<FPと考える>施設サービスの負担軽減制度、食費・居住費の補足給付とは?

<FPと考える>施設サービスの負担軽減制度、食費・居住費の補足給付とは?
連載タイトルPIC

介護体験や思いなど、さまざまな立場の人の介護にまつわるコラムをお届けします。

こんにちは。ファイナンシャルプランナーの前佛(ぜんぶつ)です。私は家計改善のアドバイスのほか、整理収納アドバイザー1級を取得し、暮らし全体の整え方もお伝えしています。介護カレンダーでは親の介護をはじめ、将来介護が必要になったときに役に立つ情報をお伝えしながら、介護にまつわる大切なことを皆さんと一緒に考えていきたいと思います。

介護保険施設(※)に入所すると、原則として食費と居住費は全額自己負担になります。けれども、経済状況によっては費用負担が厳しい人がいるかもしれません。そこで、住民税が非課税になる世帯に対し、施設サービスの食費・居住費の負担を軽減する制度が設けられています。今回は、施設サービスにおける食費や居住費が負担限度額までになる「補足給付」という制度について解説します。

(※)介護保険施設とは、介護保険サービスが利用できる居住型介護施設のこと。 特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護療養型医療施設、介護医療院がこれに該当します、

施設サービスの補足給付とは?

1カ月間の介護費用が高額になったとき、高額介護サービス費が利用できます。ただ、これは介護保険が適用になるものに限られるため、原則自己負担となる施設サービスの食費や居住費は対象外となっていました。けれども、住民税の非課税世帯に対し、施設サービスの食費と居住費の負担を軽減してくれる制度があります。その制度を「補足給付」といいます。

補足給付とは、低所得で住民税が非課税世帯の本人と配偶者(※配偶者が別世帯の場合も含む)が、介護保険サービスとして利用できる居住型の介護保険施設(特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院、介護療養型医療施設)に入所するとき、あるいはショートステイで利用するときの食費と居住費の負担を軽減してくれる制度です。所得や持っている預貯金等が一定額以下の場合、食費と居住費に負担限度額が設定され、それを超す分に対しては介護保険から「特定入所者介護サービス費」が給付されます。

補足給付を受けるには、施設入所時、あるいはショートステイ利用時に申請書を提出して、負担限度額認定を受ける必要があります。その際、年金収入額とその他の合計所得金額の合計および預貯金額を申告し、それに応じて負担限度額が決められます。

負担限度額認定は内容が見直され、2021年8月1日からは所得と預貯金等の要件が細かく設定されて、食費の自己負担限度額が変更になりました。今回は、補足給付による食費をご紹介します。

◇補足給付の利用要件とは?

・本人の住民税が非課税であること
・配偶者の住民税が非課税であること
・同一世帯に住民税課税者がいないこと
・年金収入等が一定額以下であること
・預貯金額が一定以下であること

出典:厚生労働省資料「介護保険施設における負担限度額が変わります」、東京都江東区「負担限度額認定(施設を利用した場合の居住費・食費の減額)をもとに筆者作成

補足給付の具体例

年金収入等とは、公的年金の収入金額にその他の合計所得金額(給与所得、事業所得、配当所得、不動産所得など公的年金以外の所得)を足したものをいいます。

ここで補足給付の事例をご紹介しておきますね。

たとえば夫婦2人世帯のうち、夫が特別養護老人ホームに入所することになった場合。

・夫婦ともに住民税は非課税
・夫の収入は公的年金のみ 年額120万円
・夫婦の預貯金は、1,400万円

この夫婦の利用者負担段階は、第3段階①になります。

夫の入所先での1日あたりの食費は、通常1,445円のところ、介護保険から補足給付が受けられるので、650円に減額されます。

利用者負担段階の判定となる預貯金に含まれるものとは?

預貯金に含まれるもの

・普通預金、定期預金
・有価証券(株式・国債・地方債・社債など)
・投資信託
・金・銀など購入先の口座残高で時価評価額が把握できる貴金属
・現金

預貯金に含まれないもの

・生命保険
・自動車
・腕時計
・時価評価額が把握しにくい貴金属
・絵画 
・骨董品 など

補足給付の負担限度額認定を申請するには、必要事項を記入した介護保険負担限度額認定申請書、申告する預貯金等の通帳の写しや口座残高の写しなどの必要書類を、役所の介護保険窓口へ持参もしくは郵送します(お住まいの自治体の方法に従ってください)。

補足給付を受けられない人向けの特例減額措置

補足給付を利用できるのは、住民税が非課税世帯の人に限られます。そのため、本人もしくは配偶者、同世帯の中に住民税が課税されている人がいると利用することができません。そのため、施設サービスの食費、居住費は全額自己負担となります。とはいえ、住民税が課税されていても、経済状況によっては施設サービス費の負担が厳しい人もいるのではないでしょうか。そのような人のために、施設サービスの食費、居住費には特例減額措置が設けられています。その特例減額措置は、以下の要件を満たしていれば利用することができます。

・2人以上の住民税課税世帯であること
・施設サービスの利用者負担段階が第4段階で、食費・居住費を負担していること
・世帯の年間収入から施設の利用者負担の見込額を差し引いた額が80万円以下であること
・世帯の預貯金等の合計が450万円以下であること

・日常生活のために必要な資産以外に、利用できる資産を持っていないこと

・介護保険料を滞納していないこと

この減額措置の対象となる場合、負担限度額は第3段階②の金額になります。また、これは介護保険施設に入所する場合に限り利用できるものなので、ショートステイでは利用できないので注意が必要です。

まとめ

本人と配偶者の住民税が非課税世帯の場合、介護保険施設に入所、もしくはショートステイを利用するときの食費と居住費は補足給付が受けられ、負担が軽減されます。また、住民税の課税世帯で補足給付の対象外になる人でも、一定の要件を満たせば食費と居住費の特例減額措置が受けられます。補足給付と特例減額措置は経済的な負担を軽減してくれる制度です。もし利用可能であれば忘れずに申請することをお勧めします。

<プロフィール>前佛 朋子(ぜんぶつ ともこ)
ファイナンシャルプランナー(CFP®認定者)/ 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 / 整理収納アドバイザー1級 / 自分史活用アドバイザー
『安心と心のゆとりのある暮らしができる人を増やしていく』という理念のもと、1人でも多くの人に安心できる暮らしと心の余裕を手に入れていただこうと、家計見直しやライフプランなどの相談業務を行う。ライフイベントに合わせて貯蓄や用途を分類するお金の整理を得意とする。また、離れて暮らす母の介護に関わった経験を活かし、遠距離介護などの相談も受ける。保険や金融商品を売らないファイナンシャルプランナーとして活動中。
ホームページ:家計コンサルティングZEN

オリジナルコラム

介護コラムの最新記事