「女性の下着はよくわからなくて…」奥さんが寝たきりの高齢夫婦。2人の生活は【体験談】

「女性の下着はよくわからなくて…」奥さんが寝たきりの高齢夫婦。2人の生活は【体験談】
「女性の下着はよくわからなくて…」奥さんが寝たきりの高齢夫婦。2人の生活は【体験談】

数年前、知り合いから頼まれたのをきっかけに、高齢者向けに見守りも兼ねた弁当配達パートを始めました。弁当配達では実にさまざまな高齢者に出会います。今回は、高齢夫婦で2人暮らしのKさんのお話です。実は、奥さまの姿をお見かけしたことがありません。弁当店の店長に聞いたところ、奥さまはほぼ寝たきりとのこと。弁当受け取りはいつも旦那さまでした。仕事を通じて「老老介護の高齢者」の暮らしぶりを垣間見た、弁当配達員の体験談です。

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旦那さまの元気がよりどころ

私が配達を始めた当初から担当しているKさん宅は、高齢のご夫婦2人暮らしです。周囲を田んぼに囲まれた長閑な住宅地の一角。昭和の時代に開発された住宅地のようで、最近は建て替えも進んでいる敷地もあるものの、多くは築50年近い家がそのまま並んでいます。Kさんのお宅も、そんな昭和時代に建てられた家の1つでした。

奥さまは寝たきりに近く、認知症の兆しも見られるとのことで、いつも旦那さまが2人分のお弁当を受け取ってくれました。
いつも「ありがとうね」と、丁寧なごあいさつ。玄関先も家の周りもきれいに整えられていて、ご夫婦の生活が大切に守られていることが伝わってきます。穏やかな暮らしぶりだと感じました。

旦那さまは少しだけ畑仕事もされているらしく、時折、「ちょっと裏に来てみて」と、できた野菜を見せて下さったり、「持って帰っていいよ」ときれいに整えて新聞紙にくるまれたネギを手渡されたこともありました。

弁当を渡す短い時間でも、配達先の方々の暮らしや、介護の重みが垣間見えることがあります。Kさん宅は、旦那さまが元気でいらっしゃることによって成り立っているようでした。

女性の肌着は難しい…

ある日、旦那さまから少し戸惑った様子で話しかけられました。「実は、妻がデイサービスに通うときの肌着を新しくしたいのだけどね。首回りが伸びきっているので、入浴後に着る肌着は新しいものをと思ってね。でも、女性の下着はよくわからなくて……」。すでに何軒かお店を見て回ったそうですが、どう選んだらいいのかわからず、思ったよりも高かったので買わなかったとのこと。女性の下着売り場で真剣に迷っていらっしゃる旦那さまの様子を想像すると、切ない気持ちになりました。

私は配達終了後、すぐに地域のスーパーやディスカウントストアに出向き、高齢者女性用の下着について調べました。手ごろな価格で購入できる店舗を見つけて、次の配送の折、旦那さまに情報をお伝えしました。旦那さまはほっとした表情で、「本当に助かりました」と深く頭を下げてくださいました。私にとってはちょっとした調べ物でしたが、介護をする当人にとっては、そんなささいなことが負担になることもあるのだと知りました。

弁当配達員の仕事は本来「届けて終わり」ですが、ときにはこうして、介護の現場に少し足を踏み入れることもあります。店長が「高齢者生活支援」の一環として、少々のお手伝いはするようにと認めてくれているので、安心してのぞむことができます。業務だけど、支援でもある、こういった仕事の重要性を感じました。

旦那さまが介護を続ける秘訣

Kさんご夫婦は、見た目にはとても穏やかに暮らしておられますが、その裏には旦那さまの日々の努力と葛藤があることが、少しずつ伝わってきました。天気の良い日には軒下に干したふっくらとした布団を取り入れる姿を見かけたことがあります。また、奥さまの食事内容やデイサービス・通院のスケジュールをいつも念入りに確認なさっています。まさに旦那さまは介護の最前線。ご自身は奥さまよりも高齢なのに、本当に頑張っていらっしゃると、頭が下がります。

でもある日ぽそりと、「畑をいじってると気持ちが一番落ち着くんですよ」と微笑まれました。その姿に、介護を続けるためには、自分自身を保つ工夫があるのだとわかりました。

奥さまの下着探しをお手伝いしたことをきっかけに、弁当配達の折、「今日の妻は少し調子が良さそうです」「昨日今日、熱があるようでした」と、奥さまの様子をそっと教えてくださるようになりました。私は一配達員なので、ただ少しお話をお聞きするだけです。Kさんご夫婦には遠方に娘さんがいらっしゃるそうですが、「いろいろ細かいことまでは頼みづらくてね」とのこと。私は遠くに住む娘さんの代わりにはなりませんが、Kさんの日々の暮らしに関わる者として、少しの支えにはなれているかなと思います。

まとめ

介護はひとりでは抱えきれない問題も多くあります。私が届けるお弁当も、高齢者の暮らしの一部となっていると思うと、なかなか身が引き締まる思いです。配達の中で、少しでも気付き、つながりを作ることが、少しは支えになるのではないかと感じています。私自身も、遠方の実家に高齢の母が1人で暮らしていて、介護に関わりたくても遠く離れており、なかなか思うように手を貸せないもどかしさがあります。母の暮らしのそばに、少しずつでも母を見守ってくださる方がいてくださればと願います。ケアマネジャーさんや、ヘルパーさん、ご近所の方々、そして荷物の配達員さんなど、日々の母に関わってくださる方々にいつかお礼を伝えたいなと思いました。

※記事の内容は公開当時の情報であり、現在と異なる場合があります。記事の内容は個人の感想です。

著者:森原あさみ/50代女性・パート

※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2025年7月)
※一部、AI生成画像を使用しています。

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