介護事業の新設法人が増加 都市部の市場拡大を睨み参入も 東京商工リサーチ

介護事業の新設法人が増加 都市部の市場拡大を睨み参入も 東京商工リサーチ
《 東京の遠望 》
《 東京の遠望 》

昨年に新設された介護事業者の法人数は2746社で、前年から10.3%増加した − 。東京商工リサーチが2021年6月17日に公表した調査レポートでは、そうした実態が明らかにされている。

新設法人数はコロナ禍もあって6月まで前年を下回っていたが、7月以降は一転して増加。2年連続で数字が伸びる結果となった。

2020年「老人福祉・介護事業者」新設法人調査

経営環境の厳しさは増しているものの、都市部を中心に介護ニーズはこれから更に高まっていく。撤退や倒産に追い込まれてしまう事業者がいる一方で、今後の市場拡大を見込んで新たに参入してくるところもまた少なくない。

新設法人数の推移は以下の通り。2015年度の介護報酬の大幅減、深刻な人手不足などを背景に低下傾向が続いてきたが、プラス改定のあった2018年度に底を打った。いわゆる「科学的介護」の方向性に将来性があると睨む事業者もいる。

昨年の新設法人数の増加には、コロナ禍で介護サービスの意義が再確認されたことも影響を与えたかもしれない。多くの事業者が打撃を受けた一方で、高齢者の自立支援・重度化防止などの重要性が改めて強く意識されるようになった経緯がある。新設法人にヒアリングした東京商工リサーチは、次のように話した事業者がいたと報告している。

「倒産した事業者に代わって地域の介護サービスを維持するために開業した」

昨年の新設法人数をサービスごとにみると、「訪問介護」が前年比9.5%増の2216社と全体の8割超を占めている。デイサービスなどの「通所・短期入所」が374社で2番目に多い。こちらは前年比37.5%増と顕著な伸びをみせた。有料老人ホームやグループホームなどは前年より少なかった。

都道府県別ではやはり、これから高齢化が更に加速する都市部が目立つ。多い順で大阪府、東京都、愛知県、兵庫県、神奈川県となっている。

東京商工リサーチは、「介護市場の根強さと地域支援の底力を感じる。今年度の介護報酬のプラス改定も追い風となり、今後も介護事業者の新設が見込まれる」と分析。経営に行き詰まる事業者の多さや介護サービスの重要性などを勘案し、「新設法人の成長を促す支援に加えて、業界全体の待遇改善や経営基盤の底上げが急務」と指摘している。

情報提供元:介護のニュースサイトJoint

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