
私の祖母は、何事も素早く伝える「報・連・相」を大切にする人でした。けれど入院中、家族は“ある知らせ”を伝えるべきか大きく迷いました。あのときの判断は、今でも家族の記憶に残っています。
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報・連・相を大事にしていた祖母
私の祖母は、どんなささいなことでも迅速に共有する「報・連・相」をとても大事にする人でした。誰に対しても平等に、そして素早く情報を伝えるその姿勢は、祖母が現役時代に当時としては珍しい「会社員」として働いていたことに由来しているのかもしれません。
ただ時には、その真面目さが裏目に出ることもありました。たとえば、母の勤務中に職場へ電話をかけ、「母がとてもかわいがっていた飼い猫が脱走し、事故に遭った」と伝えてしまったことがあります。母はその知らせで仕事が手につかなくなり、困ってしまったのです。
心筋梗塞で入院
そんな祖母ですが、晩年は心筋梗塞(心臓の筋肉に血液を送る冠動脈が詰まり、胸の強い痛みや息苦しさ、時に生命の危険をもたらす病気)をたびたび起こし、命の危機を何度も乗り越えてきました。
あるとき、祖母が心筋梗塞で緊急入院していた際、祖母の大切な友人の訃報が届きました。戦後の混乱期から互いに支え合ってきた、まさに「盟友」と呼べる存在です。祖母が「報・連・相」を重んじる人であることを考えれば、伝えないのは不自然かもしれませんが、病状が安定しないうちに知らせるのはあまりにも危険だと家族で判断し「退院し、落ち着くまでは黙っておく」という結論に至りました。
祖母の悲痛な訴えに
退院後、祖母は自宅で療養していましたが、人の口に戸は立てられないものです。別のルートから友人の訃報を耳にしてしまいました。
「どうして教えてくれなかったの!」
祖母は涙ながらに怒りをぶつけてきました。母は、「心臓の持病がある人に、そんなこと言えるわけないでしょう。うちまで葬儀を出すことになってしまうわよ!」と強く反論しました。
それからというもの、祖母は体調を崩すたびに「(友人の名前)が呼んでいるのかもしれない」と弱気な言葉をこぼすようになりました。その姿を見るたびに家族は「もしあのときすぐに伝えていたら、本当に気持ちが後を追ってしまったかもしれないね」と、ひそかに語り合ったものです。
まとめ
祖母も家族も、お互いを思うやさしさから情報を「伝える」「伝えない」という選択をしました。結果として誤解や衝突も生まれましたが、そこにはたしかに相手を思う気持ちがありました。今では、あのときのやりとりさえも、家族の絆を思い出す一部として心に残っています。
※記事の内容は公開当時の情報であり、現在と異なる場合があります。記事の内容は個人の感想です。
著者:磯辺みなほ/30代女性。ゲーマー。発達障害持ちの夫と2人暮らし。大変なことも多い中、それ以上にネタと笑顔にあふれる毎日を送っている
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2025年8月)
※一部、AI生成画像を使用しています。
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