20代から80代までさまざまな年代の介護職員が元気に働く高齢者複合施設「サンホームみかづき」(兵庫県)【編集部ピックアップ施設_vol12】

20代から80代までさまざまな年代の介護職員が元気に働く高齢者複合施設「サンホームみかづき」(兵庫県)【編集部ピックアップ施設_vol12】
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介護カレンダー編集部がネット上で探してきた特色ある高齢者向け施設や工夫を凝らしたさまざまな取り組みをご紹 介します。

介護カレンダー編集部がネット上で探してきた特色ある高齢者向け施設や工夫を凝らしたさまざまな取り組みをご紹介する<編集部ピックアップ施設>。今回は87歳の介護職員がイキイキと働く兵庫県佐用郡の高齢者複合施設「サンホームみかづき」を紹介します。

「介護は優しさ」をモットーに今日も元気に働く「サンホームみかづき」の介護職員・明尾幸子さん


兵庫県佐用郡佐用町。全人口のうち65歳以上が占める高齢化率は43.7%(2022年2月1日現在)と兵庫県トップとなっています。その佐用町に1994年4月に開設された高齢者複合施設「サンホームみかづき」。動物介在活動やおむつゼロ運動などに積極的に取り組み多方面から評価されていますが、特筆すべきはこの施設で働く職員の年齢層。146名のうち、60代が28名、70代が17名、80代2名の職員が毎日元気に働いています。そして皆が、「将来自分がお世話になりたい施設にしよう」と口にしているそうです。高齢者がイキイキ働いているだけでなく、自分が入りたいという施設の秘密を探るべく、20代、30代と最高齢87歳の職員に話を聞きました。

<お話を聞いたかた>

●山本勝也さん(52歳)<サンホームみかづき 統轄施設長>
●明尾幸子さん(87歳)<特別養護老人ホーム サンホームみかづき 介護職)
●三浦菜緒さん(30歳)<特別養護老人ホーム サンホームみかづき 介護副主任>
●越乢未季さん(26歳)<特別養護老人ホーム サンホームみかづき 介護副主任>

要介護度が進んでも顔見知りの職員や看護職員が対応するから安心

山本(以下敬称略):当施設は、敷地内にデイサービスをはじめとする在宅サービスから入所サービスである特別養護老人ホームまでさまざまな10の事業所があるので、利用されるかたの心身の状態の変化に応じたサービスを提供することができます。

最近では、特別養護老人ホームで、看取りを希望されるかたも増えています。一人のご利用者様が各事業所での利用を通じて長く生活されていますので、顔見知りの職員やお身体の状況を理解している看護職員が支援できることが「サンホームみかづき」の強みたど思います。

――― 入所されている方だけでなく、職員の方も長く働かれているということでしょうか?

明尾:オープンからずっとですから、丸28年、29年目になりました。

越乢:私は今年で9年目になります。

三浦:私は8年目です。

お話を聞いた越乢さん(左)と三浦さん(右)。87歳の明尾さんがロールモデル。

山本:20年になる私よりも長く働いている職員が10名位いるんですよ。介護の仕事は離職率が高く、一般的に20%を超えるといわれています。そのなかにあって、ありがたいことに私どもの施設は6%に留まっています。女性が多い職場ですが、出産を機に辞めるのではなく、それまでのキャリアを活かした働き方を上司と相談し、復帰に向けて支援していますので、同僚の理解のもと、産休後も安心して復帰できることも長く働く人が多い要因なのかなと思っています。

――― 職員さんが長く働かれている施設は、利用している人はもちろん、家族も安心できますね。山本さんは幅広い年代の職員さんが一緒に働く姿をどうご覧になっていますか?

会議で話す山本さん。穏やかな人柄は職員たちの信頼を集めています。

山本:施設の特性なのでしょうか。10代の職員が歳の離れた60代、70代、80代の職員と話しにくそうには見えません。どちらかといえば、何でも話しやすい雰囲気があると感じています。

一方で、馴れ合いにだけはならないようにと、お互いの距離感が大切であることも会議で話しています。話しやすい雰囲気はとても大切ですが、行き過ぎると仕事でなくなってしまう危険性があると思うんです。一定の距離感はもちながら、今の雰囲気を続けていきたいですね。

利用者からも職員からも信頼される87歳の介護職員。その原動力は?

――― 87歳の今も介護職員として働くその原動力はどこにあるのでしょうか?

明尾:以前、研修で教えていただいた「介護は優しさ」という言葉を胸に置いて、毎日仕事しています。若い人に何か教えるときも優しく言うようにしています。歳をとった分だけ、若い人に優しさをもって接しないと。毎日そう言う気持ちでがんばっていますよ。

87歳明尾さんの丁寧な仕事ぶりは、若い職員の手本でもあります。

――― 自分の親よりも年上の明尾さんですが、若いお二人から見て、その仕事ぶり、また見習いたいところはありますか?

三浦:この施設で働き出して8年目になりますが、今でも明尾さんは洗濯物のたたみ方やシーツの換え方をきっちり教えてくれます。何をするときも私にはない細やかさがあるんですね。私も明尾さんのようにいつまでも元気で働きたいなと思っています。

越乢:毎日、顔を合わせるたびに、「元気?」って聞いてくれるんです。その言葉に私の方が元気をもらっています。私が80歳を超えたとき、明尾さんのようにスタスタ歩いて、いろいろなことができるのかなぁって思います。

――― 施設の責任者として、87歳の明尾さんにどんな役割を果たしてほしいと思っていますか?

明尾さんと歳の近い利用者も、歳が近いから理解できることも多いそうです。

山本: 明尾さんが87歳まで働いているのだから80歳まではがんばろうと、私も含め職員は思っていると思います。目標です。

最近は、明尾さんと年代が近いご利用者様も増えていますし、明尾さんのことを昔から知っているというかたが何人もいらっしゃいます。明尾さんのお友達が利用者として入所されるケースもありますし、明尾さんの存在によって何か良い効果が生まれているように感じています。

――― 歳の近い明尾さんががんばっている姿を見ると、若い職員だけでなく、ご利用者さまも勇気をもらえるのですね。まだまだお仕事続けられそうですね。

明尾:主人は早く亡くなり、娘は結婚して京都におりますから、私は一人暮らしなんです。でも、ご利用者さまの「明尾さんが休んだらあかんぞ」という言葉を聞くと、「ようし、またがんばるぞ」という気持ちが湧いてくるんです。私の健康の秘訣は、帰宅してすぐに、盃2杯ほどのお酒でうがいすること。まだまだがんばっていきたいです。

編集後記

離職率が20%を超えるといわれている介護業界にあって、「サンホームみかづき」の離職率はわずか6%。高齢者施設において、職員の異動や退職は、利用者や家族にとって死活問題。介護カレンダーに寄せられる皆さんの体験談にもあるように、「施設を選ぶときに大切なのは、何より働く職員」だからです。「サンホームみかづき」には、利用者の年齢に限りなく近い87歳の介護職員がいます。彼女のモットーは「介護は優しさ」。その一貫した姿勢は、利用者はもちろん、職員たちも目標にするほど。まさに利用者やその家族が望む介護職員の姿そのものです。イキイキと元気に働き続ける80代の職員の背中を若い職員たちは追いかけます。働く職員の優しさに触れ、利用者と家族も幸せな気持ちになる。彼女の存在はそんなプラス効果を生んでいるようです。(介護カレンダー編集部)

協力:
日の出医療福祉グループ:https://hinode.or.jp
社会福祉法人 博愛福祉会サンホームみかづき:社会福祉法人 博愛福祉会サンホームみかづき (sunhome-cat.jp)

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