<FPと考える>老親の生活を助けてくれる「日常生活自立支援事業」
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介護体験や思いなど、さまざまな立場の人の介護にまつわるコラムをお届けします。

こんにちは。ファイナンシャルプランナーの前佛(ぜんぶつ)です。私は家計改善のアドバイスのほか、整理収納アドバイザー1級を取得し、暮らし全体の整え方もお伝えしています。介護カレンダーでは親の介護をはじめ、将来介護が必要になったときに役に立つ情報をお伝えしながら、介護にまつわる大切なことを皆さんと一緒に考えていきたいと思います。

福祉サービスの1つに「日常生活自立支援事業」があります。これは、高齢者や障害を持っている人に対し、福祉サービスの利用手続きやお金の管理などをサポートするサービスです。生活支援員が日常生活の困りごとを支援してくれます。そこで今回は、日常生活自立支援事業の具体的なサービス内容や利用料の目安、利用するための手順をわかりやすくご紹介します。

■日常生活自立支援事業とは?

日常生活自立支援事業(旧名称は、地域福祉権利擁護事業)とは、判断能力が不十分で、福祉サービスの利用や行政手続き、お金の管理などに不安を感じている人を支援するための事業です。日常生活自立支援事業を実施するのは社会福祉協議会で、利用するときは社会福祉協議会と利用契約を結びます。契約が必要であるため、軽度の認知症や知的障害者、精神障害者など判断能力は不十分であっても、契約内容を理解できる人が対象となります。
また、利用相談は専門員が対応しますが、契約後に対応してくれるのは生活支援員で、定期的に訪問し、日常生活の困りごとをサポートしてくれます。

■日常生活自立支援事業のサービス内容は?

日常生活自立支援事業では、主に下記のような3つのサービスが提供されます。

【サービス内容:その1】福祉サービスの利用援助
福祉サービスに関する情報提供や利用相談を受け、サービス利用時または解約時の手続き、福祉サービス利用料の支払い手続き、苦情解決制度(福祉サービスの利用者からの苦情を適切に解決する制度)を利用する手続きを手伝ってくれます。

【サービス内容:その2】日常的金銭管理サービス
年金や福祉手当を受給するための手続き、税金や社会保険料、医療費、公共料金、家賃などの支払い手続きを手伝ってくれます。
また、日常生活費を預貯金から引き出したり、金融機関にお金を預けたりする際のサポートもしてくれます。

【サービス内容:その3】書類預かりサービス
預貯金の通帳や年金証書、保険証書、権利証、契約書類、実印、銀行印などの重要書類を預かってくれます。
ただし、自宅の鍵、貸金庫の鍵、遺言書、宝石や骨董品、有価証券などは預けることができません。
また、日常生活自立支援事業では、下記のようにサポートできないこともあるので注意が必要です。

 ・施設入所の保証人や身元引受人
 ・外出援助やヘルパーが行うような買い物支援
 ・利用者本人の自宅の処分や賃貸契約の解約
 ・確定申告 など

■日常生活自立支援事業で支払う利用料の目安は?

日常生活自立支援事業では、利用契約を結ぶ際の相談や支援計画の作成は無料です。ただし、利用契約の締結後、サービスを受ける際には利用料がかかります。その値段は支援を受ける社会福祉協議会によって異なるため、社会福祉協議会のホームページや日常生活自立支援事業のパンフレットなどで確認してください。

利用料の一例として、東京都社会福祉協議会の場合をご紹介します。
<東京都における日常生活自立支援事業(地域福祉権利擁護事業)の利用料>
・福祉サービスの利用援助:1回1時間まで1,500円
   ※1時間を超えたら、30分ごとに600円加算
・日常的金銭管理サービス(通帳などを預かる場合):1回1時間まで3,000円
   ※1時間を超えたら、30分ごとに600円加算
・書類預かりサービス:1カ月1,000円
上記料金のほか、生活支援員の交通費実費の負担が必要です。
※出典:東京都社会福祉協議会「地域福祉権利擁護事業パンフレット」
どの社会福祉協議会でも共通して、生活保護を受けている人はサービスの利用料が無料になります。

■日常生活自立支援事業を利用するにはどうしたらいい?

日常生活自立支援事業のサービスを利用したいときは、まず最寄りの社会福祉協議会に相談します。

利用開始までの流れは以下の通りです。
(1)住んでいる地域の社会福祉協議会へ相談
(2)専門員の訪問による面談と調査、本人の意思確認と支援計画の作成
(3)利用契約の締結
(4)サービスの利用開始

専門員の訪問時には、利用者本人の利用意思を確認してヒアリングを行い、支援計画を立てます。その後、医師や弁護士、福祉の専門家による契約締結審査会で審査を行ったうえで利用を決定します。審査に通れば、社会福祉協議会と利用契約を結びます。
利用契約を結んでからは、生活支援員が定期的に自宅を訪問し、作成した支援計画にもとづいてサービスが提供されます。

■まとめ

日常生活自立支援事業は、1人で行政手続きをしたり、お金の管理をしたりするのが不安な高齢者や障害者を支援するサービスです。社会福祉協議会の生活支援員が定期的に訪問して、利用者の困りごとをサポートします。受けられるサービスは、福祉サービスの利用援助・日常的金銭管理サービス・書類預かりサービスの3つです。利用したいときは、まず社会福祉協議会に相談し、利用が決まれば社会福祉協議会と契約を結びます。離れて暮らす親が高齢で、お金の管理などに不安を感じているならば、日常生活自立支援事業を活用して、安心して生活できる環境を作るとよいかもしれません。

<プロフィール>前佛 朋子(ぜんぶつ ともこ)
ファイナンシャルプランナー(CFP®認定者)/ 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 / 整理収納アドバイザー1級 / 自分史活用アドバイザー
『安心と心のゆとりのある暮らしができる人を増やしていく』という理念のもと、1人でも多くの人に安心できる暮らしと心の余裕を手に入れていただこうと、家計見直しやライフプランなどの相談業務を行う。ライフイベントに合わせて貯蓄や用途を分類するお金の整理を得意とする。また、離れて暮らす母の介護に関わった経験を活かし、遠距離介護などの相談も受ける。保険や金融商品を売らないファイナンシャルプランナーとして活動中。
ホームページ:家計コンサルティングZEN

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