<FPと考える>親の介護費用は誰が出す? 大事なのは事前準備

<FPと考える>親の介護費用は誰が出す? 大事なのは事前準備
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介護体験や思いなど、さまざまな立場の人の介護にまつわるコラムをお届けします。

みなさん、はじめして。ファイナンシャルプランナーの前佛(ぜんぶつ)です。私は家計改善のアドバイスのほか、整理収納アドバイザー1級を取得し、暮らし全体の整え方もお伝えしています。介護カレンダーでは親の介護をはじめ、将来介護が必要になったときに役に立つ情報をお伝えしながら、介護にまつわる大切なことを皆さんと一緒に考えていきたいと思います。

まだ親が元気なうちは、介護は未知の世界です。「どんなことが待ち受けているのか?」「どれくらいのお金がかかるのか?」、想像がつきませんよね。ただ、親が高齢になるにつれ、介護に対する心配や不安も生じていくかもしれません。特に気になるのは親の介護費用。そのお金は誰が出すことになるのか気になりませんか?

そこで今回は、親の介護費用の負担と事前準備についてお伝えします。

親の介護費用は親のお金を使うのが原則

介護のなかで、最も心配の種となるのは介護費用と考える方は多いです。親の介護が必要になったとき、その費用は子どもが負担しなければいけないと考えている人も少なくありません。

でも、ここでお伝えしておきたいのは、親の介護費用は「親自身が負担する」ということ。親が受給する年金、もしくは預貯金で介護費用を賄うのが原則です。もし子どもが親の介護費用を負担したら、どうなると思いますか? 子どもには子どもの人生があります。自分たちの介護費用や医療費、そして老後資金を準備しなければなりません。それなのに親の介護費用を負担してしまったら、子どものライフプランが狂ってしまいます。その結果、自分たちの子どもにまで負担をかけることになってしまうのです。これでは家族は皆、安心して生活することができません。

親の介護費用は親が負担する。このことはぜひ覚えておいてくださいね。

肝心なときに銀行の窓口で親のお金を引き出せなくなる!?

親の介護費用は親が負担するのが原則とお伝えしましたが、親が突然倒れてしまったら、介護費用を用意する際に困ることがあります。それは、銀行では口座名義人でない人は、委任状がないとお金を引き出すことができなくなることです。

肝心なときに親のお金を引き出すことができなかったら、困りますよね。そんな場合に備えて、親がまだ元気なうちにやっておきたいことがあります。

親が元気なうちにやっておきたいこと

親に介護が必要になったとき、スムーズに介護費用の準備ができるようにしたいですね。それだけでなく、親が介護や医療についてどう考えているのかも知っておきたいです。

そこで、親が元気なうちに次の6つのことをやっておくと、後から起こるかもしれない問題を最小限にすることができます。

その1:介護の希望を聞いておく

親にはどんな介護を受けたいか、希望の形があるかもしれません。そこで、どこで介護をしてほしいか(自宅・施設など)聞いておくといいですよ。

その2:どのお金を介護費用として使えばいいのか聞いておく

介護費用はどのお金を使えばいいのか聞いておけると後々助かります。銀行口座のお金であれば、通帳や印鑑、キャッシュカードの保管場所も聞いておきたいです。できればキャッシュカードの暗証番号を聞いておければ安心です。

その3:病気になったときの希望を聞いておく

病気になったとき、診てもらう病院や健康保険証の保管場所、医療費はどのお金を使えばいいのかを聞いておきたいですね。また、いざというときに胃ろうや延命措置をどうするかも聞いておくことをおすすめします。

その4:保険に加入しているかどうか聞いておく

親が医療保険や民間の介護保険に加入している場合があるかもしれません。その保険金で介護費用や医療費の補てんができるかもしれないので、加入している保険について聞いておくと安心です。

その5:銀行口座の「代理人カード」を作っておく

各銀行では、本人に代わって家族が口座からお金を引き出すことができる「代理人カード」を発行しています。1口座につき1枚、生計を同じくする家族など銀行によって条件はありますが、代行でATMからお金を引き出すことができるので、作っておきたいです。ただし、口座名義人本人が手続きする必要があるため、銀行へ同行できるといいですね。手続きの際は、通帳、印鑑、親子それぞれの本人確認書類が必要です。

もし代理人カードを作り、代行でATMからお金を引き出したときは、そのお金の使い道をノートなどに記録し、レシート、領収書を保管しておくことも忘れないでくださいね。

その6:兄弟姉妹とも介護について話し合っておく

介護に備えて親子間で話し合っておくことは大事ですが、兄弟姉妹がいる場合は介護方法のすり合わせをしておくことが重要になります。誰がメインに介護をするか、介護費用をどうするのか、兄弟姉妹全員がわかるようにしておくと、後々トラブルを避けることができます。

子どもが親の介護費用を立て替えたときにやっておくこと

親の介護費用を用意する際、場合によっては子どもが立て替えて支払うことがあるかもしれません。その際は、確実な記録としてノートなどに立て替えた金額や用途を書いておき、レシートや領収書を保管しておきます。面倒な作業かもしれませんが、必ずやっておきたいですね。

まとめ

親に介護が必要になったとき、その費用は親のお金を使うのが原則です。親と介護や病気になったときの費用などについて話し合っておきたいですね。また、親の口座の代理人カードを作っておいたり、加入する保険を確認しておいたりすることも大事です。もし子どもが費用を立て替えたときは、その金額と用途を記録し、お金をどう精算するかも親子で話し合っておくと安心できます。さらに兄弟姉妹とも話のすり合わせをして、家族皆が連携できる体制を作っておくことをおすすめします。

<プロフィール>前佛 朋子(ぜんぶつ ともこ)
ファイナンシャルプランナー(CFP®認定者)/ 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 / 整理収納アドバイザー1級 / 自分史活用アドバイザー
『安心と心のゆとりのある暮らしができる人を増やしていく』という理念のもと、1人でも多くの人に安心できる暮らしと心の余裕を手に入れていただこうと、家計見直しやライフプランなどの相談業務を行う。ライフイベントに合わせて貯蓄や用途を分類するお金の整理を得意とする。また、離れて暮らす母の介護に関わった経験を活かし、遠距離介護などの相談も受ける。保険や金融商品を売らないファイナンシャルプランナーとして活動中。
ホームページ:家計コンサルティングZEN

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