<FPと考える>医療費と介護費用の両方が高額になったらどうすればいい?

<FPと考える>医療費と介護費用の両方が高額になったらどうすればいい?
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介護体験や思いなど、さまざまな立場の人の介護にまつわるコラムをお届けします。

こんにちは。ファイナンシャルプランナーの前佛(ぜんぶつ)です。私は家計改善のアドバイスのほか、整理収納アドバイザー1級を取得し、暮らし全体の整え方もお伝えしています。介護カレンダーでは親の介護をはじめ、将来介護が必要になったときに役に立つ情報をお伝えしながら、介護にまつわる大切なことを皆さんと一緒に考えていきたいと思います。

高齢になると、公的医療保険とともに介護保険サービスも利用する可能性が出てきます。そのとき、医療費と介護費用の自己負担額が高額になったら、年金生活に大きな影響が出てきそうです。そんな負担増に備えて、医療費と介護費用の自己負担額が高額になったときに受けられる負担軽減制度があるのをご存じですか?今回は、医療費と介護費用の自己負担額が高額になったときに、払い戻しを受けられる制度をご紹介します。


■介護費用と医療費が高額になったときに利用できる制度とは

1ヶ月の医療費が高額になったときは、高額療養費制度を利用すれば自己負担限度額を超えた分が後から払い戻されます。また、介護保険でも1ヶ月の負担限度額を超えたときは、その超えた分が高額介護サービス費として払い戻されます。

しかし、医療費も介護費用も自己負担額が高額になってしまった場合、家計への負担が心配になりませんか?そんな場合に備えて、年間トータルでの医療費と介護費用の負担を軽減してくれる制度があります。その制度が「高額医療・高額介護合算療養費制度」です。

高額医療・高額介護合算療養費制度とは、同一世帯で毎年8月1日から翌年7月31日までの1年間に、医療保険と介護保険の自己負担額を合算した額が自己負担限度額を超えた場合、その超えた分が払い戻される制度です。

支給額は医療保険と介護保険の比率に応じて算出されます。そして、医療保険にかかる部分は高額介護合算療養費として、介護保険にかかる部分は高額医療合算介護サービス費として支給されます。


高額医療・高額介護合算療養費制度の自己負担限度額は、70歳未満と70歳以上、および所得区分により異なります。


□70歳未満の場合

所得区分自己負担限度額
年間所得901万円超212万円
年間所得600万円超901万円以下141万円
年間所得210万円超600万円以下67万円
年間所得210万円以下 60万円
住民税非課税世帯 34万円
出典:東京都福祉保健局「高額介護合算療養費」より筆者作成


□70歳以上の場合

所得区分自己負担限度額
課税所得690万円以上212万円
課税所得380万円以上690万円未満141万円
課税所得145万円以上380万円未満67万円
一般(課税所得145万円未満)56万円
住民税非課税世帯31万円
住民税非課税世帯(所得が一定以下)19万円
出典:東京都福祉保健局「高額介護合算療養費」より筆者作成


申請すれば、上記の自己負担限度額を超えた分が後から払い戻されます。


国民健康保険と後期高齢者医療制度に加入の場合、高額医療・高額介護合算療養費の支給対象になると、毎年2月から3月頃に支給申請のお知らせが届きます。その際は申請書に必要書類を記入し、預金通帳など振込先のわかるものや医療保険被保険者証、介護保険被保険者証、マイナンバーカードなど必要書類を添えて市区町村へ申請します。

申請方法の詳細は、国民健康保険と後期高齢者医療制度に加入している場合はお住まいの市区町村で、健康保険に加入している場合は勤務先で確認してください。


■高額医療・高額介護合算療養費の支給条件と注意点

ここで高額医療・高額介護合算療養費の支給条件をご紹介します。

・医療保険(国民健康保険・健康保険・後期高齢者医療制度)と介護保険の両方に自己負担額があること
・8月から翌年7月までの1年間に支払った自己負担限度額を合算した額が、所得区分別に決められた自己負担限度額を超えていること

また、次のような注意点があるので確認しておきましょう。


・高額医療・高額介護合算療養費の申請期限は2年。7月31日の翌日から起算して2年を超えるものは申請できない

・医療保険もしくは介護保険のいずれかの自己負担額が0円のときは、高額介護合算療養費は支給されない

・自己負担限度額を超えた分が500円以下の場合は支給されない

・世帯内で、同じ医療保険に入っている人のみ合算できる
・70歳未満の場合、医療保険の自己負担額は、同じ病院で1ヶ月21,000円以上支払ったものだけが対象となる


■高額医療・高額介護合算療養費の対象とならない費用


高額医療・高額介護合算療養費制度では、通常の医療費や介護サービス費が支給の対象と
なりますが、以下のように支給対象外のものもあるので注意が必要です。

○医療保険で支給対象外となるもの

・入院中の食事代

・差額ベッド代
・保険適用外の手術代
・高度先進医療の費用 など


○介護保険で支給対象外となるもの
・福祉用具レンタル代
・福祉用具購入費
・住宅改修費
・介護施設などの居住費、滞在費、食事代など
・介護保険の利用限度額を超えた分の自己負担額 など


医療保険も介護保険も、保険の適用外となるものは高額医療・高額介護合算療養費の支給対象外になります。申請の際は注意してください。


■まとめ
高額医療・高額介護合算療養費制度は、8月から翌年7月までの1年間で、医療保険と介護保険の自己負担額が高額になったとき、自己負担限度額を超えた分が払い戻される制度です。申請期限は2年で、医療保険と介護保険のいずれにも自己負担額があること、自己負担限度額を超えた分が500円以上であることなどの注意点があります。とはいえ、医療費と介護費用の自己負担を軽減してくれる制度なので、支給対象になるときは忘れずに申請することをお勧めします。

<プロフィール>前佛 朋子(ぜんぶつ ともこ)
ファイナンシャルプランナー(CFP®認定者)/ 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 / 整理収納アドバイザー1級 / 自分史活用アドバイザー
『安心と心のゆとりのある暮らしができる人を増やしていく』という理念のもと、1人でも多くの人に安心できる暮らしと心の余裕を手に入れていただこうと、家計見直しやライフプランなどの相談業務を行う。ライフイベントに合わせて貯蓄や用途を分類するお金の整理を得意とする。また、離れて暮らす母の介護に関わった経験を活かし、遠距離介護などの相談も受ける。保険や金融商品を売らないファイナンシャルプランナーとして活動中。
ホームページ:家計コンサルティングZEN

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