<FPと考える>遠距離介護の交通費を安くする方法
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介護体験や思いなど、さまざまな立場の人の介護にまつわるコラムをお届けします。

こんにちは。ファイナンシャルプランナーの前佛(ぜんぶつ)です。私は家計改善のアドバイスのほか、整理収納アドバイザー1級を取得し、暮らし全体の整え方もお伝えしています。介護カレンダーでは親の介護をはじめ、将来介護が必要になったときに役に立つ情報をお伝えしながら、介護にまつわる大切なことを皆さんと一緒に考えていきたいと思います。

遠距離介護になると帰省する回数が増えます。そのとき気になるのは交通費です。度重なる帰省が家計を圧迫するかもしれないと思うと心配になりますよね。遠距離介護が家計へ与える影響を最小限にするために、交通費が安くなる方法を知っておきたいと思いませんか?そこで今回は、遠距離の移動でよく使われる飛行機と列車の運賃が安くなる方法をご紹介します。

■遠距離介護で最大のデメリットになること

遠距離介護のメリットは、転居をしなくてもいいので、仕事を辞めずに介護ができることです。また、同居介護のような身体的、精神的な負担は少なくて済むかもしれません。遠距離介護では介護をする人の負担が軽くなるので、自分の生活への影響も少なくすることができます。

ただ遠距離介護になると帰省する頻度が増えるので、交通費の負担が重くなります。筆者はかつて母を遠距離介護したことがありますが、交通費を工面するのが大変でした。

交通費といえば、医療費控除の対象になるものがあります。実際、介護される親とその付き添いをする人が通院する際に支払う交通費は医療費控除に含めることができます。けれども遠距離介護するために家族が帰省する際の交通費は、医療費控除の対象にはならないのです。

すべてを自腹で負担しなければならない遠距離介護の交通費ですが、介護する人の経済的な負担はできるだけ抑えたいですよね。そこで、次の章でご紹介する「遠距離介護の交通費を安くする方法」を活用することをお勧めします。

■遠距離介護の交通費を安くする方法:飛行機編

航空会社の中には、介護で帰省する人のために介護割引を設けているところがあります。

●日本航空「介護帰省割引」

事前にJALマイレージバンクへ加入し、介護帰省割引情報登録申込書と必要書類(※)を郵送(もしくは国内線カウンターへ持参)して利用します。

◎運賃の割引例

11月搭乗の東京(羽田)→福岡

大人普通運賃 45,250円 ⇒ 介護帰省割引利用 25,450円

●全日空「介護割引」

事前にANAマイレージバンクカードに加入し、介護割引情報登録申請書と必要書類(※)を郵送(もしくはインターネット登録)して利用します。

◎運賃の割引例

11月搭乗の東京(羽田)→福岡

大人普通運賃 43,580円 ⇒ 介護割引利用 28,080円

●スターフライヤー「介護割引」

事前に介護割引パス申込書と必要書類(※)、利用者本人の顔写真を郵送して入手した「介護割引パス」を提示して利用します。

◎運賃の割引例

11月搭乗の東京(羽田)→福岡

大人普通運賃 42,580円 ⇒ 介護割引利用 21,300円

●ソラシドエア「介護特別割引」

事前に介護割引パス申込書と必要書類(※)、利用者本人の顔写真を郵送して入手した「介護割引パス」を提示して利用します。

◎運賃の割引例

11月搭乗の東京(羽田)→長崎

大人普通運賃 43,270円 ⇒ 介護特別割引利用 23,770円

事前手続きには日数がかかるかもしれないので、余裕を持って手続きをしてくださいね。

(※)必要書類はいずれの航空会社も同じです。

・介護される人の介護保険証または認定結果通知表

・介護される人と介護をする人の関係を証明する公的書類:戸籍抄本、戸籍謄本

・介護をする人の現住所を証明する公的書類:住民票や運転免許証など

(注:ご紹介する割引例の普通運賃はあくまでも一例です。各航空会社では、さまざまな料金設定があります。)

各航空会社の介護割引をご紹介しましたが、このほか格安航空会社(ピーチ、スカイマーク、ジェットスター)を利用しても、運賃を安くすることができます。

■減額措置の2つの要件と注意点を確認しておこう

この減額措置には、「居住者の要件」と「家屋の要件」が設けられています。ここでは、要件の内容や注意点をご紹介します。

□居住者の要件
減額措置を受ける家には、以下の3つの要件に該当する人が住んでいる必要があります。
・65歳以上の人
・要介護・要支援認定を受けている人
・障がいのある人(療育手帳、身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳を持っている人)

□家屋の要件
減額措置の対象となる家屋は、次の要件に合うものです。
・新築してから10年以上経っていること
・工事後の床面積が50平方メートル以上280平方メートル以下であること
・店舗併用住宅の場合は、居住部分の床面積が2分の1以上あること

□減額措置の注意点
この減額措置には以下のような注意点があるので、確認しておいてください。
・対象のバリアフリーリフォームは、費用の自己負担分が税込50万円を超えること
・介護保険の住宅改修による給付金を受けた分は、工事費用から差し引いたうえで50万円超となること
 (たとえば介護保険の負担割合が1割なら、9割は給付金を受けていることになります)
・2024年3月31日までに工事が完了すること
・都市計画税は対象外
・減額は家屋が対象で、土地の固定資産税は対象外
・賃貸住宅は対象外

■遠距離介護の交通費を安くする方法:鉄道編

鉄道会社には航空会社にあるような介護割引はありません。けれども運賃がお得になる切符の購入方法があります。ここではJRの切符を安く購入する方法を4つご紹介します。

(1)エクスプレス予約

これは東海、山陽、九州新幹線の指定席をお得な会員価格で利用できるサービスです。年会費1,100円でお得なEX予約サービスを利用できます。また、早く予約するとさらに運賃がお得になる「EX早特」もあるので活用できるといいですね。

◎運賃の割引例

東京→博多

「のぞみ」所定運賃・料金:23,390円 

⇒ EX予約サービス:21,720円  EX早特:17,720円

(2)えきねっと

これはJR東日本の新幹線(東北、山形、秋田、北海道新幹線)や特急列車の切符が手配できるサイトです。「えきねっとトクだ値」を利用すると、切符が5~40%割引になります。切符によっては50%割引になる場合もあります。

◎運賃の割引例

東京→仙台

「やまびこ」通常運賃・料金:10,890円

 ⇒ 「えきねっとトクだ値」で出発の13日前までに申し込み:7,610円

(3)e5489

これはJR西日本の切符がネット予約できるサイトです。J-WESTカードに加入すると、新幹線(山陽・九州・西九州・北陸)や、JR西日本・四国・九州エリアの特急列車の切符をお得に購入できます。

◎運賃の割引例

新大阪→博多

「のぞみ」通常運賃・料金:13,140円

⇒ EX早特での運賃・料金:4,710円

(4)レール&レンタカーきっぷ

遠距離介護で帰省して、買い物や通院の付き添いをするときは、車があった方が便利です。JRでは切符とレンタカーを同時に予約すると料金が割引になる「レール&レンタカーきっぷ」というサービスを提供しています。このサービスではJR運賃が20%割引、レンタカー料金が10%割引になります。詳しくは、「JR駅レンタカー」のサイトをご参照ください。

■まとめ

遠距離介護をする際、一番ネックになるのは交通費です。帰省する頻度が増えるので、家計への影響が大きくなりがちです。そこで、飛行機では介護割引や格安航空会社を利用し、JR切符はネット予約サイトの会員になって割引切符を購入するのがお勧めです。このとき航空券やJR切符は早く予約する方が安くなるので、早めに帰省計画を立てて運賃が安くなるサービスを活用してくださいね。

<プロフィール>前佛 朋子(ぜんぶつ ともこ)
ファイナンシャルプランナー(CFP®認定者)/ 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 / 整理収納アドバイザー1級 / 自分史活用アドバイザー
『安心と心のゆとりのある暮らしができる人を増やしていく』という理念のもと、1人でも多くの人に安心できる暮らしと心の余裕を手に入れていただこうと、家計見直しやライフプランなどの相談業務を行う。ライフイベントに合わせて貯蓄や用途を分類するお金の整理を得意とする。また、離れて暮らす母の介護に関わった経験を活かし、遠距離介護などの相談も受ける。保険や金融商品を売らないファイナンシャルプランナーとして活動中。
ホームページ:家計コンサルティングZEN

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