こんにちは! 千葉老人ホーム・介護施設紹介所リーブス所長の石田です。
前回までで、一通り老人ホームの選び方について解説しました。今回は、実際に私が過去にお受けした老人ホームの相談事例を紹介します。
老人ホームに関して知識がある方でも、いざ老人ホームを探そうとしたり、入居後だったりに想定外のトラブルや困りごとが発生することもあります。
実際の相談事例を元に解説しますので、ぜひ参考になさってください。
1.入居後に介護度が上がったら毎月の費用が20万円増!?
1-1 入居対象者の状況
<性別>女性
<年齢>81歳
<介護保険>要介護5
<認知症>なし。年相応の物忘れ程度
<必要な医療行為>なし
<現在の状況>サービス付き高齢者向け住宅に入居中(現在は病院に入院中)
1-2 相談内容
サービス付き高齢者向け住宅に入居されている対象者(母)の息子様から相談を受けました。
お母様は元々ご自宅でお一人暮らしをされていらっしゃいました。高齢になり一人だと何かあったときに不安があるということで、半年程前に息子様の自宅近くに新しくオープンしたサービス付き高齢者向け住宅に入居されました。
入居した時点の介護保険は要介護1で、歩くときに杖や歩行器を使用してはいるものの、ADL(日常的な生活動作)は概ね自立しており、サービス付き高齢者向け住宅に入居後はスタッフの見守りもあり安心して穏やかに過ごされておりました。
そんなある日、お母様が倒れ病院に緊急入院することになりました。診断は脳梗塞。幸い居室で倒れているお母様をスタッフが発見しすぐ救急搬送したので大事には至りませんでしたが、入院中にADLが低下し全介助の状態になり、介護保険も要介護5になりました。
病院からは治療は終了しているので、すぐに退院し元々入居されているサービス付き高齢者向け住宅に戻るよう言われています。
入院前と比べると大分身体の状態が変わったので、息子様の方で入居しているサービス付き高齢者向け住宅の担当ケアマネジャーに相談したところ、ADLが低下し全介助になられても、ホームのスタッフで対応はできるとのこと。
ただし、介護保険の単位数を計算したところ、介助料が多いため介護保険の範囲では足りず、自費サービスで対応することになるので、毎月料金が別途20万円かかると言われてしまいました。
今まで、月額利用料と介護保険の自己負担などを足して毎月20万円くらいはかかっていたのですが、その料金にプラスして20万円ですから、これまでの倍の40万円程の費用が毎月かかることになります。
息子様曰く、入所時にはホームの相談員から『介助料が増えて介護保険の単位数が足りなくなってプラス料金が発生しても、ホームのサービスとして追加費用は発生しない』と説明されていたとのこと。
確かにオープン当初は、相談員の言うように、要介護度が上がりプラス料金が発生しても無償で対応していたという経緯はあったようです。しかし、会社の方針転換があり、途中から料金が発生するようになっていました。
入所時の説明と違うことに対しホーム側に不信感はありましたが、退院期日まで時間もなくホームともめている時間もありませんでした。
かといって、毎月40万円の費用を払うのは無理なので、今までと同じくらいの費用で入居できる他のホームをすぐに探してほしいというご相談でした。
1-3 私の対応
息子様から相談をお受けしてから、まず、入院中の病院の担当ソーシャルワーカーに連絡を取り、お母様のお身体の状態と退院期日を私も確認しました。
医療行為や認知症はないが、食事や排泄・入浴など生活に必要な動作全てに介助が必要な状態で、退院期日は1カ月以内とのこと。
通常、老人ホームの入所手続きは申込から入所まで約2週間から1カ月くらいかかりますので、すぐに候補となる老人ホームをピックアップしました。
今まで入居されていたのと同じサービス付き高齢者向け住宅や住宅型有料老人ホームは、介助料が多いと自費サービスだけで数十万円かかってしまう可能性があります。
そのため、要介護5でも、もともとサービス付き高齢者向け住宅に支払っていた月額料金で収まるような介護付き有料老人ホームを数軒ピックアップし息子様に提案しました。
介護付き有料老人ホームの場合、介護保険自己負担分も定額となり、その分、支払いの目安はたてやすいというメリットがありますから。
提案した老人ホームの中から2軒の老人ホームを見学し、今のお母様のお身体の状態でも自費サービスがかからず、毎月の料金が22-23万円程度で入居できる老人ホームに申し込みし、無事入居されました。
息子様は、『22-23万円なら今までとほぼ変わらないので払えますし、入居した介護付き有料老人ホームには、日中、看護師もいるので今後も何かと安心です』と喜んでいらっしゃいました。
1-4 今回の事例のポイント
・高齢者の一人暮らしで倒れた場合、発見が遅れると大事に至ることもあるので、安否確認や見守りがあるホームに入所すると安心。
・サービス付き高齢者向け住宅や住宅型有料老人ホームは、要介護度が高くなると、介護保険の単位数の範囲で収まらず、高額の自費が別途かかる場合もあるので注意が必要。
・介護付き有料老人ホームでは、介護保険の自己負担が定額制で、要介護度が上がってどんなに身体介護の介助料が増えても自費が発生することはないので安心。
・老人ホームの相談員は営業マンでもあるので、なかには老人ホームを満床にするために、いい加減なことを言う相談員もいるので要注意。
2.まとめ
いかがでしたでしょうか。今回は入所後の費用トラブルの事例を紹介しました。老人ホームの入所後のトラブルで多いのはやはりお金に関することだと思います。
最近、新規にオープンするのは、介護付き有料老人ホームや住宅型有料老人ホームよりも、サービス付き高齢者向け住宅の方が多い傾向にあります。
新しくてきれいという点に惹かれて、サービス付き高齢者向け住宅を選ぶ方も増えていますが、元気な内は良いのですが、今回のケースのように介助量が増えた場合(目安要介護3以上)、高額な自費料金がかかることも多いので注意が必要です。
ただし、あまり先々のことを考え過ぎて、元気な内から介護付き有料老人ホームに入居すると、自分以外の入居者に重度な方しかおらず、かえって気が滅入って早期に退去するケースもあります。どの種別の施設にするかは、年齢や健康状態、予算など、さまざまな面から検討する必要がありますね。
今回の事例の他に、入居金がすぐに返還されない、請求書の内容が間違っていて余分に費用を請求された、入居後に改定があって費用が大幅に増えた等など、さまざまな費用に関してのトラブルがあります。
入居後に費用に関してトラブルがあったときは、自分だけで処理せず場合によっては、自分より詳しい第3者の専門家に相談されるのも良いでしょう。
次回も、今回とは違うケースの実際の老人ホームの相談事例について解説する予定です。
老人ホームの選び方(介護カレンダー)
記事提供:石田治男
千葉老人ホーム・介護施設紹介所リーブス 所長
入居相談員 / 老人ホームアドバイザー