老人ホームの相談事例<退院まで10日!? このままでは精神病院に転院することに>【老人ホームの選び方 vol22】
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千葉老人ホーム・介護施設紹介所リーブス所長、老人ホームアドバイザーである石田治男さんが「老人ホーム」を探す際の考え方や欠かせない知識、実践的なテクニックを教えてくれました。また、家族や親戚などを老人介護施設へ入居させた経験がある方の体験談も紹介します。

こんにちは!千葉老人ホーム・介護施設紹介所リーブス所長の石田です。

老人ホーム探しは難しいものです。なぜなら、人によって老人ホームに入る年齢も、要介護度も生活様式も趣味嗜好も、そして老人ホームにかけられるお金も違うからです。

しかも、希望の老人ホームが見つかったとしても、入所後に想定外のトラブルや困りごとが発生する可能性もあるのが難しいところ。

「老人ホームの選び方」では、私が過去にお受けした実際の相談事例を紹介しながら、注意すべき点を考えていきたいと思います。

ぜひ参考になさってください。

1.退院まで10日!? このままでは精神病院に転院することに

1-1 入所対象者の状況

<性別>女性

<年齢>96歳

<介護保険>要介護2

<認知症>あり。入院後、せん妄のような症状

<必要な医療行為>なし

<既往歴>心不全、リウマチ、圧迫骨折

1-2 相談内容

入居対象は96歳女性。ご長男から、「入院中のお母さまの老人ホームを探しているが退院まで10日しかない」と、電話で相談がありました。

元々、お母さまはご長男夫妻と二世帯住宅で暮らしていました。しかし、自営業のご夫妻は日中、仕事でご不在のため、お母さまお一人で過ごしているそうです。

そんななか、一週間前にベッドから落ちて急性期病院に入院、検査の結果、骨折には至りませんでしたが、炎症反応があったため検査すると肺炎と診断され、入院して治療することになりました。肺炎自体は順調に回復しているものの、入院当初から「大男がいる」「殺して」など訳のわからないことを言い、夜間に不穏な気持ちになるとスタッフに暴言を吐いたり、点滴の針を抜こうとしたり、せん妄のような症状が出ているとのこと。そのため日中は、安全ベルトとミトンを装着、スタッフがすぐに対応できるように車椅子に乗ってナースステーションで過ごしているそうです。

安全ベルトとミトンは身体拘束になるので、老人ホームでは緊急時を除き装着することはありません。そのため、現在のような状態で受け入れてくれる老人ホームを探すのはかなり困難です。病院からは、受け入れてくれる老人ホームが見つからない場合は、「いったん、精神病院に入院しては?」と打診されてもいます。

ご長男夫妻にすれば、直前まで自宅で過ごしていたお母さまを精神病院に入院させるのには抵抗があります。またお母さま自身は老人ホームの入居でさえも抵抗があるようです。自宅で面倒を見たくても、仕事のため難しく、受け入れてくれるホームを探してほしいと、強く希望されました。

1-3 私の対応

退院まで10日と短く、長男ご夫妻はお二人とも仕事をされているため、老人ホームへの見学も5日後ではないと行けないと聞いておりましたので、面談の時点で受け入れの可能性が高く、かつ申し込みからすぐに入所できそうな老人ホーム2軒をご提案。また当社の相談員が老人ホームに空き状況、受け入れ態勢を確認、また、本来なら入所前に提出しなくてはならない健康診断書を入所後にできないか交渉しました。

通常、老人ホームに入所する際は、各老人ホーム指定の書式の健康診断書の提出が必要です。しかし今回は、退院までの期間が短いことと、入院直前まで自宅で健康に生活されていたこと等をホーム側に伝えたところ、どちらのホームも入所後に健康診断書を提出することを了承してもらいました。

5日後休みの取れた長男の奥様と当社相談員が2軒の老人ホームを見学、そのうちの一軒にすぐにお申し込みされました。申し込み3日後には、老人ホーム担当者によるご本人様との面談がありましたが、面談で受け入れNGとなっては困りますから、相談員も同席しました。

面談の際、事前に聞いていた話よりお母様は穏やかで、「身体拘束が外れるなら早く老人ホームに入りたい」とおっしゃいました。それもあってか、老人ホームの入居審査もその日にクリア、2日後に入所とスムーズに進みました。

今回ご案内したホームは下記2軒。ホーム<2>も気に入られたのですが、別のホームを挟んでの入所となると、短期間での環境変化により、認知症が進行するリスクもあるため、すぐに入所可能な<1>のホームに決定されました。

  1. 介護付き有料老人ホーム、元は会社の寮だった建物で決して新しくはないが、看護師が24時間常駐するなかで地域最安値
  2. 介護付き有料老人ホーム運営会社は、関東圏を中心に複数の老人ホームを運営。見学時点では満室だったが、近く空く予定があったため、いったん、系列の老人ホームに入所し、空きが出次第、希望ホームに入居

なお、入所したその日の夜、ご長男の奥様からお礼のメールをいただきました。

「朝退院して、午前中入所できました。本人はお昼ご飯をとてもおいしくいただき、『夢みたい』と喜んでいました。皆さま丁寧に温かく接していただき、義母だけでなく私たちもありがたいことと思っています。

本人が全く嫌がることなく家でなくホームを選択したことにも驚いています。

迅速なご対応と的確な選択でこんなに早く決まってよかったです」

1-4 今回の事例のポイント

・病院入院中に身体拘束をしている場合も、老人ホーム側が見守りや人員の配置等で対応可能と判断すれば入所可能な老人ホームもある。

・本来、入所前に健康診断書を提出しなくてはならないが、老人ホームに交渉することで、入所後の提出にしてもらえる場合もある。

2.まとめ

いかがでしたでしょうか?

入所までの期間が短く、かつ認知症の進行によりせん妄行動が見られ、身体拘束されているかたの相談例でした。入所にあたってはさまざまな決まりがありますが、状況を丁寧に説明することで回避できるケースもあるので、まずはホームや紹介所などに相談してみることをお勧めします。

次回も、実際の老人ホームの相談事例を基に解説します。

老人ホームの選び方(介護カレンダー)

記事提供:石田治男
千葉老人ホーム・介護施設紹介所リーブス 所長
入居相談員 / 老人ホームアドバイザー

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