<FPと考える>介護保険で購入できるものと購入できないもの
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介護体験や思いなど、さまざまな立場の人の介護にまつわるコラムをお届けします。

こんにちは。ファイナンシャルプランナーの前佛(ぜんぶつ)です。私は家計改善のアドバイスのほか、整理収納アドバイザー1級を取得し、暮らし全体の整え方もお伝えしています。介護カレンダーでは親の介護をはじめ、将来介護が必要になったときに役に立つ情報をお伝えしながら、介護にまつわる大切なことを皆さんと一緒に考えていきたいと思います。

家族を自宅で介護したいと考えている人もいらっしゃると思います。介護をするには専用の用具などを揃える必要がありますが、すべてを揃えるにはまとまったお金が必要になります。そんな中、介護保険を利用して購入できる介護用品があることをご存じですか?介護保険を利用できれば自己負担割合だけで済むので、介護費用を抑えることができます。
そこで今回は、介護用品のうち介護保険で購入できるものと購入できないものをご紹介します。

■介護保険を使って購入できるもの


自宅介護をするのにはさまざまな介護用品が必要になりますが、その中には介護保険を使って購入できるものがあります。保険適用で購入可能なものを「特定福祉用具」といいます。

該当するものは以下の6品目です。

・腰掛け便座
・自動排泄処理装置の交換可能部品
・入浴補助用具
・簡易浴槽
・移動用リフトの吊り具部品
・排泄予測支援機器


いずれも利用者の肌に直接触れるもので、レンタルになじまないものが対象となっています。
介護保険を使って特定福祉用具を購入するには、都道府県の指定福祉用具販売業者から購入する必要があります。その際、通販での購入は対象外となるので注意が必要です。

□利用対象者
介護保険を利用して特定福祉用具を購入できる人は、要支援1・2、要介護1~5の認定を受けている人です。


□利用者負担について
介護保険を利用して特定福祉用具を購入する場合、利用者負担は介護保険で適用されている自分の負担割合(1割・2割・3割)になり、介護保険から9割・8割・7割が給付されます。ただし、利用の際はまず全額を自己負担します。その後、役所へ「福祉用具購入費支給申請書」を提出すると、保険給付分が払い戻される仕組みとなっています。

また、購入費用には限度額があり、年間で「10万円まで」となります。たとえば、販売価格が10万円のものを購入すると、介護保険が1割負担の人は9万円が保険給付で賄われ、本人は1万円の負担で済みます。ただ、これで限度額の10万円を使い切るので、同一年度内は新たに特定福祉用具を購入できません。限度額10万円とは販売価格のことであり、自己負担額の合計ではないので注意しましょう。

自宅介護で対象の特定福祉用具を購入したいときは、担当のケアマネージャーに相談する
とよいでしょう。また、最寄りの地域包括支援センターへも相談できます。

■介護保険では購入できないもの


介護用品の中には介護保険では購入できないものがあります。たとえば、紙おむつ、介護食、1本杖、シルバーカー、口腔ケア商品などです。
ただし、自治体によっては紙おむつの支給や助成を実施しているところがあります。ただ、要介護度が限定されたり、助成の上限額が設定されていたりする場合があります。とはいえ利用対象者に該当すれば負担が軽くなるので、お住まいの自治体の助成を確認することをお勧めします。

■介護保険を使ってレンタルできるもの


介護用品は購入だけでなく、レンタルで用意する方法もあります。注目したいのが、介護保険の「福祉用具貸与」サービスです。この場合、レンタル料が介護保険の負担割合(1割・2割・3割)になるので、利用したい福祉用具があれば福祉用具貸与サービスを活用するとよいでしょう。

福祉用具貸与の対象となる介護用品は、以下の通りです。
 

・特殊寝台および付属品
 ・床ずれ防止用具
 ・体位変換器
 ・手すり
 ・スロープ
 ・車イスおよび付属品
 ・歩行器
 ・歩行補助杖
 ・移動用リフト
 ・認知症老人徘徊感知機器
 ・自動排泄処理装置

福祉用具貸与のレンタル料は、他に利用している介護保険サービスの利用料と合算になります。介護保険では、自己負担割合の料金で利用できるのは要介護度に応じた1ヶ月間の支給限度額までです。そのため、場合によっては1ヶ月の支給限度額を超えることがあるかもしれません。支給限度額を超えた分は全額自己負担になるので、介護保険サービスの利用状況にあわせてレンタルする福祉用具を決めるとよいでしょう。


■まとめ


自宅介護に必要な福祉用具の中には、介護保険を利用して購入できるものがあります。購入可能なものは腰掛け便座や入浴補助用具など排泄や入浴時に用いるものです。指定を受けた福祉用具販売業者から購入し役所へ申請すれば、後から保険給付分が払い戻されるので、介護保険の負担割合の費用で済みます。また介護保険を使ってレンタルできる福祉用具もあります。介護費用を抑えるため、介護用品(福祉用具)は可能な限り介護保険を活用することをお勧めします。

<プロフィール>前佛 朋子(ぜんぶつ ともこ)
ファイナンシャルプランナー(CFP®認定者)/ 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 / 整理収納アドバイザー1級 / 自分史活用アドバイザー
『安心と心のゆとりのある暮らしができる人を増やしていく』という理念のもと、1人でも多くの人に安心できる暮らしと心の余裕を手に入れていただこうと、家計見直しやライフプランなどの相談業務を行う。ライフイベントに合わせて貯蓄や用途を分類するお金の整理を得意とする。また、離れて暮らす母の介護に関わった経験を活かし、遠距離介護などの相談も受ける。保険や金融商品を売らないファイナンシャルプランナーとして活動中。
ホームページ:家計コンサルティングZEN

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