
嫁いだ片田舎で義父母との同居生活。どうにか折り合いをつけながら、四半世紀を超えました。子ども3人が社会人となり子育てはひと段落したものの、今度は遠方の実家で老老介護状態となった自分の両親が気に掛かるように。行きたいけれど、「嫁」の私は高齢の義父母がいる家をなかなか空けづらい。それでも娘として、実家の両親に今のうちにできることをしてあげたいと思って行動した体験談です。
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実家に暮らす80歳代の両親が老老介護に

25年前、私は結婚と同時に片田舎にある夫の実家に住み始めました。慣れないことだらけでしたが、3人の子どもを授かり育て、気の強い義母、寡黙な義父との関係もそれなりに築きつつ暮らしてきました。
それから25年。今や子どもたちは成人し、子育てもひと段落。そして急浮上してきたのが、私の実家の老老介護問題でした。
実家では80代の父と母の2人が穏やかに暮らしていたのですが、父ががんを患い入院することに。手術、治療を経て自宅に戻りはしたものの、今度は肺の持病が判明した上に動脈硬化(どうみゃくこうか)や糖尿病の傾向も見られ、日常生活はどうにかなるものの、さまざまな注意が必要な状態となりました。
私の実家は遠く、車でも電車でも片道10時間は要する距離。頻繁に顔を見に訪れることはできません。1人いる兄も同じく遠方で家庭を持ち働いており、両親の日常の世話をすることは困難です。結局、父の介護は比較的元気な母が一手に引き受けることに。住んでいる地区の当番なども、母ができる限り対応するようになりました。
ですが、母も高齢ですから徐々にひとりでの対応が難しくなったようです。父を定期診療に連れて行っても医師の説明が頭に入らず混乱するといった精神的に不安定な状態が見られ、とうとう病院から直接兄の携帯電話に連絡が来ました。「老老介護には限界があります」と。
両親のために娘の私ができることは
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結局、実家の両親は、訪問介護を受ける、ヘルパーさんに来てもらうなど、「介護保険制度を取り入れることになりました。私と兄は連絡を取り合い、少しでも今のうちに「娘」「息子」として両親のためにできることをしよう、お互いにこれからは実家へ行く機会をできるだけ増やそうと話しました。
ただ問題は、義父母と同居している私は、なかなか「実家に行ってきます」とは言いづらい雰囲気だったことです。
実家への帰省については、子どもが小さいうちは正月やお盆はまず義実家で過ごすことを優先し、そのあと自分の実家に行くようにしていました。夫と子どもと私の5人、最低2泊はするので一大行事でしたから、義母からは「お里行きに舞い上がってるねぇ。こっちは留守中に親戚が来たり、いろいろあるのに」と度々嫌みを言われることがありました。
「『里に帰る』とは言わないもんよ。嫁はこの家の者だから『里に下がる』と言うんでぇ。私なんか『実家に下がらせてください』、と三つ指突いて頭を下げて、日帰りだったよ」と言われたときは、「……昔は、そうだったんですねぇ」と答えるのが精いっぱいでした。実家へのお土産や小遣いなどを持たせてはもらいましたが、あまり気持ち良く見送ってもらえていないと感じていました。
そういったこともあって、子どもたちが大きくなってからは、あまり実家に行かなくなっていました。
私が実家へ行きやすくなるために取った対策3つ
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今回、どうすれば実家に行きやすくなるのか。いろいろな感情が渦巻く中、考えた末に私が取った方法は、主に3つでした。
1. 実家の老老介護状態について、ちょくちょく義父母に話してみる
「お義父さんお義母さんは畑仕事もされるし、まだまだお元気ですけれど、実家の父はあれこれ持病があり、母も精神安定剤を飲んでます。ヘルパーさんは来るけれど、ほんとヨボヨボ、世間で言うもはや『老老介護』の状態です」と。事実を世間の事情と絡めて話すと高齢の義両親も理解しやすいらしく、「それそれ、近所の○○さんとこも高齢者2人きりの暮らしで大変らしいわぁ」とうなずいていて、共感を得やすいようでした。
2. 実家へは私ひとりで行く
夫は仕事があるということで、連れて行きません。義実家にとっては夫がいるという絶大の安心感があるようです。実家でも、むしろ私1人なので両親とのコミュニケーションに集中できました。
3. 夫には義父母としっかり付き合ってもらう
夫には日ごろから積極的に義父母と過ごしてもらうようにしました。買い物に連れて行くのも、ごひいきの歌手のコンサートに連れて行くのも夫が担当。義父母がしている畑仕事にも積極的に関わってもらうようにしました。私が留守の間は義母に頼るだけでなく、夫も家族分のお弁当を買うなど、それまで気に掛けていなかった家族の食事のことも考えてくれるようになりました。夫が積極的にコミュニケーションを取ってくることに義両親はとても機嫌を良くしているようでした。
これらの対策を地道に試みた成果なのか、義母から最近、「あっちのご両親は大変みたいやし、ちょくちょく顔出してあげたらどう? 遠いからあんたも大変やろうけれど 」との言葉をいただきました。
まとめ
実家両親の介護のために「嫁」の私が義実家を留守にするには、夫の協力が不可欠でした。今回のことをきっかけに、それまで義両親に対してあまりやさしくなかった夫が義両親との関わりを増やしたことで義両親は喜び、私も家を留守にしやすくなりました。夫と私、こうして離れる時間は増えましたが、お互いに協力し合っている感覚は逆に増した気がします。
※記事の内容は公開当時の情報であり、現在と異なる場合があります。記事の内容は個人の感想です。
著者:森原あさみ/50代女性。平日はお勤め、週末は農業。夫、子ども、義父母と暮らしている。多忙でも趣味やスポーツの時間はなるべくキープ。育児、介護、町の行く末までいろいろ気になる。
イラスト/山口がたこ
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています
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