ひとりでも困らない!「公的施設」の種類と特徴【老人ホームの選び方 vol5】
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千葉老人ホーム・介護施設紹介所リーブス所長、老人ホームアドバイザーである石田治男さんが「老人ホーム」を探す際の考え方や欠かせない知識、実践的なテクニックを教えてくれました。また、家族や親戚などを老人介護施設へ入居させた経験がある方の体験談も紹介します。

こんにちは! 千葉老人ホーム・介護施設紹介所リーブス所長の石田です。

前回は “老人ホーム希望条件の整理方法”について説明しました。

ひとりでも困らない!「老人ホーム希望条件の整理方法」【老人ホームの選び方 vol4】(介護カレンダー)

希望条件の整理ができたら、いよいよ具体的に老人ホームを探す段階です。とはいえ、やみくもに一軒一軒問い合わせをしていては時間と労力がかかりすぎます。

老人ホームにはたくさんの種類があり、施設の種類によって入居条件や目的、体制などが違います。大きく分けると、社会福祉法人や医療法人などが運営する「公的施設」と民間企業が運営している「民間施設」の二つに分けられます。

「公的施設」は国の補助金を受けて設立されていることから、「民間施設」に比べると費用が安く抑えられるという利点があります。一方で「民間施設」は、公的施設よりも費用は割高になりますが、生活を援助するための幅広いサービスを受けられるのが特徴です。

種類別の特徴を理解し、希望条件に合う種類に絞ることで、老人ホーム探しを効率的にしましょう。

今回は『公的施設』について解説します。

「公的施設」には主に自立状態の方を対象としたケアハウス(軽費老人ホーム)と、主に要介護状態の方を対象とした介護保険施設と呼ばれている「特別養護老人ホーム(特養)」、「介護老人保健施設(老健)」、「介護療養型医療施設(療養病床)」の4つがあります。

1.ケアハウス(軽費老人ホーム) 

「ケアハウス」には、「一般(自立)型」と「介護型」の2種類があります。「介護型」は非常に数が少なく、「ケアハウス」というと通常「一般(自立)型」を指すことが多いようです。

自立型の「ケアハウス」は、「60歳以上の高齢者で、自立した生活に不安があり、ご家族による援助を受けることが難しい方などが対象」と、ホームのパンフレット等に書かれています。

いまひとつ、対象がわかりづらいので、実際にホームに直接尋ねてみると、「3食とも時間通りにひとりで食堂に来られる」「身の回りのことを概ね自分でできる」などが基本的な条件のようです。つまり、「認知症のケアや介護が必要なく自立している」方が対象となります。

「ケアハウス」では、ホームスタッフによる食事の提供や入浴の準備、緊急時対応、生活相談などのサービスは受けられますが、食事・入浴・排せつ介助などの身体介護サービスはありません。

もし「ケアハウス」に入居後、介護が必要になった場合は、外部の通所介護や訪問介護などの事業者と別途契約して、介護サービスを受けることになります。

「介護型」に比べると初期費用や利用料を安く抑えられますが、利用できる介護サービスに限りがあるため、ひとりで食堂に行けなけなくなるなど要介護度が高くなると、退去しなければならないケースも出てきます。

「介護型」は、原則として「要介護度1以上かつ65歳以上の高齢者」が対象となり、「自立型」で受けられるサービスに加えて、24時間介護職員が常駐し、食事・入浴・排せつ介助などの身体介護サービスもホーム内で受けられます。

「自立型」に比べると初期費用や利用料が高くなりますが、要介護度が高くなっても住み続けることができます。

軽費老人ホーム(ケアハウス)とは?(介護カレンダー)

2. 特別養護老人ホーム

「特別養護老人ホーム(通称:特養)」は終身で入居できる施設で、対象となる方は、原則「要介護度3以上」です。

ケアハウスの「介護型」と同様に、24時間介護職員が常駐し、食事・入浴・排せつ介助などの身体介護のサービスを受けられます。

看護師も日中は常勤していますので、医療ケアが必要な方も入所できます。ただし、夜間配置の義務はないため日中のみの勤務体制のホームが多く、夜間も医療ケアを必要とする方は入居できないホームがほとんどです。

「特養」の部屋のタイプには、ユニット型個室となっている「新型」と従来型個室・多床室からなる「旧型」がありますが、現在新しく建てられている施設の部屋タイプは原則として「新型」です。

月額費用は「新型」で15万円前後、「旧型」は10万円前後で、初期費用はかかりません。

「特養」は他の施設と比べ費用が安く、終身で入居できるホームのため人気があり、待機者数が数十人から数百人いるホームも多く、一般的には入所まで数カ月から数年かかるとも言われています。

ただ実際には、入居の順番は申し込み順ではないので、緊急度の高い方や、介護度が要介護4・5の方であれば、申し込みから2、3か月で入居できるようなケースもあります。

また、要介護3以上が入居対象といっても、実際の入居者の割合は要介護4・5の重度な方が多いので、他の入居者とのコミュニケーションを重視する場合は入居を控えた方が良いでしょう。

特別養護老人ホームとは(介護カレンダー)

3. 介護老人保健施設(老健)

「介護老人保健施設(通称:老健)」は、病状が安定している方が一定期間集中してリハビリを行い、在宅復帰を目指す施設で、入居対象者は、「要介護1以上」になります。

「特養」と違い「老健」には医師が常勤していますし、看護師が24時間常駐している施設も少なくありません。さらに理学療法士や作業療法士等、リハビリの専門家によるリハビリテーションを受けることができます。

在宅復帰を目標としていますので、原則として3~6カ月の期間限定での入居になります。ただ、実際は「リハビリがうまく進まずまだ自宅に戻れるまで回復していない」、「これ以上回復は見込めないが、民間施設の費用は高くて払えない」などの理由から、数年単位の長期間に及んで入居しているケースも見受けられます。

逆に、「老健」の入所を希望し、要介護1以上の認定が下りていても、医療の面を理由に入所できないケースもあります。

「老健」は、入所サービスに医療も含まれるため、施設管理者である医師が主治医となり、薬を処方し病状の管理をしてくれます。しかし、介護保険法により、他の施設や在宅で生活する場合と大きく異なり、一部の例外を除き、医療保険は使えません。

医療にかかる費用は、一部の例外を除き老健の負担となります。そう聞くと入居者にとってのメリットと受け取られがちです、入所時に認知症改善薬などの高額な薬を服薬していたり、費用が高い専門的な検査が定期的に必要だったりする方は、「老健」への入所自体を断られてしまう可能性があります。

介護老人保健施設とは(介護カレンダー)

4. 介護医療院

「介護医療院」は、長期的な医療と介護のニーズを併せ持つ高齢者を対象とし、「日常的な医学管理」や「看取りやターミナルケア」等の医療機能と「生活施設」としての機能とを兼ね備えた施設です。

2018年4月、「介護療養型医療施設(介護療養病床)」の受け皿として新たに創設されました。「介護療養型医療施設」は、かつての老人病院とも呼ばれていました。この老人病院では長期入院している高齢の患者のうち、「家族での介護が難しく、やむなく入院させている状態」、いわゆる「社会的入院」が問題視されました。

病院から「社会的入院」をなくすため、長年の紆余曲折を経て、最終的に介護療養病床を2023年度末までに廃止し、その受け皿として創設されたのが「介護医療院」です。

「介護療養病床」にしても「介護医療院」にしても、他の施設と比べ、医師や看護師が手厚く配置された介護施設というよりは医療施設です。そのため必要に応じて通常は病院のソーシャルワーカーや看護師などが探してくれるケースがほとんどです。

「介護医療院」は、高度な医療ケアなどが必要なため、「特養」や「老健」、「民間施設」では対応しきれない方が入所する施設とだけ覚えておけば良いと思います。

介護医療院とは(介護カレンダー)

5. まとめ

「公的施設」だけでも種類があり大変かもしれませんが、実際に施設を探す際に困らないためには、予め種別やその内容について理解しておくことをお勧めします。

次回は、「民間施設」について解説する予定です。

記事提供:石田治男
千葉老人ホーム・介護施設紹介所リーブス 所長
入居相談員 / 老人ホームアドバイザー

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