◆ 新たな人口推計のインパクト
4月26日、厚生労働省から「日本の将来推計人口(令和5年推計)」が発表されました。
私は介護保険制度の今後を考えるとき、かねてから85歳以上の人口の推移に注目していました。それは、その年代以上の高齢者の要介護認定率が約6割に達するからです。
そのうえで、かねてから私は、2017年に発表されていた従来の推計データをもとに、「介護保険制度にとっての『2040年問題』は『85歳以上の人口のみが増え続けること』である」「2040年が85歳以上人口のピークであり、そこを乗り越えられるか否かを検討しよう」と主張してきました。
しかし、今回の推計データからは、こうした私の主張が少し誤っていることが明らかになりました。それを図3に示します。この図は、2020年の人口を100として、年齢階層別の増減を指数で表したものです。
これをみると、2070年に向かって、ほとんどの年代の人口が減少局面にある一方、85歳以上の人口は2040年にひとまずピークを迎えた後に再び増加し、2065年にピークを迎えることが分かります。75〜84歳の人口は横ばいから漸減に転じ、65〜74歳の前期高齢者は漸減が続きます。
要介護認定率が6割程度と高い85歳以上の人口が増加し続けるということは、介護保険制度の財源や人材の確保が一層必要になっていくということです。しかし、現役世代の人口や前期高齢者の人口が減少するということは、それらの確保が一層困難になることを意味します。
推計データは、2065年から2070年にかけて、85歳以上の人口は現在の約1.9倍になると同時に、15〜65歳の生産年齢人口は現在よりもおよそ4割減少することを示しています。この時期の介護保険制度は、どのようにして運営することができるのでしょうか。私は特にこのことに大きな懸念を抱いています。
人口減少、または生産年齢人口の減少は、社会保障の元手となる税や保険料などの確保、すなわち「所得の再分配」が難しくなることにもつながります。
◆ 介護保険制度の行方
今回の推計データから考えると、現行のシステムのままでは、中・長期的に介護保険制度が維持できない、そして介護人材確保が困難になることが明らかだと言ってよいでしょう。
つまり、現行の財政負担のシステムを続ける限り、給付の見直し・縮小や利用者負担増は必至です。なにより、介護人材の確保はどのような方策を使っても困難になっていくことは間違いありません。
この意味で、今後の介護保険制度は一層厳しい局面を迎えると同時に、国民負担のあり方が問われなければならないものと考えられます。
提供元:介護のニュースサイトJoint