80代の義母は、運転歴50年のベテランドライバー。畑仕事にも、推し歌手のコンサート通いにも、自分で軽乗用車を運転して出かけます。ただ、最近は車体に細かい傷が増えるなど、危険な兆候も。高齢義母の運転に悩む同居嫁の体験談です。
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「どうも車が変なのよ、故障かしら」
義母は30代のころに運転免許を取り、それから約50年運転してきたベテランドライバーです。若いころは乗用車を運転して通勤。80代となった今でも、買い物や親戚付き合い、畑仕事、市内で開かれる推し歌手のコンサートなどへ軽乗用車を運転して出かけていました。
ただここ数年は、大きな事故こそないものの、本人が気付かないうちに車体に傷が付いていたり、バンパーに凹みができていたり……。私や夫は、免許の返納も視野に入れたほうが良いと話していました。
そんなある日の夕食後、義母が「どうも車が変なのよ、故障かしらねぇ」と話しだしました。
どういうことか気になったのでよく聞いてみると、「あそこの坂の曲がり角で停車していたら、急に車がびゅーんって勝手に動き出したんよ。びっくりして慌ててブレーキを踏んで止まったからよかったものの……」「それとは別のときだけど、進もうとしているのに全然進まんこともあってね。故障かな、あの車。たまたま通りがかった近所の○○さんが見てくれて動くのは動いたんだけど、バッテリーを交換したらって言われたわ」。どうやら、急に動いたり動かなかったりと車の動きに違和感があるとのことでした。
そんなはずはないと思いながらも
義母の車は先月点検を受け、問題なしで戻って来たばかり。また、先週私が義母を乗せて運転したときも異常は感じなかったので、車の故障? そんなはずはないと思い、義母がなんらかの運転ミスをしているのではないかと想像しました。しかし、「どういう操作をしたのですか?」と聞いても、「普通に停めて普通に運転してただけよ、よく覚えてないわ」とのこと。詳しい運転操作はわかりませんでした。
車の故障だと思っている義母に運転ミスを確かめるのは難しそうだったので、「私が先週あの車を運転したときは何も感じませんでしたけどねぇ」と答えるに留めました。夫も首をかしげて話を聞いていましたが、義母の言う故障説を否定はせずに、「それじゃあ、いつもの修理工場へメンテナンスに出して見てもらったら?」と声を掛けていました。
義母は不安そうな顔をしていましたが、「そうねぇ。明日早速持って行ってみるわ」と乗り気になったようでした。
第三者の専門家から言われて自覚
翌日、修理工場から午前中早々に帰って来た義母。けれど、自分から何も話しだそうとしません。私は昼ごはんどきになってから、「車、どうでしたか?」とのんびり尋ねてみました。
「うん、まあ、大丈夫やったわ。故障ではなくて……なんか私の勘違いだったみたい」と、義母からは少し歯切れの良くない返事。それ以上あまり話したがらない様子だったので、「そうですか、故障じゃなくてよかったですね」と声を掛けるだけにしました。
どういう説明があったのか気になったので、後から修理工場の担当者に電話で聞いてみました。「車は全然なんともなかったですよ。お母さんには、シフトをニュートラルやドライブに入れたままエンジンを切ったときのことを説明させていただきました。『場合によっては下り坂では勝手に動くことがあるし、エンジンがかからないこともあるし、アクセルを踏んでも発進しないこともありますよって。だから停車するときは必ずパーキングに入れてください、操作するときはシフトがどこに入っているかよく確認してくださいね』って言ったらうなずいてらっしゃったから、納得いただけたと思いますよ」
夫にこの話を伝えると、「やっぱりシフト操作のミスだな。修理工場の人に言ってもらってよかった。俺が母に『運転ミスじゃないか?』と言っても、そんなことはないってはねつけられたと思う。こういうことは専門家に相談して、説明してもらうのが正解だな」と言い、ため息をついていました。
まとめ
交通事情の良くない田舎に住んでいるので、家族としては、義母自身が自立した生活を送るためにはできるだけ長く安全運転を続けてほしいと思っています。ただ、高齢となり危険度がじりじりと上がっているのは事実。免許返納後の不便な生活を思うと簡単には踏み切れず、今のところは、徐々に運転範囲を近隣に限り、できるだけ運転頻度を減らすなどの措置が必要な段階かと思います。でもそこで大切にしたいのは、ベテランドライバーである義母本人の理解。まずは自分の運転をしっかり見直してほしいと思います。そのためには家族からの意見だけでなく、今回のように第三者である車の専門家から指摘してもらうのは有効だと感じました。
※記事の内容は公開当時の情報であり、現在と異なる場合があります。記事の内容は個人の感想です。
文/あさみ
イラスト/sawawa