さまざまな記憶が薄れていくなか施設を自宅だと思い穏やかに生活していた<特別養護老人ホーム>【介護施設探しの体験談】

さまざまな記憶が薄れていくなか施設を自宅だと思い穏やかに生活していた<特別養護老人ホーム>【介護施設探しの体験談】
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千葉老人ホーム・介護施設紹介所リーブス所長、老人ホームアドバイザーである石田治男さんが「老人ホーム」を探す際の考え方や欠かせない知識、実践的なテクニックを教えてくれました。また、家族や親戚などを老人介護施設へ入居させた経験がある方の体験談も紹介します。

認知症が進み、さまざまな記憶が薄れていくなかで、叔父さまは特養に入居したあとも、亡くなった家族と自宅で暮らしていると思っていたそうです。いろいろな問題はあったにせよ、その穏やかな姿は、家族にとって救いだったと、M.H.さんは話します。

さまざまな記憶が薄れていくなか施設を自宅だと思い穏やかに生活していた<特別養護老人ホーム>【介護施設探しの体験談】

【体験者プロフィール】
<入居者>叔父
<施設種類>特別養護老人ホーム
<居住地域>宮城県
<入居年齢>70代
<介護度>要介護2
<入居期間>2017年1月~2019年11月
<話を聞いたかた>姪

※ 体験談は、利用者の入居時点の情報であり、あくまでも個人の感想です。

入居者との関係

叔父です。

入居を決めた時期と理由

同居していた娘は精神障害があったこともあり、介護の知識もなく、叔父のおむつの交換頻度や食事などに配慮できる状態ではありませんでした。何より、叔父の認知症が進んでいることに気づいていませんした。

叔父がほぼ寝たきり、入浴やトイレもままならない状態となったところで、ようやくヘルパーさんを依頼。「他の親族に相談したら?」と促され、私たちも叔父の現状を把握しました。

ヘルパーさんはケースワーカーなどにも相談、施設への入居を勧めてくれたのですが、娘がそれを拒み、結果として入居までに2年かかってしまいました。

その間に叔父の認知症が進み、家族の名前も忘れてしまっていました。

施設の探し方

初めは親族で探そうとしましたが、ショートステイ先しか見つかりませんでした。また、親族の間で意見が合わなかったこともあり、一時施設探しも中断となりました。

その後、介護施設の担当だったケースワーカーに相談、親族や娘に代って施設を探してもらいました。実は親族の一人が近隣の介護施設に勤めていたため、そこを希望したのですが、空きがありませんでした。実際に空きのある施設といえば、遠方ばかりでした。

希望していた施設にようやく空きが出た頃には、叔父の入所を拒んでいた娘をなんとか説得することが出来ていたため、無事入居することができました。

入居の手続き

叔父は、頚椎の障がいで外科に入院して間もなく認知症を発症しました。

「物を取られた」などという妄想や物忘れが激しくなり、まるで亡くなった家族も生きているかのように生活していました。

また、自宅での入浴も困難で移動入浴サービスを利用していました。
次第に食事もとらなくなり、さらにはトイレにも行かれず、寝たきり状態になりました。

そんななか、娘のために来てくれていたホームヘルパーさんがその状況を見かねて介入、叔父のショートステイの利用に至ります。

ヘルパーさんが私たち親族とケースワーカーに相談してくれたことで、娘が叔父の充分な介護ができないことがわかり、特別養護老人ホームへ入所することができました。

入居して良かったこと

叔父はもともと無口で座ったままじっとしているような人でしたから、入所してもスタッフに言われた場所でじっとしていることが多く、あまり心配ありませんでした。

施設は段差もなく転ぶこともありませんでしたし、食事の面でも配慮されているので、自宅にいるときより元気そうに見えました。

さまざまな記憶を失っていた叔父は、施設を自宅、死んだ祖母や兄弟が生きていると思い込んで生活していたので、穏やかそうで、私たちにとってはそれが救いでした。

入居して大変だったこと

叔父の場合は、「〇〇が食べたい」「こういう服が着たい」「〇〇が欲しい」などの要求は全くなかったので、面会に行く際も精神的にも経済的にも負担はありませんでした。

大変だったというか、施設に迷惑をかけてしまったのは、障害のある娘でした。

毎日のように面会に通い付き添っていたのですが、叔父に缶コーヒーを何本も飲ませたり、おにぎりを食べさせたりもしていたようです。

また、他の入所者さんの部屋に行って長居するなど、迷惑をかけていたと思います。

入居を検討しているかたへのアドバイス

介護施設によっては、家族が不安を感じるようなこともあるかもしれません。

それでも、家族が大変な介護から抜け出すために、また介護される側が快適に暮らすためには、施設へ入所させるという勇気や決断が必要だと思います。

家族の面会や差し入れを楽しみにしている入所者も少なくないようです。孫に会いたい、自宅に戻りたいなど全ての願いは聞けなくても、その要望を少しでも叶えてあげられればとても喜んでくれると思います。

最近は、日当たりのいい開放的な介護施設も増えているようですから、入居を検討する際には、下見に行ってみることをぜひお勧めします。

<参考>入居時にかかった費用と月々かかる費用

■負担段階:第4段階(課税世帯)、要介護2、従来型個室利用
・月額利用料:96,570円(1日あたり3,219円)
※介護費、居住費、食費等

編集部調べ

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