こんにちは。ファイナンシャルプランナーの前佛(ぜんぶつ)です。私は家計改善のアドバイスのほか、整理収納アドバイザー1級を取得し、暮らし全体の整え方もお伝えしています。介護カレンダーでは親の介護をはじめ、将来介護が必要になったときに役に立つ情報をお伝えしながら、介護にまつわる大切なことを皆さんと一緒に考えていきたいと思います。
さて、突然家族に介護が必要になったとき、介護費用が気になりませんか? 介護保険を利用すれば一定額までは1割~3割負担ですが、受けたサービスによっては、月々の支払いが高額になり、家計を圧迫するようになってしまいます。でもご安心を。こんなとき家計を助けてくれる公的制度があります。
今回は、高額になった介護サービス費の負担を軽減してくれる「高額介護サービス費」をご紹介します。
介護サービス費の負担を軽減する「高額介護サービス費」
介護保険では、かかったサービス費のうち1割~3割を自己負担し、残りの9割~7割は介護給付として市町村から介護事業者へ支給される仕組みになっています。また、1割~3割の負担割合は所得に応じて決められており、月間の支給限度額までなら自己負担分だけの支払いでサービスを利用できます。しかし、支給限度額を超えると、その分は全額自己負担となるので注意が必要です。
ただ、負担割合の範囲内でサービスを利用したとしても、その利用料が支給限度額近くになれば、1カ月の支払いがかなりの額になることがあります。そうなると、家計にも影響が出てしまうかもしれません。
このように、1カ月間に支払った介護サービス費の自己負担分が限度額を超えたとき、その分が払い戻される制度があります。その制度を「高額介護サービス費」といいます。
この「高額介護サービス費」は、世帯または個人の所得に応じて負担限度額が設定されていますが、2021年8月の介護保険制度の見直しによって、負担限度額の区分がより細かく設定されるようになりました。
具体的な高額介護サービス費の負担限度額は、以下の通りです。
出典:厚生労働省資料「令和3年8月利用分から高額介護サービス費の負担限度額が見直されます」より筆者作成
「高額介護サービス費」は、所得に応じて上記のように負担限度額が設定されています。介護保険サービスの自己負担割合が2割や3割となる人たちは、その分負担限度額が高くなっているのです。
ただし、自己負担となった介護サービス費のすべてが高額介護サービス費の対象になるわけではありません。自己負担したものの中には支給の対象外となるものがあるので、注意が必要です。
高額介護サービス費の対象外になるものは?
介護保険を利用してサービスを受けたものでも、下記に該当するものは高額介護サービス費の対象にはならないことを覚えておいてくださいね。
・福祉用具購入費の自己負担分(1割~3割)
・介護保険を使った住宅改修費の自己負担分(1割~3割)
・施設サービスを利用した際の食費、居住費(滞在費)、日常生活費など
・介護保険外サービス(※)に支払った費用
・介護保険の負担限度額を超えて全額自己負担になった分
上記以外で、1割~3割の自己負担した介護サービス費が「高額介護サービス費」の対象になるということです。
(※)介護保険外サービス費とは?
市町村が独自でサービスを提供するもの(配食サービス、移送・送迎サービス、訪問理美容サービス、緊急通報システムなど)、あるいは、民間が提供するサービス(高齢者見守りサービス、家事支援・代行サービス、移送サービス、配食サービスなど)は介護保険外サービスです。介護保険では提供されていないサービスなので、利用料は自己負担となります。ただ、要支援度や要介護度に関係なく誰もが利用できるものなので、介護保険サービスを補うものとして活用してもよいかもしれません。
高額介護サービス費の申請方法は?
1カ月の介護サービス費が高額介護サービス費の対象となるときは、約2、3カ月後(時期は自治体によります)に、役所から高額介護サービス費のお知らせや「高額介護サービス費支給申請書」などの書類が届きます。その用紙に記入し、返送もしくは役所の介護保険担当窓口に提出すると、高額介護サービス費の相当額が振り込まれる仕組みになっています。申請書の提出方法は自治体により異なりますので、指定された方法で提出してくださいね。
高額介護サービス費の申請書を一度提出すれば、その後の申請は不要です。高額介護サービス費の支給対象になるときは、自動的に振り込まれるようになります。ただし、申請書の提出を怠ると高額介護サービス費を受給できなくなるので、必ず提出してくださいね。
まとめ
1カ月間に支払う介護サービス費が高額になったとき、負担限度額を超えた分が払い戻される高額介護サービス費があると、安心できますね。これに該当するときは役所から申請書が届きますので、それを必ず提出してください。ただし、高額介護サービス費には対象外となるものもあります。もし対象外の介護費用が心配であれば、介護用の貯蓄を準備してもいいですし、民間の介護保険に加入して対象外の費用に備えることもできます。すべての人に必ず介護が必要になるわけではありませんが、介護費用をもしもの出費として、ライフプランに組み込んでおくことをお勧めします。
参考サイト
厚生労働省資料「令和3年8月利用分から高額介護サービス費の負担限度額が見直されます」
https://www.mhlw.go.jp/content/000334526.pdf
厚生労働省「介護保険制度の概要」介護保険制度の仕組み
https://www.mhlw.go.jp/content/000801559.pdf
●介護保険外サービス
公的介護保険外サービスの参考事例集 22ページ~
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/guidebook-zentai.pdf
LIFULL 介護保険外サービスとは?https://kaigo.homes.co.jp/manual/homecare/zaitaku_service/hokengai/
世田谷区 高額介護(介護予防・総合事業)サービス費https://www.city.setagaya.lg.jp/mokuji/fukushi/001/001/002/d00014743.html
横浜市 高額介護サービス費等についてhttps://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/fukushi-kaigo/koreisha-kaigo/kaigo-hoken/kougakukaigo.html
<プロフィール>前佛 朋子(ぜんぶつ ともこ)ファイナンシャルプランナー(CFP®認定者)/ 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 / 整理収納アドバイザー1級 / 自分史活用アドバイザー
『安心と心のゆとりのある暮らしができる人を増やしていく』という理念のもと、1人でも多くの人に安心できる暮らしと心の余裕を手に入れていただこうと、家計見直しやライフプランなどの相談業務を行う。ライフイベントに合わせて貯蓄や用途を分類するお金の整理を得意とする。また、離れて暮らす母の介護に関わった経験を活かし、遠距離介護などの相談も受ける。保険や金融商品を売らないファイナンシャルプランナーとして活動中。
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