今年上半期の介護事業者の倒産が53件にのぼることが、東京商工リサーチの調査結果で2022年7月25日に明らかになった。
38件だった前年同期より1.4倍多い。経営環境が一段と厳しくなったことが大幅増の要因だ。
コロナ禍の影響が尾を引くなか、政府による支援策の効果は徐々に減弱してきた。光熱費、食材費などの上昇に伴うコスト増も大きい。事業者は深刻な人手不足、競争の激化などに苦しんできたが、こうした新たな状況が追い打ちをかけている。
物価高騰の出口は一向に見えない。高齢者が再びサービスの利用を控えるなど、目下の「第7波」も現場に相応の打撃を与えるとみられる。今年の下半期は、介護事業者の倒産が更に増えてしまう懸念が強い。
「コロナ禍で経営体力が落ち込んでいる。追加の支援策などがなければ、年間では倒産件数が過去最多を更新する可能性が出てきた」
東京商工リサーチはこう警鐘を鳴らす。「すでに”コロナ融資”など資金調達枠は一杯で、資金繰りの悪化による倒産増が見込まれる」との見方も示した。
調査結果のレポートによると、今年上半期の介護事業者の倒産は「訪問介護」が22件で最多。以下、「通所・短期入所」が17件、「有料老人ホーム」が8件、「その他」が6件と続いていく。
倒産した事業者の86.8%が職員20人未満。今回も小規模な法人が大半を占めていた。
東洋大学の高野龍昭准教授はこれらを踏まえ、「昨年は政府によるコロナ禍の支援策が効いていたものの、今年はその支援策の縮小と物価高騰によるコスト増が経営を圧迫して倒産が増えた」と分析。今後については、「都市部では過当競争が、地方では高齢者人口の減少による”利用者確保難”が予測され、介護事業者にとっては厳しい経営環境が続く」と指摘している。
情報提供元:介護のニュースサイトJoint