認知症になった祖母の介護に悩む母。介護の前に知っておけばよかったこととは…【体験談】

認知症になった祖母の介護に悩む母。介護の前に知っておけばよかったこととは…【体験談】
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介護施設や自宅での介護、介護について調べたり、介護を考えるきっかけになったことなどの体験談、マンガ記事をお届けします。

母の介護に悩む娘のイラスト

私の母は、3人兄弟の末っ子。ひとり地元に残り結婚し、3人の子どもを出産して育ててきました。しかし、同じ町に住む祖母が認知症を患い始めたことで、急きょ介護問題が母に訪れて生活は一変。老老介護の祖父を助けるためにも、働きながら祖父母宅に通い夕食を届ける日々。そして、どんどん進行する祖母の症状に翻弄(ほんろう)されながら感じた、前もって知っておきたかったこととは……。

変わり始めた母の生活

母親の介護をするイメージ

3人兄弟の末っ子である私の母は、地元で父と結婚。兄、姉、私の3人の子どもの母となり、家族5人、マイホームで穏やかに暮らしていました。

やがて兄が巣立ち、母が52歳のころ、姉と私と父の4人は仕事や学校、部活でそれぞれ慌ただしくも楽しい生活を送っていました。 そんな中、祖母が認知症を患い始めたことで、母に突然介護問題が訪れました。

母の兄弟である叔父と叔母は、高校卒業後に田舎を出てからはずっと都会で暮らしているため、祖父母を近くで支えられるのは母だけ。これまで家事を一切してこなかった祖父を助けるためにも、仕事終わりに実家へ通っては掃除や夕食の準備を手伝う、母の慌ただしい日々が始まりました。

認知症になった祖母は…

介護施設のイメージ

男尊女卑が当たり前だった田舎で結婚した祖母は、結婚を機に、祖父の両親や兄弟と一緒に祖父の実家で生活するようになりました。祖母自身も働きながら、大人数の食事作りや洗濯などの家事をこなし、自分の趣味も楽しみつつ休む暇なくあれこれ活動していました。

多忙な生活を送ってきた祖母のてきぱきとした身のこなしは、子育てを終え、祖父と2人暮らしになってからも相変わらず。家事や畑仕事に加えて、日本舞踊や和太鼓、グラウンド・ゴルフなどの趣味にも打ち込み、自宅を訪れる友人や孫、親戚をいつも温かく迎え入れていました。

しかし、認知症を患い始めるとこれまでの活力が急減。あれほど動いていた祖母は立ち上がる気力すらなくなり、日中も寝てばかりいるようになりました。怒りっぽくなってささいなことにもいら立っているといった症状にも悩まされ、隣でサポートする祖父は困り果てていました。

そして、祖母の認知症の症状はどんどん悪化し、生活が困難と認められて施設へ入所することになりました。

介護が始まる前に知っておきたかったこと

手続きの書類にハンコを押すイメージ

介護について右も左もわからずひとりで苦労した母は、介護が必要になる前に知っておきたかったと悔やまれることがいくつかあったそうです。

まずは、介護が必要になったときの相談先について。誰を頼ったらいいのか、どのような状況であれば介護施設を利用できるのかなど考えることが山積みで、何をどうしたらいいのかもわからず、不安で孤独な思いをしたようです。

しかし、市役所の相談窓口を訪れてからは、必要な情報をどんどん得ることができ、つらい気持ちや悩みを少しずつ解決していけたのだそう。そのため、介護について不安なことがある場合の相談窓口について、事前に知っておくべきだったと言っていました。

次に、祖母の貴重品やお薬手帳などの保管場所を把握しておくこと。祖母の介護認定や施設入所のための申請には、多くの手続きが必要でした。

各種手続きには、通帳や印鑑、身分証明書などが必要になります。そんなときに、祖母の貴重品類がどこにあるのかもわからず苦労したといいます。そのため、貴重品の保管場所だけでも、祖母が元気な内から共有してもらっておくべきだったと悔やんでいました。

最後は認知症になる前に、掃除や荷物の整理を一緒に進めておくべきだということです。家の片付けは、母ひとりで苦労した大きな要因でもありました。

認知症の症状が進むにつれて、祖母は部屋の片付けや掃除に手が回らなくなっていたのです。母が夕飯を届けたときのわずかな時間の中で片付けや掃除を進めようとするも、症状の影響で怒りっぽくなっている祖母は、部屋の中のものを触られることを嫌がり、ただの片付けなのに作業は難航しました。

さらに、祖母宅はお盆やお正月には親戚中が集った場所でした。大量にある食器類や布団、未開封の贈答品など、とにかく品数が多いため、整理するのもひと苦労だったそう。

だからこそ母は、「自分の母親が元気な内から実家の荷物の整理を手伝っておいたほうがいいと知っていたら、こんなに苦労しなかったのに」と後悔していました。

まとめ

いざ母親を介護するとなったとき、症状が進む悲しみと恐怖を抱えながら、誰にどう相談したらいいのかもわからず不安に感じ、とても苦しい思いをした母。もっと早く知っていたら、母だけでなく、祖母や祖父、私たち子どもも、必要以上に心細い思いや大変な思いをせずに過ごせたはずだといいます。母が身を持って体感したことをしっかりと聞かせてもらったからこそ、両親が元気な内からできることがあるのだと私自身も気付かされました。

監修/駒形依子先生(こまがた医院院長)
2007年東京女子医科大学卒業後、米沢市立病院、東京女子医科大学病院産婦人科、同院東洋医学研究所を経て、2018年1月こまがた医院開業。2021年9月より介護付有料老人ホームの嘱託医兼代表取締役専務に就任し現在に至る。著書に『子宮内膜症は自分で治せる(マキノ出版)』『子宮筋腫は自分で治せる(マキノ出版)』『膣の女子力(KADOKAWA)』『自律神経を逆手にとって子宮を元気にする本(PHP研究所)』がある。

※記事の内容は公開当時の情報であり、現在と異なる場合があります。記事の内容は個人の感想です。

イラスト/山口がたこ
介護カレンダー/ウーマンカレンダー編集室

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