<FPと考える>親だけじゃない!! どれくらいかかる? 自分の介護費用を準備するためのヒント

<FPと考える>親だけじゃない!! どれくらいかかる? 自分の介護費用を準備するためのヒント

こんにちは。ファイナンシャルプランナーの前佛(ぜんぶつ)です。私は家計改善のアドバイスのほか、整理収納アドバイザー1級を取得し、暮らし全体の整え方もお伝えしています。介護カレンダーでは親の介護をはじめ、将来介護が必要になったときに役に立つ情報をお伝えしながら、介護にまつわる大切なことを皆さんと一緒に考えていきたいと思います。

親だけでなく、自分の介護費用についてはなおさら、多くの人にとっての心配事ですね。実際にどれくらいの費用がかかるのかは予測がつきにくいのも事実です。そこで、ある調査結果をもとに、介護費用の平均額や費用が高くなる要因を調べてみました。また、介護費用を準備するためのヒントもあわせて紹介します。

■介護費用の平均はどれくらい

「介護費用はどれくらいかかるものなの?」。気になりますよね。そこで、生命保険文化センターが行なった「2021年度生命保険に関する全国実態調査」が公表した介護費用の調査結果を紹介します。
「過去3年間に家族や親族の介護経験がある人」の回答によると、介護費用の平均は次のようになっています。

【一時費用:平均74万円】

※一時費用とは、住宅改造や介護用ベッドの購入など、一時的にかかった費用のこと。

【月々の費用:平均8.3万円】

また、介護を始めてからの期間は平均61.1カ月(5年1カ月)という結果が出ています。仮に介護期間が5年とすると、その間の介護費用の平均は次のようになります。

 一時費用74万円+(月額費用8.3万円×12カ月×5年)=572万円

これはあくまでも介護費用の平均です。在宅介護と施設介護ではかかる費用が異なるため、介護の内容によっては572万円以上の費用が必要になる場合があるかもしれません。

介護費用が高くなる要因その1:要介護度

介護保険サービスを受ける際には要介護認定を受けます。要介護度が高くなると介護費用は高くなる傾向があります。生命保険文化センターの「2021年度生命保険に関する全国実態調査」では、要介護度別介護費用(月額)の平均は次のような結果が出ています。

要介護度別介護費用(月額)

出典:生命保険文化センター「2021年度生命保険に関する全国実態調査」

要介護1~5を見ると、要介護度が上がるにつれ、月額費用が高くなっていることがわかります。要介護3以上になると、生活のあらゆる場面で介助が必要になります。そのため利用するサービスが増えて月額費用が高くなるのです。

介護費用が高くなる要因その2:介護する場所

介護される方の状況や家庭環境などによって在宅介護もしくは施設介護を選択します。生命保険文化センターの「2021年度生命保険に関する全国実態調査」結果によると、在宅と施設の月額費用は次のように違っています。

○在宅介護の月額費用:平均4.8万円
○施設介護の月額費用:平均12.2万円

施設介護では施設の利用料がかかります。これは在宅介護にはない支出なので、施設介護の方が高くなります。筆者は実母と義母の介護経験がありますが、実母は在宅介護で1カ月につき約8万円の費用がかかっていました。しかし、義母は介護療養型医療施設に入っていたので、月額費用が約19万円もかかりました。在宅と施設では、かかる費用が大きく異なることがお分かりいただけたと思います。

介護費用が高くなる要因その3:所得による負担割合

通常、介護保険では利用するサービスでかかった費用のうち、1割を自己負担します。しかし、年金収入が多かったり、家賃収入など年金以外にも収入があったりする人など、所得が一定額以上を超えた人は、所得に応じて2割、3割と負担額が増えていきます。もちろん、介護保険サービスの負担割合が増えれば、その分介護費用は高くなります。

介護費用を準備するためのヒントに含まれるものとは?

介護は突然やってくるものです。元気だった親がケガをしてそのまま介護状態になるという話はよく聞きます。しかし、急に介護費用を工面するのは大変です。そうならないように、できれば早いうちから介護費用を含めた老後資金の準備をしておきたいですね。ここでは、まとまったお金の準備に適した方法をご紹介します。

まずは年金見込額を知る

介護費用は年金収入もしくは貯蓄から工面することになるので、年金の見込額を知っておくことはとても重要です。

20歳以上の人には、毎年、誕生月になると日本年金機構から「ねんきん定期便」が届きますね。50歳以上の人には65歳から受け取る年金の見込額が記載されています。50歳未満の人に記載されているのは今の時点での見込額なので、額が少なくて心配になるかもしれません。けれども、仕事を続けることで年金見込額は増えていきます。

年金見込額がわかれば、老後の生活費や介護費用としてどの程度お金が使えるのかがわかります。また、どれくらいの金額を貯蓄で補てんすればいいのか、資金計画を立てる際にも役立ちます。手元にねんきん定期便が届いたら、必ず確認しておいてくださいね。

iDeCo(イデコ)を利用する

iDeCo(個人型確定拠出年金)は私的年金制度で、月5,000円から始めることができます。掛金全額が所得控除になり、運用益は非課税、老齢給付金を受け取るときも税制優遇が受けられます。60歳まで引き出すことはできませんが、老後資金の準備には向いています。ただ、働き方によって掛金の限度額があることや手数料がかかることなど、iDeCoのしくみは事前に確認しておきたいものです。

つみたてNISAを利用する

つみたてNISAは、毎年40万円までを最大20年間非課税で投資できます。投資する金融商品は金融庁に届出のある投資信託で、販売手数料がかからず、コスト(信託報酬)も低めに設定されています。投資でリスクを軽減するコツは分散投資、長期投資、時間分散の三つです。つみたてNISAはこの三つのコツを取り入れた投資方法です。投資なので元本割れすることもありますが、20年の非課税期間を利用することでまとまった資金をつくることができます。

今回は、税制優遇の受けられる方法をご紹介しましたが、老後資金や介護費用の準備方法はこれだけではありません。定期預金や積立定期を利用したり、民間の介護保険を利用したりする方法もあります。大事なのは、無理なくお金を準備できる方法を選ぶことです。あなたにとって最適な方法で、介護費用を含めた老後資金の準備を進めてくださいね。

■まとめ

あくまでも調査結果ですが、平均的な介護費用は、一時費用74万円、月額費用は8.3万円ということがわかりました。ただ、要介護度や在宅介護か施設介護のどちらを選択するか、または介護保険の自己負担割合によって、かかる費用は増減します。とはいえ、今の時点でどれくらいの介護費用がかかるのかは予測できないものです。そこで、老後資金を準備する際は、介護費用も考慮して資金計画を立てることをおすすめします。

出典:生命保険文化センター「2021年度生命保険に関する全国実態調査」

<プロフィール>前佛 朋子(ぜんぶつ ともこ)
ファイナンシャルプランナー(CFP®認定者)/ 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 / 整理収納アドバイザー1級 / 自分史活用アドバイザー
『安心と心のゆとりのある暮らしができる人を増やしていく』という理念のもと、1人でも多くの人に安心できる暮らしと心の余裕を手に入れていただこうと、家計見直しやライフプランなどの相談業務を行う。ライフイベントに合わせて貯蓄や用途を分類するお金の整理を得意とする。また、離れて暮らす母の介護に関わった経験を活かし、遠距離介護などの相談も受ける。保険や金融商品を売らないファイナンシャルプランナーとして活動中。
ホームページ:家計コンサルティングZEN

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