全国初!神奈川県の住宅型有料老人ホームに要支援者・要介護者が入居できなくなる事業制限命令

全国初!神奈川県の住宅型有料老人ホームに要支援者・要介護者が入居できなくなる事業制限命令
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介護カレンダー編集部が見聞きした「介護」にまつわる情報をさまざまな観点からお届けします。

神奈川県足柄上郡にある住宅型有料老人ホーム「シルバーハウス風の里」に対して、神奈川県が令和3年4月27日、事業制限命令を出しました。

事業制限命令は、老人福祉法第29条第16項に定められたもので、この命令が発せられたのは全国で初めてとのこと。事業制限命令が出されたことで「シルバーハウス風の里」には、今後、要支援・要介護者は入居できなくなります。

第29条第16項 都道府県知事は有料老人ホームの設置者がこの法律その他老人の福祉に関する法律で政令に定めるもの若しくはこれに基づく命令又はこれらに基づく処分に違反した場合であって、入居者の保護のため特に必要があると認めるときは、当該設置者に対して、その事業の制限又は停止を命ずることができる。

老人福祉法

また、現在この施設に入居中の要支援・要介護者のかたは、処分命令が通知された4月27日から2カ月以内に退去、新たな場へ生活を移さなければなりません(通知上では、施設が生活の場を確保、本人や家族に十分な説明を行ったうえでの退去となっています)。

神奈川県は令和元年11月、同施設に対して「入居者の健康の保持及び生活の安定のために必要な職員数が配置されていない」「入居者に食事サービスを適切に提供できる体制を整備していない」「 高齢者の虐待防止のための適切な措置を講じていない」などの項目について改善報告書等の提出を求めました。しかし提出期限になっても「シルバーハウス風の里」から報告書が提出されなかったため立入検査、不利益処分(改善命令)を出していました。

改善命令後、神奈川県は、月に1度程度の報告を求めてきたとのことですが、今年になって、「シルバーハウス風の里」の入居者が死亡した状態で見つかった理、誤嚥による緊急搬送が確認されたりしながら、事故報告がなされていなかったことから、神奈川県は、再度立入検査を実施、指摘してきた項目について改善が見られなかったことを確認、今回の事業制限命令に至りました。

令和3年3月2日には、同施設が所在する松田町から、すべての入居者を対象として、高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律に基づく養介護施設従事者等による虐待の認定 (放任虐待:高齢者を衰弱させるような著しい減食又は長時間の放置その他の高齢者を養護すべき職務上の義務を著しく怠ること)を受けています。

介護施設探しの体験談にも、家族の方から入居後の生活やスタッフの質などを心配する声が寄せられます。今回の「事業制限命令」は全国初とのことなので、過剰に心配する必要はないとは思いますが、それでも、大切な家族が入居するかもしれない施設については、見学したり、口コミを読んだり、入居しているかたのご家族に話を聞いたり、納得いくまで調べることが大切だと思います。

介護施設探しの体験談(介護カレンダー)

住み慣れた施設を離れて、また新しい生活を始めなければならない入居者の皆さんのことを考えると、本当に心が痛みます。一日も早く穏やかな日々が訪れますように。(介護カレンダー編集部)

参考:
有料老人ホームに対する事業の制限命令について(2021年04月27日 神奈川県記者発表資料
有料⽼⼈ホームに対する改善命令について(令和2 年2 月14日 神奈川県記者発表資料


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