
友人A子は結婚して30年。いつも明るくて、皆から「良いお嫁さん」と言われてきたそうです。ところが、同居する義両親の介護が始まったことで生活が一変。思ってもみなかったつらさに襲われるようになった彼女が、一大決心して起こした行動とは……。義両親の介護問題に直面した友人A子の体験談です。
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子育てが一段落した途端、介護問題がぼっ発
A子は結婚以来、夫の家で義両親と同居していました。義父は少々気難しい人でしたが義母が気づかいのできる人だったので、義両親との関係であまり困ったことはなかったと言います。A子の夫は長期出張が多く留守がちな日々。それでもA子は仕事もしながら、2人の子どもを育てました。田舎なので何かと多い地域の行事にもよく顔を出し、人当たりの良いA子。「家族仲も良くて、お宅のお嫁さんはいいねえ」と、地域でも愛される存在でした。
そして数年前、子どもたちは成人し就職、家を出て行きました。「そろそろ少しだけ、自分のための時間を作ってもいいのかなと思って」と、A子は仕事をフルタイムから短時間のパートに切り換え、以前から気になっていた薬膳料理の教室に通い始めました。
その矢先、突然義父が倒れて緊急入院。一命は取り留めたものの、数カ月後、退院した義父は家で車椅子生活となりました。義父の介護を主に担ったのは義母でした。義父の食事作りに加え、移動の補助、トイレ介助など。義母を助けようと、A子もできる限りサポートしました。ところがある日、今度は義父の介護に追われる義母が家の中で転倒。背骨を折り、即入院となってしまいました。
良い嫁だからと当てにされ…
義父の介護の主役はA子となりました。夫からは「A子がパートになっててよかったー。都合つけやすいよな? 俺も休日は介護、頑張るわ」と言われ、隣町に住み教員をしている夫の姉からも「お母さんの病院には私が顔を出すし、休日にはそっちにも必ずヘルプに行くから、平日はお願いね!」と頼られ、近所の人からも「このたびは大変だったねえ。でも、お宅はA子ちゃんがいるし、安心ね」と声を掛けられたそうです。
A子自身もなんとか頑張れると思っていました。明るくやさしく、このまま家族を支えていく……。
しかし、体が不自由な義父は、義母がいないせいかいら立つことも増え、「こんな体になって、人生ろくなことがない」「この苦しみはお前らにはわからん」「何一つできん、こんな厄介者はいないほうがいいと思ってるんじゃろう?」と繰り返すようになりました。
介護しながら、1日中発せられる義父のネガティブな発言を浴び、さすがにきついと感じたA子が夫に相談したところ、夫は義父にデイサービスの利用を提案。けれども、「あんなところは好かん、絶対行かん! わしは家におる!」と大激怒。ますます機嫌が悪くなってしまいました。夫からは「ごめんな、A子。でも、親父は俺や姉貴よりお前のほうに甘えてるみたいだし、家の居心地が相当いいんだと思うよ」と言われたそうです。
限界を感じて家出を決行
相談するたびに結局は頼られて、頑張り続けたA子。だんだん自分でも理解しがたい状況になっていったそうです。「自分では疲れてなんかいないと思っていたのに」気が付くと涙が止まらなくなっていたり、何もかも投げ出したくなったり、不安定な状態が続くようになりました。
「もうホント無理みたい。このままの状態で期待に応え続けることはできない」
つらさを自覚したA子は、家を一旦離れる決心をしました。つまり、家出です。夫を含め、義姉や誰かに相談すると「A子ちゃんだからできるのよ! いつもとても感謝してるんよ!」と、そんなふうに引き止められて自分は断れない、状態は何も変わらず続いてしまう……。A子は意を決し、「とにかくしばらく家を離れます。後はよろしくお願いします」と家族にメッセージを送り、県外にいる娘のところに身を寄せました。
「良い嫁」をずっと続けてきたA子の家出。もちろん、家は大混乱だったそうです。それをきっかけに、A子の夫は長期出張をできるだけ回避するようになり、介護休暇も取って自宅で義父と過ごす時間を増やしたのだとか。また、そんな夫の必死の説得で、義父はデイサービスへ週3回通うことに納得したとのこと。教員の義姉も職場の理解を得て仕事を調整し、平日も義父に寄り添える時間を増やしたそうです。
まとめ
その後、A子の義父は老人ホームへ入居。実の息子や娘に介護してもらい、話し合えたことで義父の心が動いたようです。老人ホームでは職員や他の入居者と仲良くなり、意外と順調な生活を送っているとか。また、退院した義母を義父のホームへ連れて行くと「私はお父さんと一緒にいたい。いずれはここがいいわ。そのうちよろしくね」と言っているそうです。A子は3カ月で家出を終え、家に戻りました。予想外の家出は、介護に対して家族それぞれが本気で取り組むきっかけになったようです。「良い嫁も悪くはないけれど、限界はあるってこと。思い切って家出して、今はなんか落ち着いた」と話すA子の表情には元の明るさが戻っていました。
※記事の内容は公開当時の情報であり、現在と異なる場合があります。記事の内容は個人の感想です。
著者:森原あさみ/50代女性。平日はお勤め、週末は農業。夫、子ども、義父母と暮らしている。多忙でも趣味やスポーツの時間はなるべくキープ。育児、介護、町の行く末までいろいろ気になる。
イラスト/おんたま
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2025年2月)
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