笑顔で介護! 特養〜自宅で看取るまで<第6回>それはある日突然に……

笑顔で介護! 特養〜自宅で看取るまで<第6回>それはある日突然に……
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介護カレンダー編集部が見聞きした「介護」にまつわる情報をさまざまな観点からお届けします。

アルツハイマー型認知症と認定された9カ月後、脳内出血で、突然、母は意識を失いました。

そこから、母は2度と家に帰ることができませんでした。

救いだったのは、母の持ち前の明るさ

とにかく母はよく笑います。もともとポジティブでしたから、普段は笑顔が多いんです。

私もいつも笑顔で母に接するように心がけていました。

あるとき、テレビで放映された「認知症が驚くほど改善するデイサービス」特集の影響もありました。
そのデイサービスでは、「すごいですね!」「おめでとうございます!」「ありがとうございます!」と、
すべてに対して、明るく笑い飛ばしていたんです。

例えば

職員「〇〇さん、今朝は何を食べたんですか?」

老人「忘れた!」

職員「忘れちゃったの? それはめでたいですね! ワハハハ!!」

老人「ワハハハ!」

みんな「ワハハハ!!!」

昼夜逆転、夜中に騒ぐ、ワガママ三昧だったおばあちゃんがその施設に通うようになってから、
見違えるくらい元気に、そしてワガママも減って、夜もよく寝るようになったそうです。

「そっか! なんでも笑い飛ばすことは大事なんだ!」と、単純な私は、即、取り入れました。

もともと母も私もポジティブで明るい性格です。
何より、母に毎日を楽しく過ごしてほしいという思いもありました。

娘の私の名前を聞かれて、思い出せず、大きな声で少し離れたところにいる私に

 母「ねえ、名前なんだっけ〜?」 

 私「へ? なんの名前?」

 母「あら、何だったかしら? 名前よ、名前〜〜(笑)」

 ケラケラ笑いながら聞いてきます。

そんな母に、結構助けられていたんだな、と、今になって思います。

それは突然に……

毎日欠かさない母への電話。

その日は電話をしても出ませんでしたが、大体翌日に電話すると、「受話器がずれていて気づかなかったわ」と
いうことが以前にもありました。

翌日の3月30日、突然電話が鳴りました。

「〇〇(母の名前)の娘さんですか? 私は〇〇地区の保健師をしています。
ご近所の方からおかあさまが道端で泣いているところを保護して家に連れて帰ったと連絡が入りましたのでお電話しています」

びっくりしてすぐに母に電話すると

母  「お母ちゃんがいない。家に帰れない……」と、
まるで幼稚園児が迷子になって泣きじゃくっているようです。

「え?? なに??」

あせる私。

でも母は泣きながら、ゴニョゴニョ言っているだけで、要領を得ません。

「お母ちゃんって、母のおかあさんのことだよね?」

びっくりして、すぐに担当のケアマネさんに電話して状況を伝えると、
「急に認知症が進むケースもありますが、まさか……」と困惑している様子です。

弟にも電話して、二人で急ぎ実家に向かいました。

私が家についたころには、母は落ちついた様子で、先に到着した弟と座っていました。

もう、訳のわからないことを言いません。

まさか

母との電話の後、真っ先に脳内出血を疑いました。
でも「頭痛も吐き気もない」と言います。

元気がなく、意識がボヤっとしている感じもしましたが、私の問いかけにはちゃんと答えられています。

すでに夜だったこともあり、そのまま一晩様子を見て、翌朝病院へ連れて行きました。

しかし待合室で待っている間に、急に母の熱が上がってきました。

そんな母の様子を見た看護師さんが、まだ診察前にもかかわらず
「こちらに来てください!」とただならぬ雰囲気で言ってきました。

訳もわからないまま、昨日の状況を説明して母だけ処置室へ。

気づいたときには、ストレッチャーに乗った母と一緒に別のフロアーへ行き、
医師から「脳内出血を起こしています。入院です」と説明されました。

まさか!!!!

「先生、でも、母は頭痛も吐き気もないと言っていました!」

医師が母のMRI画像を見ながら説明してくれます。

「ここが出血している部位です。左側頭葉と海馬の部分です。特に手術はしません。様子を見ます。
おそらく、出血が止まって血液は脳に吸収されます。
以前と同じようにというわけにはいきませんがある程度は戻ります。
意識が混濁していますので、とにかく話しかけてあげてください」

ここから入院、そして特養へと母と私の生活は一変していきます。

ここに記載されている内容はあくまでも個人の体験であり感想です。

<プロフィール>なかお わかこ
1965年生まれ。 家族は、夫と息子3人、犬2匹。弟。 主婦であり、酵母パンやマクロビ料理主宰、ウェブサイトの運営など。 父 脳内出血後、半植物となり、1年間の病院での療養を経て、69歳で他界(2004年)。 母 軽度のアルツハイマー型認知症発症。脳内出血で病院に入院。特養を経て2021年自宅で看取る 。

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