となるのは、原則として要介護3以上の認定を受け、寝たきりだったり認知症だったりにより、常時介護を必要とする在宅での生活が困難な高齢者です。

特養では、介護保険サービスに基づき、入浴、排泄、食事など日常生活のサポートや健康管理を行っています。
※ただし、要介護1または2の方でも、やむを得ない事情により特別養護老人ホーム以外での生活が著しく困難であると認められる場合に限り特例的に入所できることがあります。

また、「特別養護老人ホーム(特養)」には、「ユニット型個室的多床室」「ユニット型個室」「多床室」「従来型個室」の4つのタイプがあります。


●ユニット型個室 

10人程度をひとつのユニット(生活単位)として構成。リビングスペース(共有空間)を取り巻いて個室が10室程度並ぶイメージです。入所者は自由にリビングスペースを利用できるほか、キッチンや食堂、浴室などの共有スペースも設置されています。

●ユニット型準個室

ユニット型個室とイメージは同じですが、個室と個室の間は、壁ではなく移動ができない間仕切りで仕切られています。

●従来型個室

ユニット(生活単位)を構成しない個室。単独の個室が並び、食堂や浴室、リビングスペースなどを入所者が共同で利用します。

●多床室

いわゆる相部屋(定員は4人以下)で、食堂や浴室、リビングスペースなどは入所者が共同で利用します。

特別養護老人ホーム(特養)とは

なお、令和元年10月1日現在の「介護サービス施設・事業所調査の概況」によると、その施設数は8,234施設、定員は56万9,410人となっています。

Q.「特別養護老人ホーム(特養)」に入所するには?

「特別養護老人ホーム(特養)」の入所申込窓口は、管轄の市区町村の高齢者相談センター(地域包括センター)または該当施設です。その後、市区町村が定めた入所基準を基に、入所必要性が高い申込者から優先的に入所することになります。

申込書および調査票を提出すると、書類審査に基ずく実態調査が行われ、それぞれの市区町村が定めた入居基準に従って点数化します。その後、入所検討委員会が開かれ、入所順位を決定します。

●入所基準例
要介護度、年齢、介護者の有無、介護期間、認知症症状による介護の困難性など

基本的に、居住地域以外の「特別養護老人ホーム(特養)」に申し込むことはできますが、居住者が優先されることが多いようです。また、複数の施設に申し込むことも可能ですが、入所できるのは最初に入所連絡があった施設になるようです。

「特養にすぐ入れないのはなぜ?」【介護1年生の編集者が調べてみたVol 7~】

Q.「特別養護老人ホーム(特養)」は本当に安いの?

「特別養護老人ホーム(特養)」では、介護付き有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅で必要な「入居金」などの初期費用はかかりません

「特別養護老人ホーム(特養)」の月額料金は、「部屋タイプ(個室か多床室か)」「要介護度」「利用者負担割合」によって決まります。かかる費用は、施設サービス費の1〜3割(介護保険割合による)と、「食費」、「居住費(部屋代に該当)」、理美容などの日常生活費(実費)です。また、利用者の状態に応じたサービス提供や施設の体制に対して加算・減算されることもあります。

また利用者の負担額が過重にならないように、介護保険施設(特養、老健、介護医療院)の入所者で所得や資産が一定以下の場合、居住の市区町村に申請することで、所得段階に応じて負担限度額を超えた居住費と食費の負担額分が介護保険から支給されます。


また利用者負担額の合計額が所得に応じて区分された上限額を超えた場合、超過分が介護保険から支給される高額介護サービス費があります。

高額介護サービス費では、これまで1カ月に支払った利用者負担額の合計が44,400円を超えると、その分は払い戻されていました。しかし、令和3年8月からは、一定年収以上の高所得者世帯に対する負担限度額が見直されたため、所得によっては負担の上限額が3倍以上となってしまいました。

⚫︎<参考>新設された負担区分と負担上限額
・課税所得690万円(年収約1,160万円以上)/ 140,100円(世帯)
・課税所得380万円(年収約770万円)〜690万円(年収1,160万円)未満 / 93,000円(世帯)

自己負担額と負担限度額を考えると、一概に「特別養護老人ホーム(特養)」は安いとはいえなくなってきているかもしれません。

一方で、「特別養護老人ホーム(特養)」の場合、所得によっては「食費」「居住費」の減額措置もあります。

1)「特別養護老人ホーム(特養)」は、「介護老人福祉施設」とも呼ばれている
2)入居者対象となるのは要介護3以上で常時介護を必要とする在宅での生活が困難な高齢者
3)「ユニット型個室的多床室」「ユニット型個室」「多床室」「従来型個室」の4つのタイプがある
4)市区町村が定めた基準を基に入所必要性が高い申込者から入所する
5)「特別養護老人ホーム(特養)」は初期費用は不要
6)「利用者負担割合」は世帯収入によって1~3割を自己負担する
7)令和3年8月から一定年収以上の高所得者世帯に対する負担限度額が見直された

まとめ

一定年収以上のいわゆる高所得者は、自己負担割合が3割になったり、高額介護サービス費の負担限度額が引き上げられたりしていることで、月額の支払金額は増えているものの、やはり入所にあたって初期費用がかからないということは大きなメリット、魅力です。そういう意味で、「特別養護老人ホーム(特養)」の人気が衰えないのは当然のことかもしれません。

とはいえ、地域によっては、定員に余裕のある「特別養護老人ホーム(特養)」や、新規オープン予定の施設もあります。多くの方は、必要に迫られて入所することが多く、長い期間待っていられないという現状もあるようです。

その場合は、いったん介護老人保健施設や有料老人ホームに入所して、希望の「特別養護老人ホーム(特養)」に空きが出るのを待つという方法もあります。また郊外の定員に余裕がある特養を選んでもいいかもしれません。もし、近い将来にご家族が高齢者向け介護施設に入る可能性があるという方は、「特別養護老人ホーム(特養)」を含め、早めに情報を集めておくことをお勧めします。

私の勉強はまだまだ続きます…。

参考:
令和3年8月利用分から高額介護サービス費の負担限度額が見直されます(厚生労働省)
特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)(東京都港区)

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