ひとりでも困らない!「老人ホーム希望条件の整理方法」【老人ホームの選び方 vol4】
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千葉老人ホーム・介護施設紹介所リーブス所長、老人ホームアドバイザーである石田治男さんが「老人ホーム」を探す際の考え方や欠かせない知識、実践的なテクニックを教えてくれました。また、家族や親戚などを老人介護施設へ入居させた経験がある方の体験談も紹介します。

こんにちは! 千葉老人ホーム・介護施設紹介所リーブス所長の石田です。

前回は老人ホームを探す最初のステップとして、“自分より詳しいプロにとにもかくにも相談し、一緒に希望条件を整理”することを説明しました。

老人ホーム探しの相談先「病院のソーシャルワーカー」「老人ホーム紹介センター」とは?(介護カレンダー)

自分より詳しいプロに相談し、希望条件を整理するところから手伝ってもらえると良いのですが、老人ホーム選びはあくまで自己責任。今回はひとりでも困らないよう『老人ホーム希望条件の整理方法』についてお話します。

1.なぜ希望条件を整理しなくてはいけないのか? 

普段、私が所属している老人ホーム紹介センターに相談に来られるお客さまのなかにはご自身でいくつかの老人ホームを見学されている方もいらっしゃいます。

私が「すでに見学された〇〇ホームはいかがでしたか?」と質問すると、「〇〇ホームは看護師がいなくてインスリン注射が対応できないと言われました」や、「〇〇ホームは料金が高すぎて全然払えなくて……」等、見学はしたものの、さまざまな理由でそもそも入所できるようなホームではなかったと答える方も少なくありません。

将来に備えて勉強のために老人ホームを見学するのであれば良いのですが、多くは、病院の退院期日が迫っている、ご自宅で介護者が疲弊しきっている等、早急に入れる老人ホームを探さなくてはいけないケースがほとんどです。

急いで老人ホームを探しているのに、入所することができないホームを見学することは大変な時間のロスになります。しっかりと希望条件を整理したうえで、入所できそうなホームに絞って効率的に見学することが大切です。

また、老人ホーム入所後も、入所前に希望条件を明確にしていなかったがために起こるトラブルも多いので、希望条件をしっかり整理することは非常に大切なのです。

2. 3大希望条件

希望条件を整理するポイントは「身体状況」「予算」「エリア」の三つ。それぞれに分けて整理してみましょう。

■身体状況

提供される介護・医療サービスは施設毎に違うので、入所する方の身体状況をしっかり把握しましょう。身体状況というと漠然としてわかりづらいので、さらに『必要な生活支援・介護』と、『認知症の程度』『必要な医療行為』の三つに分けて整理します。

  • 『必要な生活支援・介護』

食事の支度・買い物・掃除・洗濯等の生活支援がどの程度必要かを把握します。合わせて歩行・食事・排泄・入浴等にどの程度介護が必要かを把握します。例えば、“自分ひとりで食事はできるが、支度はできない”、“膝が悪く転倒することが多いので買い物や掃除・洗濯などの生活支援が必要で、歩く、排泄、入浴にも介助者が必要”、という感じです。必要な生活支援・介護量によってホームに支払う費用が変わる場合もありますので、身体状況をできる限り詳細に把握しましょう。

  • 『認知症の程度』

認知症の対応力は施設によって違いますので、具体的な症状、認知症の診断名などを把握します。例えば、“病院にかかる程ではないが、最近同じことを何度も繰り返し言うようになってきた”、“レビー小体型の認知症の診断がついており幻視や大声を出してしまうときがある”などです。

  • 『必要な医療行為』

どのような行為が医療行為に該当するのか一般の方には判断が難しいのですが、ここでいう「必要な医療行為」は、医師や看護師にしかできない行為を指します。例えば、“インスリン注射やたん吸引を看護師にしてもらっている”、“定期的に透析で病院に通院している”、等です。

※介護職員は、医師や看護師の指示があっても、法律上、医療行為を行うことはできません。

老人ホームを探そうと思った際に、最初にすること(介護カレンダー)

■予算

老人ホームの費用の相場を知ることで、予算をいくらに設定すれば良いかが想定しやすくなります。

弊社に相談に来られる方の8割くらいは「年金の範囲内」とおっしゃいます。しかし残念ながら、私が普段仕事をしている千葉県を含めた首都圏の老人ホームのうち、年金で入所できる老人ホームは1・2割程度しかありません。

日本の厚生年金の平均受給額は約15万円程度(※1)ですが、月額15万円で費用が全部収まるホームはほとんどないというのが現状です。

ですから、費用に関しては年金だけでなく、預貯金、生命保険・不動産・株などの収入、家族から援助が見込めるかまで含めて、最大いくらホームの費用として使うことができるかを計算し予算を立てます。

※1 令和元年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況(厚生労働省)

■エリア

どの地域の施設を選ぶかは、入居する方の状況によります。

例えば、認知症もなくひとりで外出できるなら、周辺環境を重視する必要があります。

施設周辺に、コンビニやスーパー等の施設があるかどうか、駅から近いかどうか等、不動産の物件探しと同じような基準で考えます。

また、入居する方に認知症があったり、介護が必要でひとりでの外出が難しかったりする場合は、ご家族や友人が訪ねやすい立地かどうかも重要です。

特に身元引受人になる方は、自宅から遠い施設を選んでしまうと、急変時にホームや救急搬送先の病院にかけつけるのが大変になってしまいますし、普段面会に行く足も遠のいてしまいます。おおよそ30分から1時間以内に通えるホームを目安としましょう。

また、通常時と違い今のコロナ過では、ほとんどのホームで面会制限や外出制限を実施していますので、家からすぐ近くにあるホームでも、面会ができるか外出ができるか等も考慮する必要があります。

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3. 希望条件に優先順位を付けよう!(!重要!)

以上の3大希望条件にプラスアルファ、食事がおいしいホーム、タバコを吸えるホーム、レクリエーションで〇〇を行っているホーム等、趣味趣向があれば希望条件に追加します。

希望条件の優先順位を付けるとき、大半の方が『予算』や『エリア』を1番にしがちなのですが、まず考えていただきたいのは『身体状況』です。

予算やエリアが希望条件に合っていても、身体状況に合った介護や医療サービスを行っていないホームだと、見学をしても入居を断られてしまう可能性が高くなります。また、入居できたとしてもすぐにホームから退去勧告を出されたり、予期していない費用がかさんだりと、後々のトラブルの原因にもつながります。

また、身体状況は特に問題ないが、趣味趣向のこだわりが強いという方の場合は、ホームでの生活に嫌気がさして自分から退去したくなるケースも多いので、趣味趣向が満たされるホームが希望条件の1番になります。

次回は、「老人ホームの種類」についてお話します。

記事提供:石田治男
千葉老人ホーム・介護施設紹介所リーブス 所長
入居相談員 / 老人ホームアドバイザー

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