<FPと考える>親の介護で仕事を辞めなくてもいい「介護休業制度」の活用

こんにちは。ファイナンシャルプランナーの前佛(ぜんぶつ)です。私は家計改善のアドバイスのほか、整理収納アドバイザー1級を取得し、暮らし全体の整え方もお伝えしています。介護カレンダーでは親の介護をはじめ、将来介護が必要になったときに役に立つ情報をお伝えしながら、介護にまつわる大切なことを皆さんと一緒に考えていきたいと思います。

親の介護は突然やってきます。筆者の親も足をケガしたことがきっかけで要介護状態になりました。離れて暮らす親に介護が必要になったとき、介護の進め方に悩む人は少なくありません。そのために介護離職を決断する人もいます。けれども親の介護が必要になっても、仕事と介護を両立できる制度を活用すれば、仕事を辞めなくてもいいのです。今回は、介護休業制度など仕事と介護の両立を支援する制度をご紹介します。

■介護でも会社を辞めなくていい「介護休業制度」

親の介護が必要になったとき、仕事を辞める選択をする人も少なくありません。しかし、介護をしている間も生活費は必要です。介護離職をして親の年金だけを頼りに生活をすると、親も子も共倒れになるかもしれません。できれば介護離職は避けたいものです。

日本には公的な介護保険制度があります。そして、介護を理由に一時的に仕事を休める制度もあります。その制度が「介護休業制度」です。ここでは介護休業制度についてお伝えします。

□介護休業制度とは?

介護休業制度とは、働く人が要介護状態になった対象家族を介護するために取得できる休業のことです。対象家族1人につき3回まで、通算93日まで取得できます。

□対象家族とは?

配偶者、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫が対象家族です。

□介護休業制度の利用要件は?

・入社1年以上であること(この要件は2023年4月1日からは撤廃となります。)

・介護休業を取得予定日から93日間を経過後も6ヶ月以上の雇用契約が認められること

上記の要件にあてはまれば、正社員だけでなくパートやアルバイトでも介護休業を取ることができます。

介護休業制度を利用する際は、休業開始予定日の2週間前までに勤務先へ書面などで申し出ます。

■介護休業では雇用保険の加入者は給付金がもらえる

介護休業制度を利用して仕事を休んでいる間でも、雇用保険の加入者は一定の要件を満たせば「介護休業給付金」を受給できます。

もらえる額は「休業開始時賃金日額×支給日数×67%」です。(ただし最長93日間まで)

受給要件は以下の通りです。

・介護休業の開始前2年間に雇用保険の被保険者期間が12ヶ月以上あること

・休業中の就業日数が10日以下であること

・介護休業取得期間中の賃金が休業前の80%未満であること

介護休業給付金はハローワークへ申請しますが、申請は勤務先が行います。受給する際は勤務先に相談しましょう。

■まだある!仕事と介護の両立を支援する制度

仕事と介護を両立するための支援制度はまだまだあります。

通院の付き添い、介護保険サービスの手続き、ケアマネージャーとの打合せなどで短期間だけ休むときは「介護休暇」を利用できます。

介護休暇は対象家族1人につき5日まで、対象家族が2人以上の場合は10日間取得できます。休暇は時間単位でも取得可能です。

また、企業では「短時間勤務制度」「フレックスタイム制度」「時差出勤制度」「介護費用の助成措置」を実施しています。

さらに、介護により残業を免除するなど働く時間を制限する「時間外勤務の制限」「所定外労働の制限」「深夜業の制限」などの措置もあります。

勤務先でどんな制度を利用できるか、確認しておくとよいでしょう。

■親の介護が必要になったときにすべきこと

突然、親の介護が必要になったときは、まず職場に介護が必要になることを伝えます。企業には仕事と介護の両立支援制度があるので、どんな制度があるのか、どの制度を利用すべきか検討しましょう。

そして、次にすべきことは、親の要介護認定を受けることです。要介護認定は、介護保険サービスを受ける際に必要なものです。要介護の度合いを認定してもらい、その度合いによって介護保険サービスの負担限度額や利用できるサービスなどが決まります。

要介護認定を受ける際は、親の住む自治体の地域包括支援センターか市区町村の福祉関連窓口へ相談します。

要介護認定の申請をすると、自治体の職員による訪問調査が行われます。その際は、できるだけ同席して親の状態を正確に伝えることをお勧めします。

要介護認定を受けると、担当のケアマネージャーが決まります。ケアマネージャーは介護の相談先となります。何でも気になることがあれば、ケアマネージャーに相談するとよいでしょう。

■まとめ 親の介護が必要になったとき、仕事を辞める必要はありません。介護休業制度や短時間勤務制度など、仕事と介護の両立を支援する制度を活用することをお勧めします。さらに、介護保険制度のサービスを積極的に利用し、兄弟姉妹と役割を分担して、自分ひとりが疲弊しないように制度を利用してくださいね。

<プロフィール>前佛 朋子(ぜんぶつ ともこ)
ファイナンシャルプランナー(CFP®認定者)/ 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 / 整理収納アドバイザー1級 / 自分史活用アドバイザー
『安心と心のゆとりのある暮らしができる人を増やしていく』という理念のもと、1人でも多くの人に安心できる暮らしと心の余裕を手に入れていただこうと、家計見直しやライフプランなどの相談業務を行う。ライフイベントに合わせて貯蓄や用途を分類するお金の整理を得意とする。また、離れて暮らす母の介護に関わった経験を活かし、遠距離介護などの相談も受ける。保険や金融商品を売らないファイナンシャルプランナーとして活動中。
ホームページ:家計コンサルティングZEN

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