厚生労働省は、2021年10月にも、「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」等に対する「囲い込み」に対する監視を強化、都道府県と連携し、立ち入り調査や是正指導を行うそうです。(※1)
サービス付き高齢者向け住宅って?
「サービス付き高齢者向け住宅」は、高齢者単身者及び夫婦世帯が安心して居住できる賃貸等の住宅で、国土交通省と厚生労働省が所轄する「高齢者の居住安定確保に関する法律(高齢者住まい法)」(※2)の改正によって創設された制度で、2011年10月から登録がスタートしました。
サービス付き高齢者向け住宅の「サービス」とは?
基本的に、60歳以上の介護を必要としない自立した高齢者向けとされる「サービス付き高齢者向け住宅」の「サービス」は、いわゆる「介護サービス」ではなく、ケアの専門家が日中建物に常駐し、状況把握や生活相談サービスを指します。「特定施設入居者介護」の指定を受けていない「住宅型有料老人ホーム」における「サービス」も同様で、特別養護老人ホームや老人保健施設などのいわゆる介護保険施設や「特定施設入居者介護」の指定を受けた介護付き有料老人ホームで提供する介護サービスとは異なります。
▶「サービス付き高齢者向け住宅の『サービス』は介護サービスじゃないって本当?」(介護カレンダー)
つまり、介護保険施設や介護付き有料老人ホームが住居と介護保険サービスが一体化しているのに対して、「サービス付き高齢者向け住宅」や「住宅型有料老人ホーム」は、入居者に介護が必要になったとき、外部の介護保険事業所と契約してそれぞれに必要なサービスを受けることになります 。(サービス付き高齢者向け住宅、住宅型有料老人ホームのなかにも、住宅に住みながら介護保険サービスが受けられる「特定施設入居者介護」の指定を受けている施設もあります)
厚労省が問題視する「囲い込み」とは?
一方、高齢者住宅の多くは、自社、同じ敷地内に介護事業所などを併設して、デイサービスやさまざまな介護保険サービスを提供しています。「囲い込み」とは、これらの介護事業所を通じて、本来必要でない介護サービスを入居者に利用させること。ほんの一部とはいえ、そこに発生した不当な介護報酬を受け取っている施設もあるということが問題視されているのです。
しかし、利用者が「サービス付き高齢者向け住宅」や「住宅型有料老人ホーム」に入居するメリットは、必要な介護サービスを自らが自由に選ぶことができることにあります。加えて、特に「サービス付き高齢者向け住宅」は、入居一時金が不要、月々の利用料が「介護付き有料老人ホーム」に比べて比較的安価であることも人気のひとつです。
▶「サービス付き高齢者向け住宅に支払う『費用』には何があるの?」(介護カレンダー)
また、介護保険の自己負担金は、要介護度によって限度額が定められていますから、本来必要でない介護サービスを利用して限度額を超えた場合は、全額が利用者の負担となります。比較的安価であるからと入居したにも関わらず、不要な介護サービスを利用することになって介護負担金が増加したのでは、本末転倒です。
高齢者向け住宅利用を考えるときに大切なこと
冒頭に書いたように、厚労省や都道府県が「囲い込み」に対する監視を強化、立ち入り調査や是正指導することに対しては大きな期待があります。しかし何より大切なのは、「サービス付き高齢者向け住宅」にせよ、「住宅型有料老人ホーム」にせよ、入居する前に、家族や自分が暮らすことになる高齢者向け住宅について十分に調べ、将来かかる費用についてあらかじめシミュレーションすることではないでしょうか。
一般社団法人高齢者住宅協会が運営する「サービス付き高齢者向け住宅情報システム」(※3)は、「サービス付き高齢者向け住宅」の制度やリフォーム、住み替えなど高齢者の住まいや暮らしについての考え方などを詳しく説明するばかりでなく、都道府県等に登録された全ての「サービス付き高齢者向け住宅」の運営情報がオンラインで公開されています。
もし、近い将来、高齢者向け住宅への入居や住み替えなどを検討しているかたにとって、参考になるWebサイトだと思います。専門家による相談窓口も設置されていますから、わからないことは入居前にぜひ解消しておくことをお勧めします。
<参照>
※1 【独自】高齢者住宅の「囲い込み」、厚労省が監視強化へ…「過剰」介護防ぐ(読売新聞オンライン):(2021年3月21日)
※2 高齢者の居住安定確保に関する法律(高齢者住まい法)
※3 サービス付き高齢者向け住宅情報システム
(介護カレンダー編集部)