『介護医療院』って? 他の高齢者向け施設と何が違うの?
介護についてまだまだ知らないことがいっぱい。日々勉強中の介護カレンダー編集部員の私。
今回気になったのは、「介護」と「医療」両方の言葉が入っている「介護医療院」という高齢者施設です。
「医療」という言葉が入っているからには、病院のような施設なのでしょうか。皆さんはご存じですか?
介護医療院とは(介護カレンダー)
私も実は、この施設の名前をあまり聞いたことがなかったのですが、2018年に誕生したということでまだ数が少なく、それほど認知度も高くないようです。
そこで今回は、「介護医療院」について勉強してみることにしました。
Q.「介護治療院」の特徴は?
「介護医療院」は、長期的な医療と介護の両方が必要な高齢者を対象に、「日常的な医学管理」や「看取りやターミナルケア(終末期医療)」などの医療機能と、「生活施設」としての機能を兼ねた施設です。なお、「看取りやターミナルケア」というのは、無理な延命治療などを行わず、余命を穏やかに過ごせるよう支え、自然に亡くなるまでの過程を見守ることを指します。
「介護医療院」の最大の特徴は、医療や介護の提供に加えて、「生活の場」を提供しているという点。長期療養することになっても、自分らしく暮らしていける「生活の場」でもあるという点が大きなメリットです。
そのため、地域社会とも積極的に関わっていて、病院というよりも日常生活を過ごす施設といったイメージに近いようです。
なお、「介護医療院」には、入居者1名あたり8㎡以上の居室と40㎡以上の機能訓練室という設備基準に加えて、食堂や診察室、談話室、寝たきりの人でも入れる浴室、廊下、などが設置されています。
こちらの施設は、原則65歳以上で要介護認定を受けた「要介護1~5」の人が利用できますが、多くのケースでは、かかりつけ医が作成する診療状況記載の「診療情報提供書」や健康診断書が必要になります。
「診療情報の提供等に関する指針」(厚生労働省)
Q.「介護医療院」に種類があるの?
「介護医療院」は、主に重篤な身体疾患を有する者及び身体合併症を有する認知症高齢者等が入所する「Ⅰ型」と、Ⅰ型と比べて容体は比較的安定した人が入居する「Ⅱ型」に分けられます。
このうち、Ⅰ型は「介護療養病床」に相当するサービスを提供する終身制の施設(この後に説明)で、24時間体制の看取りケアやターミナルケアにも対応しています。
一方、「Ⅱ型」は「介護老人保険施設(老健)」に相当するサービスを提供し、看取りケアやターミナルケアはオンコール体制での対応となり、緊急時に医師や看護師が駆けつけます。
なおサービス内容は「介護老人保険施設(老健)」に相当しますが、「Ⅰ型」と同様に終身制の施設となるので、老健のように3カ月単位での対処判定は行われません。
さらに、医療の必要性は多様なものの、「Ⅱ型」よりも自立度が高く、容体が比較的安定した人を対象とした「医療外付け型」の施設もあります。
「医療外付け型」は、居住スペースと医療機関を併設され、居住スペース部分は医療法、医療機関部分は、介護保険法および老人福祉法が適用されます。
また、生活空間を重視していることから、居住スペースは13㎡と、Ⅰ型とⅡ型(8㎡)よりも広くなっています。
Q.前身の「介護療養型医療施設」とは?
「介護医療院」が誕生する前に、その役割を担っていたのが「介護療養型医療施設」と呼ばれる施設です。
しかし、2006年にこの施設の廃止が決定したため、代わりに「介護医療院」が2018年に新設されることになりました。なお、2024年3月までは移行期間となっているので、それまでは両方の施設が混在することになります。
「介護療養型医療施設」は介護保険施設のひとつで、そのほとんどが医療法人によって運営されており、「介護療養病床」とも呼ばれています。
急性疾患から回復期にある寝たきりの患者など、介護度が比較的高い要介護者のための施設なので、手厚い医療ケアと介護ケア、リハビリテーションを提供しています。
しかし一方で、症状が改善すると退所を求められることもあります。
ここが終身型の「介護医療院」と大きく違うところですね。
「介護療養型医療施設」の廃止が決まった理由は、医療の必要性が高い患者と低い患者が混在しているため、医療保険の対象となる「療養型病院(医療療養病床)」との違いがなくなっていたからだといいます。
また、医療費や介護費が高額になってしまうことや、看護スタッフの人員不足なども一因とされてます。
そこで、医療保険と介護保険の役割を分担させるべく、療養病床の再編成が検討され、「介護医療院」が新設されたというわけです。
Q.「介護医療院」での介護サービスはどうなってるの?
「介護医療院」では、医療的サービスと介護サービス、両方が提供されます。
医療的サービスとしてあげられるのは、喀痰(かくたん)吸引や点滴、在宅酸素、褥瘡(じょくそう)のケア、看取りやターミナルケアなどになります。
一方、介護サービスは食事や排泄、入浴の介助、レクリエーション、機能訓練、その他日常生活上の世話などになります。
医療的ケアに対応するため、施設には医療機関に近い職員数が配置され、医師や看護師が常駐しています。
医師は入所者の人数にもよりますが、「I型」には48人あたり必ず1人以上配置され、診察や薬の処方、健康管理などを行います。看護師は入所者6人につき1人配置され、医療的ケアだけでなく血圧や体温測定などの健康管理、食事量の確認などを行います。
「Ⅱ型」には、医師は100人あたり1人、看護師およびは3人につき1人を最低基準としています。
また介護サービスを行う介護職員も、それぞれ6人に1人、3人に1人と配置されているほか、リハビリ職員や薬剤師、栄養士やケアマネジャーも配置されているので、入所者は安心した生活を送れるのではないでしょうか。
Q. 「介護医療院」にかかる費用は?
「介護医療院」では、入居一時金や敷金などの初期費用は発生しません。
また介護保険が適用されますから、月額利用料の利用者負担額は1割で、一定以上の所得があれば2または3割負担となります。
その内訳としてあげられるのは、施設サービス費や居住費、食費、日常生活費などです。施設サービス費は、要介護度や自己負担割合、居室のタイプ、人員配置などによって変わり、医療体制が手厚くなるほど高額になるのは他の施設と同じです。
参照:入所利用料金表〈介護医療院〉 (厚生労働省)
東京都にある「介護医療院」の費用は、「介護医療院一覧」(東京都福祉保健局)の該当施設で確認することができます。
2)「介護医療院」の特徴は、医療や介護の提供に加えて、「生活の場」を提供していること
3)「介護医療院」の入居対象者は、原則65歳以上で要介護認定を受けた「要介護1~5」の人
4)「介護医療院」には、主に重篤な身体疾患を有する者及び身体合併症を有する認知症高齢者等が入所する「Ⅰ型」と、比較的安定した容体の人が入居する「Ⅱ型」がある
5)「介護医療院」の前身は「介護療養型医療施設」。2024年3月まで移行期間中で両方が存在している
6)「介護医療院」では医療的サービスと介護サービス、両方が提供され、それぞれ介護保険法および老人福祉法が適用される
7)「介護医療院」は入居一時金や敷金などの初期費用は発生しない。月額利用料は要介護度に加えて利用者負担割合に応じる。
まとめ
「介護医療院」は、医療機関に近い施設なので生活サービスだけではなく、医療的ケアもしてもらえるため安心感が高く、また長期療養にも対応、亡くなるまでいられるというのは大きなメリットだと感じました。
一方、「介護医療院」の居室は基本2~4人部屋という施設が多く、プライバシーの問題はありそうです。また2024年3月までは「介護療養型医療施設」からの移行期間中ということもあり、まだそれほど施設数が多くありません。
ということは、実際に入居するには苦労するかもしれませんね。
私の勉強はまだまだ続きます…….。