<FPと考える>介護保険を使ってお得に介護リフォーム(住宅改修)
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介護体験や思いなど、さまざまな立場の人の介護にまつわるコラムをお届けします。

こんにちは。ファイナンシャルプランナーの前佛(ぜんぶつ)です。私は家計改善のアドバイスのほか、整理収納アドバイザー1級を取得し、暮らし全体の整え方もお伝えしています。介護カレンダーでは親の介護をはじめ、将来介護が必要になったときに役に立つ情報をお伝えしながら、介護にまつわる大切なことを皆さんと一緒に考えていきたいと思います。

離れて暮らす親がだんだんと高齢になっていくと、身体機能が衰えて日常生活に支障が出るかもしれません。そんなとき利用できるのが介護リフォームです。高齢者が住みやすくなるようリフォームして住環境を整えることで、転倒などによるケガを未然に防ぎ、自立した生活を続けられるようになります。そこで今回は、お得に介護リフォームができる方法をご紹介します。

介護リフォームは介護保険が使える!

実家の室内を見渡してみると、滑りやすい床、つまずきの原因になる段差など、あらゆるところに危険が潜んでいませんか。危険な状態をそのままにしていると、ケガの原因になるだけでなく、自立した生活が送れなくなってしまうかもしれません。
そこで、高齢になった親が安心・安全に住み続けられるよう、実家の介護リフォームを検討してはいかがでしょうか?

リフォームというと、「お金がかかるから」となかなか踏み切れないかもしれません。でも、リフォーム費用が抑えられる方法があります。それは介護保険を使った住宅改修です。

介護保険を使って介護リフォーム(以下、住宅改修)をすると、工事費用の「20万円まで」は介護保険の自己負担割合に相当する分の支払いでよくなります。そのため、実際の工事費用よりも出費を抑えることができるのです。

ここで、介護保険の自己負担割合が「1割」のAさんを例に、負担する工事費用を試算してみましょう。
住宅改修の工事費用の総額が25万円とします。
  25万円-20万円=5万円
 ・20万円を超す分「5万円」は、全額自己負担となります。
 ・20万円までは1割負担になるので、自己負担分は「2万円」です。

 Aさんが負担する工事費用は、合計7万円となります。
 5万円+2万円=7万円

この場合、工事費用20万円のうち18万円は介護保険から支給されます。

Aさんは介護保険の「住宅改修」を利用したことで、工事費用25万円が「7万円」に抑えられました。

介護保険の自己負担割合が2割、3割になる人は、20万円までは2割もしくは3割負担となるのでご注意くださいね。

●介護保険で可能な住宅改修の種類
介護保険を使った住宅改修の種類は、以下の6つです。
(1)手すりの取り付け
(2)段差の解消
(3)滑り防止のための床材の変更
(4)扉の引き戸などへの取り替え
(5)便器の洋式便器などへの取り替え
(6)各工事に伴って必要になる工事
 (手すり取り付けの下地補強工事、洋式便器への取り替えに伴う給排水設備工事など)

●介護保険による住宅改修の利用は基本「1回のみ」
介護保険を使った住宅改修ですが、基本的に1人1回しか使うことができないという決まりがあります。とはいえ、住宅改修は生涯1回しか利用できないという意味ではありません。20万円までなら複数回に分けて工事することも可能です。

たとえば、Bさんが手すり取付工事をするのに5万円かかったとします。この場合、残った15万円(20万円-5万円=15万円)は、別の住宅改修工事をするときに使えます。基本的に1人1回というのは、「合計20万円」が1回のみという意味なのです。

●住宅改修の回数がリセットされる例外もある

介護保険の住宅改修で上限の20万円を使い切った後でも、以下の場合は例外として回数がリセットされます。
・引っ越しした場合
・要介護状態区分が3段階以上上がった場合
※たとえば要支援1の人が要介護3になれば、4段階上がることになります。

こうして回数がリセットされれば、あらたに20万円までの工事に介護保険が適用されるようになるので覚えておいてくださいね。

■介護保険で住宅改修をする際の手順

介護保険を使って住宅改修をするには、まず「要介護認定」を受ける必要があります。要介護状態区分が決まったら住宅改修が利用できますが、判定が要支援でも要介護でも同じように住宅改修を利用できるので安心です。

では、住宅改修の手順をご紹介します。

(1) 要介護認定を受ける
(2) 担当のケアマネージャーに相談する
(3) 施工業者を決め、見積もりを依頼する
(4) 施工業者が決まったら、“工事前”に市区町村へ住宅改修を申請する
(5) 市区町村による書類調査が行われる
(6) 事前申請確認通知書が届いたら工事着工
(7) 工事完了後、施工業者へ工事費を支払う(※)
(8) 市区町村へ支給申請をする。

(※)支払い方法は2種類あります。
①償還払い
業者へ全額支払い、後日介護保険から支給される分が市区町村から払い戻されます。
②受領委任払い
業者へ支払いは介護保険の自己負担割合分のみで、介護保険給付分は市区町村から業者へ支給されます。

事前申請、支給申請での提出書類は市区町村のホームページなどで確認してください。

■住宅改修をするときの注意点は?

住宅改修にはいくつかの注意点があります。まず、施工業者を決めるとき、相見積もりは必須です。複数の業者から見積もりを取り比較してください。住宅改修の実績やアフターサービス、地域の評判のほか、ていねいに説明をしてくれるかどうかなど、十分に比較検討し、信頼できる業者を選んでくださいね。

■まとめ

介護リフォーム(住宅改修)は介護保険が使えます。20万円までの工事費用が介護保険の自己負担割合で済むので、利用を検討したい制度です。住宅改修を利用できるのは基本的に1回のみですが、引っ越ししたとき、要介護状態区分が3段階以上アップしたときは、回数がリセットされ、再度この制度を使うことができます。
これはお得な制度なので、実家に住む親御さんが高齢になったときは、介護保険による住宅改修を検討してはいかがでしょうか。

<プロフィール>前佛 朋子(ぜんぶつ ともこ)
ファイナンシャルプランナー(CFP®認定者)/ 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 / 整理収納アドバイザー1級 / 自分史活用アドバイザー
『安心と心のゆとりのある暮らしができる人を増やしていく』という理念のもと、1人でも多くの人に安心できる暮らしと心の余裕を手に入れていただこうと、家計見直しやライフプランなどの相談業務を行う。ライフイベントに合わせて貯蓄や用途を分類するお金の整理を得意とする。また、離れて暮らす母の介護に関わった経験を活かし、遠距離介護などの相談も受ける。保険や金融商品を売らないファイナンシャルプランナーとして活動中。
ホームページ:家計コンサルティングZEN

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