私が介護カレンダーの編集をしていると友達に話した際、「『老人ホーム』の「老人」って何歳くらいの人?」と聞かれたことがありました。確かに……。多くの有料老人ホームの入居年齢は、原則として60歳〜65歳に設定されています。でも周りを見渡してみると、65歳の方々は老人というイメージからはほど遠い人ばかりです。
そもそも有料老人ホームは、「老人福祉法」に基づいているのですが、この「老人福祉法」が制定されたのは昭和38(1968)年のこと。その3年前、昭和35(1965)年の日本人の平均寿命は男性65.32歳、女性が70.19 歳でしたから、そのくらいの年齢の人、「老人」が入居する施設、「老人ホーム」と名付けられたのかもしれません。
しかし、それからおよそ50年の月日が流れ、令和元(2019)年の平均寿命は男性は81.41歳、女性が87.45歳。つまり「老人福祉法」が制定された頃と比べると、15歳も平均寿命が延びたことになります。60〜65歳の人が入居可能とされている今、「老人ホーム」というネーミングはそぐわないような気もします。
少し古い資料になりますが、社団法人全国有料老人ホーム協会の「平成24年度 制度改正後の有料老人ホームに関する実態調査及び 契約等に関する調査研究」によれば、介護付き有料老人ホーム、住宅型有料老人ホーム共に、入居者の平均年齢のボリュームゾーンは、84~86 歳未満が介護付き37.8%、住宅型22.3%、また民間の介護付き有料老人ホームの平均入居期間は3年3カ月、住宅型は約2年ということを考えても、実際に入居する年齢も80歳前後と考えられそうです。
全国の 60 歳以上の男女 6,000 人を対象にした「平成26年度 高齢者の日常生活に関する意識調査」では、「何歳ごろまで収入を伴う仕事をしたいか」という設問に対し「働けるうちはいつまでも」と回答した人が28.9%、「65歳くらいまで」「70歳くらいまで」が共に 16.6%と、まだまだ人生に意欲的である60代、70代の方が多いことがうかがえます。
介護施設の種類(介護カレンダー)
最近は、サービス付き高齢者向け住宅やシニアマンション、シルバーハウジングなど、名前に「老人」と付かない施設も増えています。60〜65歳の「老人」とはいえない人が入居するホームを「老人」という名称でひとくくりにする時代は終わったのかもしれませんね。
(介護カレンダー編集部)
参照:
平均寿命更新、女性87.45歳 男性81.41歳(日本経済新聞)
平均寿命の年次推移(厚生労働省)