認知症の叔母と老人ホームと Vol7<男性スタッフに恋心!?>【オリジナルコラム】

認知症の叔母と老人ホームと Vol7<男性スタッフに恋心!?>【オリジナルコラム】
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介護体験や思いなど、さまざまな立場の人の介護にまつわるコラムをお届けします。

老人ホームでは、男女問わず、さまざまな年齢、いろいろな個性をもつスタッフが働いています。施設の規模にもよるのでしょうが、基本、勤務はシフト制。メインの担当はいるものの、必ずしもいつも同じスタッフが対応してくれるというわけにはいきません。施設の規模が大きくなれば、施設間でスタッフの移動もありますしね。

叔母は通算すると10年近く同じホームにいましたが、その間、ホーム長は3人、担当者は何人変わったか…、覚えていません。認知症が進んでからの叔母は担当のスタッフが変わることをどう思っていたのかは想像するしかありませんが、一からその関係を築かなくてはならないことは、家族にとっても大きなストレスになりました。

男性スタッフに恋心!? いくつになっても女性は女性

叔母は生涯独身でした。私にとっては、男性になんてこれっぽちも興味のない変わった叔母だと思っていました。もちろん、男性について話題にのぼったことも、家族から聞いたこともありませんでしたから。

しかし、ホームに入居してみると、男性スタッフが入浴補助に入ると恥ずかしがって嫌がりました。当時は認知症のごく初期段階で周りの人や状況もちゃんと把握できていたので、ごく当然のことだと受け止めていました。

認知症の叔母と老人ホームとvol4<男性スタッフが入浴介助!?>

しかし、認知症状が進むに連れて、男性スタッフに対する叔母の反応が変わってきました。

私が訪問しているときでも、お気に入りの男性スタッフが近くを通りかかると、そちらに気持ちがいくのでしょうか。「あなたはもう帰っていいわよ」と言うのです。

「寂しいから来てほしい」という叔母の電話に、忙しい仕事に融通をつけて来ているというのにと腹の立つことと言ったら。でも、これまで見たことのないような叔母の柔らかな、うっとりと男性スタッフを見ている叔母の表情に、「何言っているの?」という怒りの表情を引っ込めるしかありませんでした。

そして思わず、若い頃の叔母がどんな人を好きになって、どんな恋愛をしていたのだろうかなど、思いを巡らせました。

若い男性スタッフに対しての叔母のもしかしたら恋心にも似た気持ちは、唯一叔母に対する苛立ちから解放してくれた気もします。

とはいえ、もちろん、認知症状が進んだ叔母は、会ったり声をかけられたりすればポッとしてしまうような男性スタッフに対する思いが四六時中続いているわけではありません。また、担当してくれたスタッフはもちろん女性の方が多かったと言ってもいいくらいです。


老人ホームでのトラブルに対応するには?


でもやはり相性や叔母の好みもあるようで、「Aさんは好きだけれどBさんは嫌い」と言って電話をかけてきては泣くこともありました。実際にホームでの生活を四六時中見ているわけではありませんし、仕事中に電話をかけてくることもあったので、最初は叔母のわがままくらいにしか捉えていませんでした。

でも、叔母と話したあとホームに電話すると、ホーム長にはそうなった小さな原因に思い当たることが少なからずあるようでした。周りから見ると些細な出来事が泣いて嫌になるほどのことにもつながるのだと、今になればよくわかります。

長い老人ホームとの関わりのなかで、さまざまな家庭環境のいろいろな性格の人がいるなかで生活する集団という意味で、老人ホームはとても学校に似ているということを感じています。当然、そのなかで合う合わない、好き嫌いなどの感情もわくでしょうし、小さないざこざ、大きないざこざが起きることもあるでしょう。

しかし決定的に違うのは、学校の場合は帰ってきた子どもの様子や話から何か起これば気づけますが、毎日家に帰ることのない老人ホームなどの高齢者施設ではそれがわかりません。スタッフだけではなく、入居者同士のトラブルもあるはずです。でも、認知症状が進んだ人が起きたことを言語化するのは難しいはずです。

もちろん叔母がスタッフに対して暴言を吐いたり、認知症状が進んで噛みついたりしたということを後から聞かされて、びっくりしたり申し訳なく思ったりしたこともありました。

それでもやっぱり、やったやられた、喧嘩した、泣いたなどがあったときに言い合えるのは、施設との良好な関係、コミュニケーションを築く以外にないのかもしれません。

(ライター奏多映美)

※入居時点の情報であり、あくまでも個人の感想です。

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